あやかしとシャチとお嬢様の美味しいご飯日和

二位関りをん

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第119話 変わりゆく月館島

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 この日は朝からぬらりひょんを連れ、島内をぐるっと回りながら散歩をしている。
 理由は、島の婦人会にて起こった出来事が関係している。

「そう言えばこの子、何歳?」
「島の地理とか分かってる? いざ避難となると迷子にならないようにしなくちゃ」

 母親が婦人会にぬらりひょんを連れて参加するようになってから度々、このような会話を投げ掛けられるようになっていったのだった。
 一応、ぬらりひょんは篝先生の親戚という設定ではあるのだが、篝先生は今は島にはいないので、以前以上にぬらりひょんに関する質問を私達が受ける機会が増えた気がする。

「ここが学校ね。もう覚えてるかもだけど」

 今は島の学校の正門の横の道を歩いている。

「千恵子姉ちゃん、私もいつかは学校に行くの?」

 ぬらりひょんにそう尋ねられたが、あやかしはどうなのだろう?

「後で沼霧さんに聞いてみようか」
「うん」
(あやかしは学校行くのだろうか)

 もし、学校に行くにしても人間の生徒の中に紛れて普通の学校に行くのか、はたまたあやかしだけの学校があるのかどうかも気になる点である。

「どうされました?」

 正門からやって来た女性教師と目があった。

「もしや、川上家のお嬢様ではございませんか?」

 彼女とは会った事は無いのに、素性を言い当てられる。嘘をつくのも気が引けるので、認めた上で島を散歩していると答えたのだった。

「良かったら、授業の様子見ていきますか?」
「えっ、良いんです?」
「見るだけなら全然大丈夫かと」

 女性教師に誘われ、少しだけ学校の様子を見ていく事にした。
 建物の大きさや玄関にある下駄箱の数を見る限り、島の学校という事もあってか生徒数は私が通っていた女学校よりも少ないように見える。

「じゃあ、こちらどうぞ」

 案内された教室の中では、若い女性教師による算数の授業が行われていた。算数は私はどちらかというと苦手にしていた。

「じゃあ、○○さん。これは?」
「○○です」
「はい、お見事正解です」

 他の生徒も次々と答えを当てていっていた。

「私、出来るかなあ?」

 ぬらりひょんが教室を眺めながら、少し心配そうにつぶやいた。

「大丈夫だよ。ちゃんと勉強すれば出来るようになるって」
「ほんと?」

 私の場合、分からない所は積極的に教師や同じ教室の子に聞いて教えてもらっていたりはしていた。それらも振り返りながら、大丈夫だとぬらりひょんに語り掛けたのだった。

「分からないとこがあったら聞けばいいんだよ」
「……そうだよね」
「まあ、まだどうなるかわからないけどね」

 その後、小学校から退出し、また島の道をぬらりひょんの左手を引きながらゆっくり歩いていく。しばらく歩くと今度は漁港に到着した。

「行ってみる?」
「うん」

 漁港は静かで人気はまばらだ。中年~初老の漁師が時折籠を片付けたり、箒で掃除したりと作業をしている様子はちらほら見える。

「もう漁終わったのかな」

 ぬらりひょんにそう尋ねられ、私は近くにいた老いた漁師に質問してみたのだった。

「今日は一旦終わりだね。今は暇だから掃除したり片付けしたりしてる」
「何か手伝える?」

 ぬらりひょんのいきなりの申し出に、私はえっ。と変な声を出してしまった。

「はっはっ良いのかい?」
「うん! 暇だから!」

 そう呑気に言うぬらりひょんを見ながら、私は何かすみません……と気まずさを隠しきれずに漁師へ謝ると、気にしないで良いと笑って流してくれた。

「じゃあ、掃除を頼もうか」

 漁師にそう言われ、私達は掃除を少し手伝う事になった。
 箒で掃いたり、水をかけたりするくらいだが、かなり身体を使う。

「おっ、大分綺麗になったなあ。もう、大丈夫だ! ありがとうな!」
「いえいえ!」

 手伝いが終わり、帰り際。漁師からぬらりひょんにある物が手渡された。

「ほれ、飴だ」

 手渡されたのは、飴玉3つ。黄色が2つと白が1つだ。

「くれるの?」
「おう、御駄賃だ」
「ありがとう!」

 飴玉を貰ったぬらりひょんは、満面の笑顔を浮かべながら歩いていくのだった。

「うん?」

 漁港から離れ海沿いをしばらく歩くと、左側に防空壕が見えてきた。大体人2人分は通れそうな幅に見える。

(前からあったっけ)

 以前この辺を歩いた時は、防空壕は無かったはずだ。ここ最近作られたのだろうか。

「千恵子姉ちゃん、中入ってみようよ」
「えー……」

 勝手に防空壕の中に入っていいのだろうか。

「大丈夫だって」
「はいはい……じゃあ、ちょっと入ってみようか」
 
 仮に見つかって怒られたら……自主的に訓練した。とでも言い訳しようかなどと考えながら、防空壕の中に入る。

「なんにも見えない」

 中はぬらりひょんの言う通り、真っ暗闇が広がり何にも見えない。しかし、前方に白い光が僅かながらに見える。

「あそこまで行ってみたい」

 ぬらりひょんは真っ暗闇に臆する事無く、出口らしき白い光に向かって猛然と走り始めた。

「えっ、ちょっ……足元気をつけてよ!」
「大丈夫大丈夫」

 ぬらりひょんの走りが思ったより早い。
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