ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違って淫らな模様です

二位関りをん

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第24話 あの日から

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「んん~~っ!」
 
 唇から逃れたくても逃れられない。彼の舌が咲良の舌にまとわりついて離そうとしないからだ。息が苦しくなっていくのに、この後待ち受けているであろう快楽を身体が想像してしまう。それだけで胸が高鳴って拒否したい気持ちが消えてゆくのを感じた。

「ぷはっ……! はあっ、はあ……せん、ぱい……」
「本当に契約、更新しないの? お試しだけで終わらせたい?」
「私だって、出来る事なら先輩と……!」
「だよな。俺も君とずっと一緒にいたい。だめか?」

 ぎゅっと咲良を抱きしめたまま、秀介は耳元で息を吐いた。その息を右耳で受け止めると甘美な感覚がぴくりと感じられる。

「ははっ、赤くなってる。もう俺なしじゃ生きていけないよね。俺以外の男なんて考えられないって感じになってる」
「うっ……私は、先輩しか……」
「俺ももう、君なしじゃ生きていけない。君以外の女なんて抱けないし、ひとりでいるなんて更に無理だ」

 秀介の身体が名残惜しそうに離れていくのを見た咲良は、無意識に彼の胸へと飛び込んだ。
 母親は怖い。それ以上に彼と離れ離れになるのは怖いと言う域に収まるものではないのだ。

「俺さ、咲良の事前から知ってたんだよね」
「え?」

 唐突な告白を聞いた咲良は、見上げて秀介の顔を見つめる。彼の瞳は過去を懐かしむような、そんな瞳だった。

「えっと、いつからですか……?」

 中高と同じ学校だった以上、どこかで接点を持ってもおかしくはないのだが、咲良から見て秀介のカミングアウトはあまりにも突飛だった為、うまく飲み込められない。

「高校卒業前だな。図書室に本を借りたら俺の後に咲良の名前が書いてあってさ」
「あ!」
(どんな本を借りてるのか気になって後をつけてたの、バレてた?!)

 ふふっと笑う彼へ対し、咲良は実は……。と打ち明ける。

「え? じゃあ医療系に興味があるって事じゃなかったのか?」
「もちろんありました! そういうドラマもちょいちょい見てましたので……! ですけど、先輩が読んでいる本の内容、知りたかったのが大きいです……はい……」
「そっか。じゃあさ、あの時読んだ本、覚えてるならどう感じたか教えてよ」
「最初読んだ時はすごくむつかしいなと感じたのは覚えています。でも繰り返し読みこんでいくうちに面白さは湧いてきました。それで、医者になった先輩を妄想して、小説にしたり……」

 へえ~~と興味深そうに相槌を打つ秀介の顔を、咲良はまばたきせずにじっと見上げる。

「もしかしてさ、教室でノートに何か書いていたのも小説?」
「は、はい……バレてしまいましたね……」
「なるほどなあ、これで全部つながった。んじゃ、俺のハンカチ拾ってくれたのも覚えてるよな?」
「勿論です! あんなハンカチ使ってるんだなとか思ったのは、覚えています……!」

 あの日廊下に落ちていた淡い水色のハンカチがありありと思い浮かぶ。それについてもちゃんと把握してくれていた事に咲良は嬉しさがこみあげてきた。

「忘れないわけがないです。だって先輩の私物に初めて触った体験でしたし! あ、なんか気持ち悪いですよねすみません」
「いやいや。俺の帰りを待たずに消えていったから余計に気になって。でもあの時お礼を言えてなかったよな。今更だけどありがとう」

 咲良の目を見て与えられた感謝の言葉が、咲良の胸の奥までしみ込んでいく。その瞬間脳裏にちらついていた母親の嫌な姿も全部忘れられた。

「どういたしまして。先輩」

 おろしていた黒髪を撫でられると、胸の奥が浮ついて、足全体が軽くなる。大好きな人から触れられるのはこんなに嬉しくて尊いものなのかと改めて認識した。
 だからこそ、彼の側から離れたくない気持ちがより高まる。

「私、先輩から離れたくないです」
「うん」
「ずっと一緒に、いたいです……!」
「じゃあ、お試し契約は?」

 息と共に重苦しいものを全て吐き出してから、迷いを全て打ち消すように再び秀介の目を見つめる。

「これからもずっと側にいさせてください」
「わかった。俺も一緒にいさせてくれないか?」
「はい。こちらこそお願いします。こうなる事をずっと……夢に描いてきたんです」
「君の願い、俺が叶えてみせる。だからもう離さない……今日から俺の妻として、よろしく頼む」

 秀介の背中にそっと両手を回した。筋肉質な部分はあまり変わってはいなかったが、前よりも身体の肉が薄くなった気がする。

「先輩、痩せましたか?」
「あ――どうだろう、忙しいからかな……」
「もっと食べてください。お弁当の量も増やしますから。特にオペは体力勝負ですし」
「咲良……心配かけてしまったな。ありがとう。君を見つけられて本当に良かった」

 彼の声がこんなにも愛おしい。側にいるだけで心が温かくなる。思い描いていた妄想が現実となった感覚が更に嬉しさを湧き立たせてくれた。

「先輩、大好きです……」
「もう先輩呼びしなくていいんじゃない? でも先輩呼びも新鮮だからいいか」
「ふふっ……ずっと先輩呼びしていたから、なんだかこれで定着しちゃいましたね」

 深く抱きしめあったまま笑い合うと、導かれていくように唇が重なった。これまで何度も交わしてきた口づけの中で、もっとも優しいぬくもりを感じられる。そんな気がした咲良だった。
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