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第107話 寒さ厳しい日の事②
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「はい、これ」
「うん、ありがとう」
母親は布団の上に正座して、その場でささっと麦ごはんをかきこんだ。母親は麦ごはんを食べ終わると、私に箸と空になったお茶碗を渡す。
「これお願い、着替えるから」
「わかった」
母親の分のお茶碗と箸を台所の流しで洗っていく。水が凍えそうな程冷え切っている。
「つめたいっ」
冷たさに耐えながらなんとか洗い終えると、両掌をこすり合わせて温める。そうでもしないと手がかじかんで動かなくなってしまいそうだからだ。
「ヨシさんのお昼、どうします?」
台所に入ってきた沼霧さんに、そう質問される。確かに今食べたらお昼は少し遅らせてもいいかもしれない。
それに、私もそんなに空腹を感じていない。
「時間、遅らせる?」
「そうしますか」
「ぬらりひょんに聞いてみる」
自室に戻り、昼食の時間を遅らせるという事をぬらりひょんに告げると、彼女は嫌がる事無く了承の意思を見せてくれた。
「じゃあ、出来たら呼んで」
「分かった」
沼霧さんにも伝えて、私はもう一度自室に戻ってぬらりひょんと雑誌を読んで過ごした。
(火鉢のそばはあったかい……)
しばらく経って、沼霧さんが自室に入って来る。気が付けば時刻は12時を過ぎていた。
「用事は済ませました。そろそろ昼食にしますか?寒いですし、雑炊にします?」
「うん、そうしよっか。ぬらりひょんもそれでいいよね?」
「うん! あったかいの食べたい」
沼霧さんは自室から退出し、台所に向かって行った。私はぬらりひょんを自室に1人にさせるのも危ないと感じたので、自室に留まる事にする。
「雑炊楽しみだあ」
ぬらりひょんが部屋の天井を見上げながら、うわごとのように呟く。私も彼女の動きにつられて天井を見上げると、一瞬だけ小さなトカゲのような黒いあやかしがいるのに気がつく。
「あ」
あやかしは私に気づくと、足をかさかさと動かして移動するも天井から落ちて来た。落ちたあやかしはぬらりひょんが読んでいる雑誌の上に着地する。
「わ」
ぬらりひょんは少しだけ驚いたが、すぐにあやかしを掴むと、廊下に出したのだった。あやかしはまた足を素早く動かしながら、秋部屋の中に入っていった。
「ありがとうぬらりひょん」
「ううん、大丈夫」
「お昼できましたよ」
丁度よく、沼霧さんの声が階段の下から響き渡ったので自室から返事を返す。
「そちらへ持っていきますね」
沼霧さんがお盆に雑炊の入ったお茶碗と匙を2人分乗せて、階段を上ってきた。私は自室の前の廊下でそれらを受け取る。
「お母さんは?」
「召し上がってます。大分よくなられたとはいえまだ頭痛が残ると」
「篝先生帰って来たら診てもらった方がいいんじゃない?」
「そのようにお伝えしておきます」
沼霧さんが階段を降りた後、私とぬらりひょんは自室の扉を閉めて昼食を頂く。
「いただきます」
「うん、ありがとう」
母親は布団の上に正座して、その場でささっと麦ごはんをかきこんだ。母親は麦ごはんを食べ終わると、私に箸と空になったお茶碗を渡す。
「これお願い、着替えるから」
「わかった」
母親の分のお茶碗と箸を台所の流しで洗っていく。水が凍えそうな程冷え切っている。
「つめたいっ」
冷たさに耐えながらなんとか洗い終えると、両掌をこすり合わせて温める。そうでもしないと手がかじかんで動かなくなってしまいそうだからだ。
「ヨシさんのお昼、どうします?」
台所に入ってきた沼霧さんに、そう質問される。確かに今食べたらお昼は少し遅らせてもいいかもしれない。
それに、私もそんなに空腹を感じていない。
「時間、遅らせる?」
「そうしますか」
「ぬらりひょんに聞いてみる」
自室に戻り、昼食の時間を遅らせるという事をぬらりひょんに告げると、彼女は嫌がる事無く了承の意思を見せてくれた。
「じゃあ、出来たら呼んで」
「分かった」
沼霧さんにも伝えて、私はもう一度自室に戻ってぬらりひょんと雑誌を読んで過ごした。
(火鉢のそばはあったかい……)
しばらく経って、沼霧さんが自室に入って来る。気が付けば時刻は12時を過ぎていた。
「用事は済ませました。そろそろ昼食にしますか?寒いですし、雑炊にします?」
「うん、そうしよっか。ぬらりひょんもそれでいいよね?」
「うん! あったかいの食べたい」
沼霧さんは自室から退出し、台所に向かって行った。私はぬらりひょんを自室に1人にさせるのも危ないと感じたので、自室に留まる事にする。
「雑炊楽しみだあ」
ぬらりひょんが部屋の天井を見上げながら、うわごとのように呟く。私も彼女の動きにつられて天井を見上げると、一瞬だけ小さなトカゲのような黒いあやかしがいるのに気がつく。
「あ」
あやかしは私に気づくと、足をかさかさと動かして移動するも天井から落ちて来た。落ちたあやかしはぬらりひょんが読んでいる雑誌の上に着地する。
「わ」
ぬらりひょんは少しだけ驚いたが、すぐにあやかしを掴むと、廊下に出したのだった。あやかしはまた足を素早く動かしながら、秋部屋の中に入っていった。
「ありがとうぬらりひょん」
「ううん、大丈夫」
「お昼できましたよ」
丁度よく、沼霧さんの声が階段の下から響き渡ったので自室から返事を返す。
「そちらへ持っていきますね」
沼霧さんがお盆に雑炊の入ったお茶碗と匙を2人分乗せて、階段を上ってきた。私は自室の前の廊下でそれらを受け取る。
「お母さんは?」
「召し上がってます。大分よくなられたとはいえまだ頭痛が残ると」
「篝先生帰って来たら診てもらった方がいいんじゃない?」
「そのようにお伝えしておきます」
沼霧さんが階段を降りた後、私とぬらりひょんは自室の扉を閉めて昼食を頂く。
「いただきます」
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