75 / 88
第66話 婚約破棄の後
しおりを挟む
私達が宮廷に戻った後、アダン様は私と従者を連れてエレーナ姫との婚約を破棄した事を国王陛下と王妃アネーラに直接伝えたのだった。
「そうなのね……なら仕方ないわね」
王妃アネーラはやや納得がいかないといった表情だったが、エレーナ姫が他の男複数と肉体関係を持っていた事はさすがに見過ごせなかったらしく、仕方ないとあきらめたのだった。国王陛下は特にアダン様を叱る事も褒める事もなく、アダン様の報告に対して頷くだけだった。
(よかったのかな?)
数日後。隣国から書状が届き、アダン様がそれを私に見せてくれた。エレーナ姫はグレースバッケン伯爵とは幼馴染の間柄らしく、仲も親しいのだった。伯爵家とはいえ、最初から彼と婚約して結ばれていたほうが良かった気はするが。
ライトマン公爵はエレーナ姫の母親……王妃のいとこにあたる人物で、彼もまたエレーナ姫が幼い頃からの仲だと記されていた。彼にはすでに妻がいる為、エレーナ姫はライトマン公爵ではなくグレースバッケン伯爵の元に嫁ぐ事が決まったのだった。
なお、この結婚により、グレースバッケン伯爵は伯爵から公爵に格上げされた。おそらく国王の娘が伯爵家に嫁ぐよりかは、公爵家の方が見栄えが良いという判断だろう。
「エレーナ姫とグレースバッケン公爵との結婚式は、1週間後に行われる、と……」
「俺は行かないよ。代わりに使者を送る予定」
「そうですか」
(その方が良いだろう)
こうしてアダン様とエレーナ姫との間に起きた婚約騒動は幕を閉じたのだった。
「医薬師長、あちらの国はどうでしたか? その、エレーナ姫とか」
お昼の食事休憩の際、ウィリアがそう私へと興味深そうに尋ねてきた。
「エレーナ姫はまあ……奔放な方でしたね」
「お姫様は皆、そうなのですか?」
「皆そうではないとは思うわ」
「ウィリアさん。令嬢も王女も様々な方がいらっしゃるんですよ」
「医薬師長、ハイダさん……確かにそうですよね。失礼いたしました」
「いえいえ、お気になさらず」
今日のお昼ご飯は、パンに鳥肉のローストに、サラダとマカロニが入ったスープ。ウィリアはここで出る食事をいつも本当に美味しそうに食べてくれている。そのおかげか、初めて会った時よりも肌艶が良くなって全体的にハリが出たように見える。
「ごちそうさまでした」
お昼休憩を終えたら、また仕事に戻る。薬の仕分けに干した薬草を粉末にして薬を作る作業。残っている仕事はまだ残っている。
(頑張らないと)
「そうなのね……なら仕方ないわね」
王妃アネーラはやや納得がいかないといった表情だったが、エレーナ姫が他の男複数と肉体関係を持っていた事はさすがに見過ごせなかったらしく、仕方ないとあきらめたのだった。国王陛下は特にアダン様を叱る事も褒める事もなく、アダン様の報告に対して頷くだけだった。
(よかったのかな?)
数日後。隣国から書状が届き、アダン様がそれを私に見せてくれた。エレーナ姫はグレースバッケン伯爵とは幼馴染の間柄らしく、仲も親しいのだった。伯爵家とはいえ、最初から彼と婚約して結ばれていたほうが良かった気はするが。
ライトマン公爵はエレーナ姫の母親……王妃のいとこにあたる人物で、彼もまたエレーナ姫が幼い頃からの仲だと記されていた。彼にはすでに妻がいる為、エレーナ姫はライトマン公爵ではなくグレースバッケン伯爵の元に嫁ぐ事が決まったのだった。
なお、この結婚により、グレースバッケン伯爵は伯爵から公爵に格上げされた。おそらく国王の娘が伯爵家に嫁ぐよりかは、公爵家の方が見栄えが良いという判断だろう。
「エレーナ姫とグレースバッケン公爵との結婚式は、1週間後に行われる、と……」
「俺は行かないよ。代わりに使者を送る予定」
「そうですか」
(その方が良いだろう)
こうしてアダン様とエレーナ姫との間に起きた婚約騒動は幕を閉じたのだった。
「医薬師長、あちらの国はどうでしたか? その、エレーナ姫とか」
お昼の食事休憩の際、ウィリアがそう私へと興味深そうに尋ねてきた。
「エレーナ姫はまあ……奔放な方でしたね」
「お姫様は皆、そうなのですか?」
「皆そうではないとは思うわ」
「ウィリアさん。令嬢も王女も様々な方がいらっしゃるんですよ」
「医薬師長、ハイダさん……確かにそうですよね。失礼いたしました」
「いえいえ、お気になさらず」
今日のお昼ご飯は、パンに鳥肉のローストに、サラダとマカロニが入ったスープ。ウィリアはここで出る食事をいつも本当に美味しそうに食べてくれている。そのおかげか、初めて会った時よりも肌艶が良くなって全体的にハリが出たように見える。
「ごちそうさまでした」
お昼休憩を終えたら、また仕事に戻る。薬の仕分けに干した薬草を粉末にして薬を作る作業。残っている仕事はまだ残っている。
(頑張らないと)
19
あなたにおすすめの小説
余命一ヶ月の公爵令嬢ですが、独占欲が強すぎる天才魔術師が離してくれません!?
姫 沙羅(き さら)
恋愛
旧題:呪いをかけられて婚約解消された令嬢は、運命の相手から重い愛を注がれる
ある日、婚約者である王太子名義で贈られてきた首飾りをつけた公爵令嬢のアリーチェは、突然意識を失ってしまう。
実はその首飾りにつけられていた宝石は古代魔道具で、謎の呪いにかかってしまったアリーチェは、それを理由に王太子から婚約解消されてしまう。
王太子はアリーチェに贈り物などしていないと主張しているものの、アリーチェは偶然、王太子に他に恋人がいることを知る。
古代魔道具の呪いは、王家お抱えの高位魔術師でも解くことができない。
そこでアリーチェは、古代魔道具研究の第一人者で“天才”と名高いクロムに会いに行くことにするが……?(他サイト様にも掲載中です。)
だったら私が貰います! 婚約破棄からはじまる溺愛婚(希望)
春瀬湖子
恋愛
【2025.2.13書籍刊行になりました!ありがとうございます】
「婚約破棄の宣言がされるのなんて待ってられないわ!」
シエラ・ビスターは第一王子であり王太子であるアレクシス・ルーカンの婚約者候補筆頭なのだが、アレクシス殿下は男爵令嬢にコロッと落とされているようでエスコートすらされない日々。
しかもその男爵令嬢にも婚約者がいて⋯
我慢の限界だったシエラは父である公爵の許可が出たのをキッカケに、夜会で高らかに宣言した。
「婚約破棄してください!!」
いらないのなら私が貰うわ、と勢いのまま男爵令嬢の婚約者だったバルフにプロポーズしたシエラと、訳がわからないまま拐われるように結婚したバルフは⋯?
婚約破棄されたばかりの子爵令息×欲しいものは手に入れるタイプの公爵令嬢のラブコメです。
《2022.9.6追記》
二人の初夜の後を番外編として更新致しました!
念願の初夜を迎えた二人はー⋯?
《2022.9.24追記》
バルフ視点を更新しました!
前半でその時バルフは何を考えて⋯?のお話を。
また、後半は続編のその後のお話を更新しております。
《2023.1.1》
2人のその後の連載を始めるべくキャラ紹介を追加しました(キャサリン主人公のスピンオフが別タイトルである為)
こちらもどうぞよろしくお願いいたします。
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
離宮に隠されるお妃様
agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか?
侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。
「何故呼ばれたか・・・わかるな?」
「何故・・・理由は存じませんが」
「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」
ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。
『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』
愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる