あやかしとシャチとお嬢様の美味しいご飯日和

二位関りをん

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第106話 寒さ厳しい日の事①

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 この日は一段と冷え込みが厳しい。凄まじい風と雨の音で目が覚めたが、布団から出るのがつらい。とにかくつらい。

「火鉢を用意しますね」

 私を見かねたのか、篝先生が自室に火鉢を持ってきてくれた。

「すみません……」
「これで温まってください。私も聴診器を温めさせていただきます」

 診察は無事に終了した。だが、今度は私服に着替えて1階の居間に降りなければならない。

(出来ればここでご飯食べたい……)

 私は1階の台所に向かうと、麦ごはんをお茶碗によそって、お箸と共に自室まで持っていく事に決めた。
 移動前にその事を台所にいた沼霧さんに伝えた所、後で母親に伝えて置くとの答えだった。

「実はヨシさん今、ご自身の部屋で寝てるんです」
「なんかあった?」
「寒さからかもしれませんが、頭が痛いと」
「朝ごはんは?」
「起きたら食べると」

 そう言えばぬらりひょんはどうしているのか。沼霧さんに聞くとぬらりひょんは離れにいるとの事だった。

「静かにさせておいた方が良いと思いまして」
「じゃあ、そこで朝ごはん食べてるんだ」
「そうです。終わったら、ぬらりひょんの面倒見るのをお願い出来ますか?」
「分かった」

 自室で朝食を食べ終え、台所の流しで食器を洗う。蛇口から出る水が手に触れると、冷たさを通り越してかなりの痛さを感じる。

「ひい……つめたぃ」

 なんとか耐えて食器洗いを済ませると、自室に戻って火鉢の傍らに座る。しばらくするとぬらりひょんが沼霧さんに連れられて自室にやってきた。

「今から出かけますのでよろしくお願いします。もう篝先生も出られましたので」
「わかった」
「千恵子姉ちゃん、何する?」
「じゃあぬらりひょん、本でも読む?」

 ぬらりひょんは私の机に置かれてある雑誌を手に取ると、火鉢の近くに正座して読み始めた。

「ではいってきます」
「沼霧さん、気を付けて」

 沼霧さんを自室から見送り、窓から外の景色を眺めると風が強く吹き付けている。波は荒れており、雨もざあざあと強く降り続けている。

「……」

 部屋の中はずっと、雨と風の強烈な音だけが響き渡る。

(静かだけど、静かじゃないというか……)

 沼霧さんが外出から帰宅した辺りで、私は一度部屋で寝ている母親の様子を見に行った。

「千恵子、おはよう」
「お母さん、具合は?」
「大分ましになったわ、朝ごはんどうしようかしら」
「……ごはん食べる?」
「そうねえ……じゃあちょっとだけよそってくれる?」

 私は台所へ向かい、母親用のお茶碗の三分の一が埋まるくらい、麦ごはんをよそって部屋にいる母親に箸と一緒に渡した。


 
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