後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん

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第78話 新たな力

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 美華が目覚めた頃、浩明は必死にお経を唱え、鈴蘭は真言マントラを唱えながらくるくると舞を見せていた。
 鈴蘭の舞は美華には見えないが、声と共に衣服のこすれ合う音や、ギシギシと床が踏みならされる音は聞こえてくるため、舞を舞っている事は理解できる。

「美華! 起きたのか!?」
「あっはい。ちょうど目が覚めたので。今、前には巨人型の黒い泥がいます?」
「そうだな……」
「では、さっそく御仏様から頂いた力を使ってみますね」

 いつも通りのんびりとした雰囲気のまま、美華は前方に右手をかざし、波動の力を出した。鱗粉のような黄金の光が美華の手から放たれ、対象へ向かうと巨人型の黒い泥に優しく纏わりつく。

「おおっ?」
「消えていきますね……まるで黄金の光に包まれ蒸発していくみたいに」
「これまで美華が波動の力を使う時、黄金の光は現れなかったが……」

 灯りを灯しながら、浩明と鈴蘭は巨人型の黒い泥が消えていくのを見つめる。
 美華は波動の力から前方には障害物がいないのを察知し、巨人型の黒い泥が全て消えた事を理解した。

「すごいですね、さすがは御仏様」

 と、美華が呟くと浩明が彼女の近くに駆け寄ってきた。

「それが……新たな力か」
「はい。御仏様よりくださった、新たな力でございます」
「……皇后様……」
「黒い泥も、少しなら浄化出来ます。これで私は邪龍の死体を再封印します」

 美華の力強い宣言に、浩明は自信をつけたな。と語りかける。

「こちらも負けてはいられませんね。呪術をより深めていかないと」

 美華に対してより対抗心を燃やす鈴蘭の目はいつもよりきらきらと輝いていた。

「鈴蘭さん、一緒に頑張りましょう」
「言われなくても分かっています」

 ふん、と鼻を鳴らす鈴蘭だが、嬉しそうなのは隠しきれていない様子だった。

「よし、もう少ししたら寝ずの番を変わろうか」
「次は……劉貴妃様でしたね、陛下」

 しばらくして劉貴妃が寝床からもそもそと這い出てきた。

「ふわあ……お待たせしましたわ」
「眠そうだな、劉貴妃よ」
「ぐっすり眠っておりましたから……」
「この環境下でもぐっすり眠れるとは……」

 劉貴妃の秘められた才能? に鈴蘭は若干驚きを見せ、美華はふふっと微笑ましく笑っていた。

「よし、まだ邪魔者が現れる可能性はある。皆、気を引き締めていこう」

 浩明の声かけに、美華達ははい! と力強い返事をし、気を引き締めたのだった。
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