婚約者を妹に奪われ、家出して薬師になった令嬢は王太子から溺愛される。

二位関りをん

文字の大きさ
39 / 88

第35話 王太后様の看病

しおりを挟む
 ある日の午後の事。医務室にメイドが慌ててやってきた。

「王太后様の体調がすぐれず……」

 私が病状について質問すると、持病のリウマチが悪化してきているのだという。

「先ほどから熱っぽさも訴えておいでで」

 こうして急遽、王太后様の追加の診察が決まった。私達は急いで王太后様のいる部屋に向かった。

「王太后様、失礼いたします」
「どうぞ……」

 ベッドで寝ている王太后様は見るからに顔色が悪い。それに白髪交じりの髪も王太后らしく無い程に乱れている。
 医師の診察の間中、王太后様は苦しそうに咳をしていた。

「肺を病んでおられます。熱もあります。急いで炎症止めの薬を」

 医師からそう言われ、私達薬師は宮廷内の廊下を走って炎症止めに咳止めに痛み止めや熱冷ましの薬をありったけ用意する。

「お待たせしました」
「王太后様、早速飲みましょう」

 医師の進言に、王太后はベッドの中から黙って頷く。

「痛み止めは無いかしら? 頭も痛くて」
(熱があるからだろうか)

 頭痛に効く薬も勿論用意してきた。それぞれ粉末にしたものをメイドが用意したお白湯に溶かし、飲ませる。改めて見ても王太后様のリウマチはかなり進行しているのか、関節にところどころ症状が出ているのが分かる。

「はあーー……」
「王太后様、どうですか?」

 と、医師が王太后様の間近で尋ねると、王太后様は何度か首を縦にふる。

「効いている気がしますわね……」

 王太后様がゆっくりと大きく息を吐いた。医師はその言葉を受け、ほっと息を吐きながら良かったです。と返す。

「では、また来ます」
「ありがとう、医師の方達」

 薬が効いていると判断した医師により、私達はひとまず診察を終えて、医務室に戻ろうとした。

「ああ、ハイダとジャスミン。お待ちなさい」

 王太后が私とハイダを呼び止めた。王太后は私とハイダだけを残すよう指示を出す。

「何でしょうか、王太后様」
「ハイダ、せっかくですし、私の話に付き合って頂けませんか? ジャスミンもぜひ」

 何やら王太后様は話をしたいらしい。皺はあるが美しく煌めきを放つその目にはうっすら、寂しさが漂っているように見えた。

「そう言えば2人とも、令嬢出身でしたわね。私も同じだと思って」

 王太后様は公爵家出身の気位の高い方とは、両親から一度聞いた事があった。

(昔話だろうか?)
「王太后様、何をお話になさるので?」
「ジャスミン、気になりますか?」
「はい」
「昔話をしようと思いましてね」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

天才魔術師から逃げた令嬢は婚約破棄された後捕まりました

oro
恋愛
「ねぇ、アデラ。僕は君が欲しいんだ。」 目の前にいる艶やかな黒髪の美少年は、にっこりと微笑んで私の手の甲にキスを落とした。 「私が殿下と婚約破棄をして、お前が私を捕まえることが出来たらな。」 軽い冗談が通じない少年に、どこまでも執拗に追い回されるお話。

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています 【完結】

日下奈緒
恋愛
「地味な令嬢は妃に相応しくない」──そう言い放ち、セレナとの婚約を一方的に破棄した子爵令息ユリウス。彼が次に選んだのは、派手な伯爵令嬢エヴァだった。貴族たちの笑いものとなる中、手を差し伸べてくれたのは、幼馴染の第2皇子・カイル。「俺と婚約すれば、見返してやれるだろう?」ただの復讐のはずだった。けれど──これは、彼の一途な溺愛の始まり。

【完結】 君を愛せないと言われたので「あーそーですか」とやり過ごしてみたら執着されたんですが!?

紬あおい
恋愛
誰が見ても家格の釣り合わない婚約者同士。 「君を愛せない」と宣言されたので、適当に「あーそーですか」とやり過ごしてみたら…? 眉目秀麗な筈のレリウスが、実は執着溺愛男子で、あまりのギャップに気持ちが追い付かない平凡なリリンス。 そんな2人が心を通わせ、無事に結婚出来るのか?

没落令嬢は僻地で王子の従者と出会う

ねーさん
恋愛
 運命が狂った瞬間は…あの舞踏会での王太子殿下の婚約破棄宣言。  罪を犯し、家を取り潰され、王都から追放された元侯爵令嬢オリビアは、辺境の親類の子爵家の養女となった。  嫌々参加した辺境伯主催の夜会で大商家の息子に絡まれてしまったオリビアを助けてくれたダグラスは言った。 「お会いしたかった。元侯爵令嬢殿」  ダグラスは、オリビアの犯した罪を知っていて、更に頼みたい事があると言うが…

冷遇された妻は愛を求める

チカフジ ユキ
恋愛
結婚三年、子供ができないという理由で夫ヘンリーがずっと身体の関係を持っていた女性マリアを連れてきた。 そして、今後は彼女をこの邸宅の女主として仕えよと使用人に命じる。 正妻のアリーシアは離れに追い出され、冷遇される日々。 離婚したくても、金づるであるアリーシアをそう簡単には手放してはくれなかった。 しかし、そんな日々もある日突然終わりが来る。 それは父親の死から始まった。

不器用な大富豪社長は、闇オクで買った花嫁を寵愛する

獅月@体調不良
恋愛
「 御前を幸せにする為に、俺は買ったんだ 」 〜 闇オク花嫁 〜 毒親である母親の為だけに生きてきた彼女は、 借金を得た母の言葉を聞き、 闇オークションへ売られる事になった。 どんな形にしろ借金は返済出来るし、 母の今後の生活面も確保出来る。 そう、彼女自身が生きていなくとも…。  生きる希望を無くし、 闇オークションに出品された彼女は 100億で落札された。 人食を好む大富豪か、 それとも肉体を求めてか…。 どちらにしろ、借金返済に、 安堵した彼女だが…。 いざ、落札した大富豪に引き渡されると、 その容姿端麗の美しい男は、 タワマンの最上階から5階部分、全てが自宅であり、 毎日30万のお小遣いですら渡し、 一流シェフによる三食デザート付きの食事、 なにより、彼のいない時間は好きにしていいという自由時間を言い渡した。 何一つ手を出して来ない男に疑問と不満を抱く日々……だが……? 表紙 ニジジャーニーから作成 エブリスタ同時公開

燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~

二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。 夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。 気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……? 「こんな本性どこに隠してたんだか」 「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」 さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。 +ムーンライトノベルズにも掲載しております。

処理中です...