婚約者を妹に奪われ、家出して薬師になった令嬢は王太子から溺愛される。

二位関りをん

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第35話 王太后様の看病

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 ある日の午後の事。医務室にメイドが慌ててやってきた。

「王太后様の体調がすぐれず……」

 私が病状について質問すると、持病のリウマチが悪化してきているのだという。

「先ほどから熱っぽさも訴えておいでで」

 こうして急遽、王太后様の追加の診察が決まった。私達は急いで王太后様のいる部屋に向かった。

「王太后様、失礼いたします」
「どうぞ……」

 ベッドで寝ている王太后様は見るからに顔色が悪い。それに白髪交じりの髪も王太后らしく無い程に乱れている。
 医師の診察の間中、王太后様は苦しそうに咳をしていた。

「肺を病んでおられます。熱もあります。急いで炎症止めの薬を」

 医師からそう言われ、私達薬師は宮廷内の廊下を走って炎症止めに咳止めに痛み止めや熱冷ましの薬をありったけ用意する。

「お待たせしました」
「王太后様、早速飲みましょう」

 医師の進言に、王太后はベッドの中から黙って頷く。

「痛み止めは無いかしら? 頭も痛くて」
(熱があるからだろうか)

 頭痛に効く薬も勿論用意してきた。それぞれ粉末にしたものをメイドが用意したお白湯に溶かし、飲ませる。改めて見ても王太后様のリウマチはかなり進行しているのか、関節にところどころ症状が出ているのが分かる。

「はあーー……」
「王太后様、どうですか?」

 と、医師が王太后様の間近で尋ねると、王太后様は何度か首を縦にふる。

「効いている気がしますわね……」

 王太后様がゆっくりと大きく息を吐いた。医師はその言葉を受け、ほっと息を吐きながら良かったです。と返す。

「では、また来ます」
「ありがとう、医師の方達」

 薬が効いていると判断した医師により、私達はひとまず診察を終えて、医務室に戻ろうとした。

「ああ、ハイダとジャスミン。お待ちなさい」

 王太后が私とハイダを呼び止めた。王太后は私とハイダだけを残すよう指示を出す。

「何でしょうか、王太后様」
「ハイダ、せっかくですし、私の話に付き合って頂けませんか? ジャスミンもぜひ」

 何やら王太后様は話をしたいらしい。皺はあるが美しく煌めきを放つその目にはうっすら、寂しさが漂っているように見えた。

「そう言えば2人とも、令嬢出身でしたわね。私も同じだと思って」

 王太后様は公爵家出身の気位の高い方とは、両親から一度聞いた事があった。

(昔話だろうか?)
「王太后様、何をお話になさるので?」
「ジャスミン、気になりますか?」
「はい」
「昔話をしようと思いましてね」
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