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第26話 楓華の担当医
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どこからどう見ても中崎楓華としか書いていないし、実家の住所もミスはない。まさかの展開に咲良の脳は現実を受け入れるのを拒もうとしている。
「え……なんで、楓華さん……だって楓華さんは兄さんと結婚して、子供もいるのに……!」
「えっそうだったんですか?! じゃあ浮気じゃないですか!」
博則の大きな声が部屋中に響き渡る。
彼の言う通り楓華は理一と言う伴侶がいて子供を身ごもっている。そんな彼女が他の男性、しかも秀介を狙っていたのは十分浮気の範疇に入る。
更に咲良は、こないだ母親が電話でしゃべっていた話についても思い出した。
「そういえば、お母さん……楓華さんから私と先輩が結婚したって、言っていたような……」
「咲良さん、それいつのお話です?」
「矢木さん、確か……こないだの話で」
時期を照らし合わせてみると、母親が電話をかけてきた前後のタイミングである事が判明した。
「じゃあ、どこかで楓華さんが私と先輩について知って、それをお母さんに教えたのと、こんな手紙を病院に寄越すようになった、と……」
「多分そうだと思います。じゃなければこんな事あり得ないですよ!」
「そう言えば咲良さん。もしかしたら手紙、うちにも届いているかもしれません。全て廃棄するようにと春日さんからご指示は受けておりますが、手紙などは念のために取っておいているので」
あの化粧品などが届いた時、秀介と松原はこのようなやり取りを交わしていた。
――松原さん、全部廃棄でいいですよ。
――かしこまりました。
――もったいないかもしれないけど、俺らには必要ないモノですから。
思い出した咲良は松原に保管していた手紙を持ってくるようにお願いする。しばらくして3通ほど手元に用意され、松原が開封した所、狙いは的中した。
「奥様とは別れた方がいいです。噂で聞きました、地味なお方だって。そんな方よりもふさわしいお嬢さんはいらっしゃるのにもったいない。……そう書かれております」
「松原さん……」
「咲良さんお気になさらないでください。あなたは春日さんに最もふさわしいお方だと私は存じております」
「春日先生、あなたの事とっても大事に思っていらっしゃいます! この手紙を書いた人ははとっても失礼なお方だ、どうにかしなければ……!」
衝撃に頭がくらくらするが、早くどうにかしないと秀介や自分へ身の危険が及ぶかもしれない。それに最初ストーカーから花束が届いた時に彼へ発した言葉がよぎる。
――先輩、私が守ります!
――だ、だって、春日先輩に何かあったらって思うと心配です……! 春日先輩の事、放っておけないですよ……!
(そうだ、先輩を守らなきゃ! 先輩に何かあったら怖いし、好きな人が危険な目に合うのは嫌だ!)
すっと息を吐いて、己の覚悟を整える。
「大学病院へ行って話し合いましょう……! お世話になっている警察の方も呼びたいと思うのですが、矢木さんよろしいですか?」
「かしこまりました!」
そうと決まれば行動は早い。あの楓華と対峙し、自分達の幸せを守らなければと咲良はまだ震えが残る足を無理やり動かして意気込んだ。
◇ ◇ ◇
大学病院の医局内にある最も大きい面談室に、秀介や佳苗ら医師と咲良や博則らが集った。そしてストーカー被害について世話になっている奥野と部下である警察官2名も顔をそろえる。
「お忙しい所お集まりいただきありがとうございます」
震えながら彼らへ咲良が頭を下げる。その隣で秀介も同じように深々と礼をした。
「おふたりは全く悪くないわ。だから気にしないで」
「教授……」
「まずはどうするかを考えましょう。そして状況の整理もしないと」
佳苗に促され、まずは今起こっている状況を簡単にまとめていく。
「そして、こちらが楓華さんの名前と宛先が記されているものです」
「ありがとう咲良さん。これ、ちょっと調べてみるわね」
佳苗は面談室内にある白いデスクトップ型のパソコンのキーボードをかたかたと入力し始めた。ほんの数秒後、これね。と彼女の低い声音が響き渡る。
「ほら、この画面。楓華さんはうちに来院歴がある。それに今度また産婦人科に来院予定があるわ」
「! ほ、本当だ……!」
その場にいた全員が画面にくぎ付けとなった。
「楓華さんの担当医は埼玉先生ね。春日くん、ご存じ?」
「はい。時々話したりしています。同期なので」
楓華の担当医・埼玉は産婦人科に属する男性医師。秀介とは大学時代からの縁がある。すかさず佳苗が持っていたピッチで彼に医局に来るように指示を出した。
「今診察中だからそれが終わったら、一旦中断してこっちに来てくれるそうよ」
「え、そんな、診察中なのに大丈夫なんでしょうか?」
「心配しないで咲良さん。あなた方の為ならなんだってするわ。ねえ、春日くん」
「教授からそう仰っていただけてとても光栄です」
しばらくして、白衣に水色のスクラブと秀介とお揃いの格好をした埼玉が駆け足で入室してきた。中性的な顔つきと体格をした彼の髪型は、パーマが当てられた茶色いショートヘアで、毛先があちこちかなりあらぶっている。しかし本人に気にする素振りはない。
「すみません! 遅くなってしまいました……!」
「さいさん、忙しい所ごめんよ」
「いい、いい! 秀さんこそ……!」
(この2人仲いいんだ)
咲良の創作意欲と妄想癖が沸き立ちそうになった所で、佳苗が埼玉へ楓華についてどのような人物かを説明してほしいと声を掛けた。
「わかりました。多少きつさはありますけど、こちらの指示はちゃんと守っている普通の妊婦さんだとは思います。ただ……」
「え……なんで、楓華さん……だって楓華さんは兄さんと結婚して、子供もいるのに……!」
「えっそうだったんですか?! じゃあ浮気じゃないですか!」
博則の大きな声が部屋中に響き渡る。
彼の言う通り楓華は理一と言う伴侶がいて子供を身ごもっている。そんな彼女が他の男性、しかも秀介を狙っていたのは十分浮気の範疇に入る。
更に咲良は、こないだ母親が電話でしゃべっていた話についても思い出した。
「そういえば、お母さん……楓華さんから私と先輩が結婚したって、言っていたような……」
「咲良さん、それいつのお話です?」
「矢木さん、確か……こないだの話で」
時期を照らし合わせてみると、母親が電話をかけてきた前後のタイミングである事が判明した。
「じゃあ、どこかで楓華さんが私と先輩について知って、それをお母さんに教えたのと、こんな手紙を病院に寄越すようになった、と……」
「多分そうだと思います。じゃなければこんな事あり得ないですよ!」
「そう言えば咲良さん。もしかしたら手紙、うちにも届いているかもしれません。全て廃棄するようにと春日さんからご指示は受けておりますが、手紙などは念のために取っておいているので」
あの化粧品などが届いた時、秀介と松原はこのようなやり取りを交わしていた。
――松原さん、全部廃棄でいいですよ。
――かしこまりました。
――もったいないかもしれないけど、俺らには必要ないモノですから。
思い出した咲良は松原に保管していた手紙を持ってくるようにお願いする。しばらくして3通ほど手元に用意され、松原が開封した所、狙いは的中した。
「奥様とは別れた方がいいです。噂で聞きました、地味なお方だって。そんな方よりもふさわしいお嬢さんはいらっしゃるのにもったいない。……そう書かれております」
「松原さん……」
「咲良さんお気になさらないでください。あなたは春日さんに最もふさわしいお方だと私は存じております」
「春日先生、あなたの事とっても大事に思っていらっしゃいます! この手紙を書いた人ははとっても失礼なお方だ、どうにかしなければ……!」
衝撃に頭がくらくらするが、早くどうにかしないと秀介や自分へ身の危険が及ぶかもしれない。それに最初ストーカーから花束が届いた時に彼へ発した言葉がよぎる。
――先輩、私が守ります!
――だ、だって、春日先輩に何かあったらって思うと心配です……! 春日先輩の事、放っておけないですよ……!
(そうだ、先輩を守らなきゃ! 先輩に何かあったら怖いし、好きな人が危険な目に合うのは嫌だ!)
すっと息を吐いて、己の覚悟を整える。
「大学病院へ行って話し合いましょう……! お世話になっている警察の方も呼びたいと思うのですが、矢木さんよろしいですか?」
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そうと決まれば行動は早い。あの楓華と対峙し、自分達の幸せを守らなければと咲良はまだ震えが残る足を無理やり動かして意気込んだ。
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大学病院の医局内にある最も大きい面談室に、秀介や佳苗ら医師と咲良や博則らが集った。そしてストーカー被害について世話になっている奥野と部下である警察官2名も顔をそろえる。
「お忙しい所お集まりいただきありがとうございます」
震えながら彼らへ咲良が頭を下げる。その隣で秀介も同じように深々と礼をした。
「おふたりは全く悪くないわ。だから気にしないで」
「教授……」
「まずはどうするかを考えましょう。そして状況の整理もしないと」
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「そして、こちらが楓華さんの名前と宛先が記されているものです」
「ありがとう咲良さん。これ、ちょっと調べてみるわね」
佳苗は面談室内にある白いデスクトップ型のパソコンのキーボードをかたかたと入力し始めた。ほんの数秒後、これね。と彼女の低い声音が響き渡る。
「ほら、この画面。楓華さんはうちに来院歴がある。それに今度また産婦人科に来院予定があるわ」
「! ほ、本当だ……!」
その場にいた全員が画面にくぎ付けとなった。
「楓華さんの担当医は埼玉先生ね。春日くん、ご存じ?」
「はい。時々話したりしています。同期なので」
楓華の担当医・埼玉は産婦人科に属する男性医師。秀介とは大学時代からの縁がある。すかさず佳苗が持っていたピッチで彼に医局に来るように指示を出した。
「今診察中だからそれが終わったら、一旦中断してこっちに来てくれるそうよ」
「え、そんな、診察中なのに大丈夫なんでしょうか?」
「心配しないで咲良さん。あなた方の為ならなんだってするわ。ねえ、春日くん」
「教授からそう仰っていただけてとても光栄です」
しばらくして、白衣に水色のスクラブと秀介とお揃いの格好をした埼玉が駆け足で入室してきた。中性的な顔つきと体格をした彼の髪型は、パーマが当てられた茶色いショートヘアで、毛先があちこちかなりあらぶっている。しかし本人に気にする素振りはない。
「すみません! 遅くなってしまいました……!」
「さいさん、忙しい所ごめんよ」
「いい、いい! 秀さんこそ……!」
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咲良の創作意欲と妄想癖が沸き立ちそうになった所で、佳苗が埼玉へ楓華についてどのような人物かを説明してほしいと声を掛けた。
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