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第122話 梅雨とクジラと兵隊さん
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梅雨に入った。雨が降る機会が多くなり、家の中で過ごす機会も増えた。
「ただいま戻りましたぁ」
お昼前に沼霧さんと母親が戻ってきた。肩や腕の周りが少し雨で濡れてしまっている。
「おかえり、手ぬぐいいる?」
「千恵子頂戴。沼霧さんの分も」
「あっ、いや、私は大丈夫ですよ」
「いやいや、風邪引いちゃいけないでしょ」
手ぬぐいを母親と沼霧さんに渡した時、母親があ、そうだと口を開いた。
「今日からクジラ漁始まったみたいだから、お肉買ってきたわよ」
「え? もう?」
いつもから梅雨が開けてからの時期だったはずだが、前倒しになったのだろうか。母親はクジラ肉も入っている手提げ袋を沼霧さんに手渡した。
「お昼はクジラ肉で何か作りましょうか」
「沼霧さん、夜の分も残しといて。私着替えてくるから」
「ヨシさん了解です」
沼霧さんはそのまま台所へ向かい、食材を片付けたりしている。
「沼霧さん、お昼は何にする?」
「クジラ肉で炒め物はどうです? キャベツもありますし」
確かに、それならちゃちゃっとできそうだ。私は賛成の意思を沼霧さんに示しつつ早速昼食作りの準備を進める。
「すみませーーん」
ふと、玄関から男性の声が聞こえてきた。何だろうか。
「はーーい」
沼霧さんが玄関に向かったので、私も後についていく。玄関の扉を開いた先にいたのは若い陸軍の兵士だった。
「すみません、こちら川上家の別荘ですよね?」
彼の問いに沼霧さんがはい、そうですが。と答える。すると、彼はカバンから白い封筒を取り出した。
「こちら、篝先生からのお手紙になります」
「篝先生から?!」
「はい、そちらお届けに上がりました。では、これにて失礼いたします」
陸軍兵士は帽子を取って頭を下げると静かに玄関の扉を開いて退出していった。沼霧さんが持つ白い封筒には確かに「篝」と書かれている。
「読んでみましょう」
封筒をハサミで開き、中から便箋を取り出して読む。
『皆さんご息災でしょうか。こちらは元気です。ですが空襲の残した被害は甚大で、医者も看護婦も衛生兵も足りていない状況です。なのでそちらに戻るにはまだ時間がかかりそうです。皆さんの健康を祈っております』
という内容の文章が書かれていた。
「まだ、帰ってはこれなさそうか」
「みたいですね。よほどひどいんでしょう……」
「うん……」
私はその手紙を着替え終えた母親に渡した。
「まだ帰ってこれなさそう」
「そうなの……心配になるわね」
「うん……」
久しぶりに彼の安否を知れたのは良かったが、まだまだ心配と不安の種は尽きなさそうである。
「ただいま戻りましたぁ」
お昼前に沼霧さんと母親が戻ってきた。肩や腕の周りが少し雨で濡れてしまっている。
「おかえり、手ぬぐいいる?」
「千恵子頂戴。沼霧さんの分も」
「あっ、いや、私は大丈夫ですよ」
「いやいや、風邪引いちゃいけないでしょ」
手ぬぐいを母親と沼霧さんに渡した時、母親があ、そうだと口を開いた。
「今日からクジラ漁始まったみたいだから、お肉買ってきたわよ」
「え? もう?」
いつもから梅雨が開けてからの時期だったはずだが、前倒しになったのだろうか。母親はクジラ肉も入っている手提げ袋を沼霧さんに手渡した。
「お昼はクジラ肉で何か作りましょうか」
「沼霧さん、夜の分も残しといて。私着替えてくるから」
「ヨシさん了解です」
沼霧さんはそのまま台所へ向かい、食材を片付けたりしている。
「沼霧さん、お昼は何にする?」
「クジラ肉で炒め物はどうです? キャベツもありますし」
確かに、それならちゃちゃっとできそうだ。私は賛成の意思を沼霧さんに示しつつ早速昼食作りの準備を進める。
「すみませーーん」
ふと、玄関から男性の声が聞こえてきた。何だろうか。
「はーーい」
沼霧さんが玄関に向かったので、私も後についていく。玄関の扉を開いた先にいたのは若い陸軍の兵士だった。
「すみません、こちら川上家の別荘ですよね?」
彼の問いに沼霧さんがはい、そうですが。と答える。すると、彼はカバンから白い封筒を取り出した。
「こちら、篝先生からのお手紙になります」
「篝先生から?!」
「はい、そちらお届けに上がりました。では、これにて失礼いたします」
陸軍兵士は帽子を取って頭を下げると静かに玄関の扉を開いて退出していった。沼霧さんが持つ白い封筒には確かに「篝」と書かれている。
「読んでみましょう」
封筒をハサミで開き、中から便箋を取り出して読む。
『皆さんご息災でしょうか。こちらは元気です。ですが空襲の残した被害は甚大で、医者も看護婦も衛生兵も足りていない状況です。なのでそちらに戻るにはまだ時間がかかりそうです。皆さんの健康を祈っております』
という内容の文章が書かれていた。
「まだ、帰ってはこれなさそうか」
「みたいですね。よほどひどいんでしょう……」
「うん……」
私はその手紙を着替え終えた母親に渡した。
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「そうなの……心配になるわね」
「うん……」
久しぶりに彼の安否を知れたのは良かったが、まだまだ心配と不安の種は尽きなさそうである。
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