婚約者を妹に奪われ、家出して薬師になった令嬢は王太子から溺愛される。

二位関りをん

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第65話 婚約破棄※

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「エレーナ! 何をしている!」
「お、お父様?!」

 部屋の中には赤い下地に濃いピンクのレースがついた派手な下着を身に纏ったエレーナ姫に、下半身を露出させたライトマン公爵とグレースバッケン伯爵がいた。ライトマン公爵は白髪にヒゲを蓄えた中年の男性だ。グレースバッケン伯爵よりかは小柄だが、それでも彼の体格が良いのには変わりはない。
 エレーナ姫はベッドの上で四つん這いになり、後ろからグレースバッケン伯爵に突かれていた。エレーナ姫の前にはライトマン公爵がいて、そそり立つそれをエレーナ姫は片手で握り刺激を与えていたようだ。

「エレーナ、彼らとこのような事をしていたのか」

 エレーナ姫の父親であり国王の声で3人は一斉に顔を赤らめながら服に着替え出した。

「ええ、そうよ? 何か悪い事でも?」

 着替えながら全く悪びれもしないエレーナ姫。その態度と声はジュナそっくりだ。

「悪いに決まっているだろう! お前は隣国のアダン王太子殿下と婚約しているのだぞ! もしこの話がアダン王太子殿下にバレて婚約破棄になってしまえば……!」
「恐れながら国王様。アダンは全て聞いておりました」
「え」

 アダン様がここで正体を表した。オールバックにしていた金髪の前髪をばさばさと手で解いて全て降ろす。

「あ、アダン王太子殿下……!」
「事は全てこの耳で聞いていたよ。その前にもエレーナ姫はグレースバッケン伯爵と一緒にいたね?」
「何が悪いのよ?!」
「じゃあ、言おう。俺はエレーナ姫との婚約を破棄する!」

 アダン様はそう高らかに宣言した。そして国王にエレーナ姫のサインが入った書類を持ってくるように注文する。

「あ、アダン王太子殿下! エレーナには良く言って聞かせるからなんとか……!」
「こんなアバズレと婚約なんて無理だね。もし今彼女がグレースバッケン伯爵か、ライトマン公爵そのどちらかとの間に子供を身籠っていたらどうするんだい? そんな面倒事なんてごめんだ」
「くっ……」

 国王は渋々、書類を持ってきた。それをアダン様は受け取り私達にありありと見せる。そしてその場でビリッと破いてしまった。

「という訳でこの婚約は無しだ。陛下。エレーナ姫にはグレースバッケン伯爵かライトマン公爵に嫁がせたら良い。特にライトマン公爵なら公爵だし、降嫁先としても十分だろう」
「わ、わかった……」
「私は認めないわよ! なんでアバズレってだけで……!」
「エレーナ! もうやめろ!」

 国王はいつの間にか着替え終わっていたエレーナ姫の右腕を掴み、部屋から嵐のように出ていった。

「……」
(一件落着かな?)

 ライトマン公爵とグレースバッケン伯爵はその場で呆然と立ち尽くしていたが、程無くして私達に頭を下げて部屋から静かに退出していった。

「ジャスミン、帰ろうか」
「はい、アダン様」

 私達も、静かにその場を後にする。ダンスホールに戻ると貴族達はがやがやと騒ぎながら皆帰路につこうとしていた。

「何かあったんですか?」 
 
 アダン様が貴族の令嬢と令息の2人組にそう質問する。

「今日はもうお開きですって」
「どうやら、エレーナ姫が何かやらかしたみたいだね。陛下があんなに怒っているの見た事無いよ」
「そうか。教えてくれてありがとうございます」

 私達も帰り道を行く貴族達に紛れながら歩いて屋敷に戻ったのだった。
 次の日の朝。屋敷には宝物とお金がたんまりと届いた。朝食を食べ終えた私はアダン様の診察に向かう途中で、その宝物とお金が玄関に運ばれていく様子に遭遇してしまったのである。

「アダン王太子殿下はおりますか?」

 そう使者に尋ねられたので、私は部屋のベッドで眠る彼を起こし、玄関に誘導する。

「これは?」
「婚約破棄のお詫びです。陛下からです」
「そ、そうか……一応受け取るよ」
「ありがとうございます」

 更に一枚、手紙があったらしく、使者はアダン様にそれを両手でうやうやしく渡す。

「ふうん……」

 アダン様は私に手紙をそっと見せて来た。そこには国王による謝罪と、エレーナ姫の今後について書かれている。どうやらグレースバッケン伯爵の元に嫁がせる事にしたようだ。

「ありがとうございます。アダン様。お返しします」
「まさか、こうなるとはね……」
「は、はい」

 婚約破棄した事でここにいる理由ももう無いという事でこのまま国に帰る事になった。宝石やブレスレットにネックレスに指輪がありったけ詰まった箱やお金が入った箱を馬車に詰め込むと、私達の座るスペースはここに来た時により更に狭くなる。なので、国王に馬車を1台貸してくれないかとアダン様が掛け合った結果、すぐに貸してくれたのだった。

「借りた方に箱を載せよう」
「はっ」

 アダン様の表情は晴れやかだった。私の胸の中ももやもやがいつの間にか消え去り、穏やかなものになっていた。

「帰ろう」

 私達を乗せた馬車は、勢いよく進み始めた。

(良かった良かった)

 私は馬車の中でふっと肩で息を吐いたのだった。その様子をアダン様が見ていたようだ。

「ジャスミン良かったね」
「えっ」
「だってそうじゃない?」
「ま、まあ……はい……」
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