【改稿版】僕は最強者である事に無自覚のまま、異世界をうろうろする

風の吹くまま気の向くまま

文字の大きさ
130 / 239
第五章 正義の意味

130. 禁忌

しおりを挟む
第044日―6


霊晶石に関しては、その出所が少し気になる所ではあったけれど、結局、結界の解除を優先することになった。
もし本当にあの銀色のドラゴンに会えたなら、その時聞けば良い話だ。

僕は改めて、島を覆う結界に意識を集中した。
魔力を用いた結界が島全体を覆い、さらにその外側を、すっぽりと霊力による結界が包み込んでいるのが“視えた”。
僕は“視えた”状況について、その場の皆に説明した。

「なるほどのう。道理でこの5日間、あれだけやってもびくともせんかったわけじゃ」

そう口にしながら、イクタスさんが得心した様子でうなずいた。
彼の話によれば、結界解除のため、連日連夜、ミーシアさんの精霊魔法も組み込んで、強力な魔力を島を覆う結界に向けてぶつけ続けてきたのだという。
それがさっぱり効を奏さなかったのは、島全体をおおう霊晶石を使用した結界によって、ことごとく無効化され続けていた、という事なのだろう。

イクタスさんが声を掛けてきた。

「カケル、外側の霊晶石による結界、解除出来るか?」
「やってみますね」

僕は改めて光球を顕現した、
そしてそれを、霊力による紫のオーラをまとった杖へと変えた。
僕はその杖を島に向け、霊力を解き放った。
幸い、島を包み込む霊力による結界は、さほど強力な物では無かったらしく、僕の霊力の直撃を受けると、虹のようなきらめきを放ちながら消えて行った。
さらに、その内側の魔力による結界に対しても霊力を放とうとした瞬間……!


―――オオオォォン!


島の方角から凄まじい咆哮が響いてきたかと思うと、魔力による結界が勝手に解除されるのが“視えた”。
同時に、見る見るうちに、島を覆い尽くしていた濃霧が晴れていく。
そしてその霧の切れ目から、巨大な銀色に輝くドラゴンが、島から上空へと飛び立ち、こちらへ向かって来るのが見えた。
皆が空を見上げ、身構える中、銀色のドラゴンが念話で語りかけてきた。

『結界を破りしは、汝らか?』

どうやらこの念話は、この場全員の頭の中に響いたらしく、僕以外の皆も、一斉に顔を見合わせた。
イクタスさんが、僕達を代表する形で、上空を舞う銀色のドラゴンに言葉を返した。

「いかにも、我等が破り申した。神竜殿の眠りを妨げた非礼はお詫び申し上げるが、是非お聞きしたいことがあるのだ!」

銀色のドラゴンが念話を返してきた。

『詫びる必要があろうか。むしろ汝らには感謝しておる。しかし、どうやってあの結界を破ったのじゃ? おぬしら人間どもには、霊力を操れる者はいないはず』
「感謝?」

その場にいる誰かが、不思議そうにつぶやくのが聞こえた。
結界を破って感謝されるのも不思議な話だけど、上空を悠然と旋回する銀色のドラゴンは、少なくとも、眠りを妨げられた、といった不快な感情とは無縁に見えた。

僕は銀色のドラゴンに呼びかけた。

「ドラゴンさん、お久しぶりです。あの400年前の世界でお会いしたカケルです。すみません、僕なんです。外側の霊力による結界破っちゃったの」
『!? おおっ! カケルか。実に久しぶりじゃ。しかもその物言い、400年前に我と出会った後のカケルという事じゃな? なるほど、守護者の力を持つ者なら、あの程度の結界の破壊、容易たやすい事であったな』

僕はおずおずとたずねてみた。

「ところでその……怒ってないんですか?」

銀色のドラゴンが、不思議そうな声音で念話を返してきた。

『何に対してじゃ?』
「結界破っちゃって……」
『我を封じ込めていた霊力による結界を破ってくれたのであろう? 感謝こそすれ、怒る理由は無い』
「封じ込められていた?」

念話を聞く皆が怪訝そうな顔になった。
その皆の疑問に答えるかのように、銀色のドラゴンが説明してくれた。

『数週間前、何者かが400年前同様、いやそれ以上に禁忌に触れんとしているのに気付いてな。この島を出ようとしたのじゃが、いつの間にやら霊力により封じ込められておったのよ』

どうやら霊晶石による結界は、島を守るためではなく、銀色のドラゴンを島から出さないのが目的だったらしい。

イクタスさんが、ポツリとつぶやいた。

「魔王エンリルじゃな」

銀色のドラゴンからの念話が届いた。

『魔王と勇者が、また誕生したのは感じておったが、当代の魔王はエンリルと言う者か』
「さよう。魔王エンリルは、恐らく400年前、神竜殿が勇者ダイス殿に助力して魔王バラスを倒したのを教訓にしておったのじゃろう。加えて、恐らく神竜殿の言う禁忌とやらにも関わっておるので、二重の意味で神竜殿がうとましかったと見える」
『しかし、その魔王エンリルとやらが我を封じたとして、いかにして霊晶石を手に入れたのじゃ? あれは、もはやこの世界には存在せぬはず』
「少し込み入った話なのじゃが……」

イクタスさんは、魔王になる前のエンリル、宝珠の顕現者ディース様らと共に、17年前、『彼方かなたの地』への扉を開き、守護者と出会い、彼女が霊晶石をこの世界にもたらした事を簡単に説明した。

イクタスさんの話を聞き終えた銀色のドラゴンは、明らかに不機嫌になった。

『……イクタスとか申したな。知らなかったとは言え、いらぬ事をしてくれた。それに、守護者も守護者じゃ。ほいほい、霊晶石を配って回るとは……本当に全てを忘れておるのか、無頓着なだけなのか……』

イクタスさんが素直に頭を下げた。

「申し訳ござらん」

銀色のドラゴンが嘆息した。

『過ぎたことは仕方あるまい。それで、先程我に聞きたいことがある、と申しておったが、もしや、禁忌についてか?』
「いかにも。魔王エンリルは、わしらが17年前に行ったのとは異なる手段で、各地の祭壇の封印を解いておった。儀式に霊晶石を介在させておったのじゃ。わしは、これが禁忌に至る道と推測しておるのじゃが……」
『何!? 魔族どもが霊晶石を用いて祭壇の封印を解いただと? 宝珠の顕現者が、魔族に協力したというのか?』
「宝珠の顕現者については、少し複雑な事情がありましてな。ともかく、始原の地を除いて、他の祭壇の封印は解かれております」
『何という事じゃ! 世界が終わるぞ』

銀色のドラゴンの念話は、焦燥感に満ちたものとなっていた。
構わずイクタスさんは、言葉を続けようとした。

「わしらの推測では、禁忌とは、魔神に……」


―――オオオォォン!


しかし、イクタスさんの言葉にかぶせるように、銀色のドラゴンが、再び凄まじい咆哮を放った。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...