【改稿版】僕は最強者である事に無自覚のまま、異世界をうろうろする

風の吹くまま気の向くまま

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第七章 忍び寄る悪夢

212.欺瞞

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第051日―2


救世主の休日~ハーミルとお出かけ編~最終話
『ラブコメを封殺する者達には、呪いの鉄槌を!』で御座います。


――◇―――◇―――◇――


突然の轟音を耳にした僕は、ハーミルを護るように霊力の盾を展開した。
その直後、入り口方向から、僕の“光源”とは明らかに異なる明るい光が差し込んできた。
そして松明たいまつを手にした数人の男達が、洞窟内へと入って来た。
もしかして“救助隊”だろうか?
しかし彼等は、野宿セットの傍に立つ僕とハーミルの姿に気付くと、何故か拍子抜けしたような顔になった。

「あれ~? 生きているぞ?」
「おいおい、話が違うじゃないか」

隣に立つハーミルが、物凄い形相で男達を睨みつけた。

「そりゃね、来るのは分かっていたけど、あなた達、来るタイミングが最悪なんですけど」
「タイミング? 何の話だ?」
「俺達は……そう! 生き埋めになっていたお前達を助けようと……」

しかし男達の言葉が終わる前に、ハーミルが凄まじい殺気と共に、腰の剣を抜き放った。

「今の私は、史上最高レベルに機嫌が悪いの。嘘ばっかりついていると、首から上、斬り飛ばすわよ!?」
「ま、待て! 何をそんなに怒っているんだ!?」
「俺達はまだ何も……」

ハーミルの物凄い剣幕に気圧けおされたらしい男達が後退あとずさった。
見かねた僕は、ハーミルをたしなめた。

「ハーミル、助けに来てくれた人達に、こんな態度を取ったら……」

しかしハーミルは僕の方を見向きもせず、男達に予想外の言葉を投げかけた。

「残念ながら、あなた達の“使い魔”は全部、奥で死んでいるわよ?」

使い魔?
何の話だ?

首を捻ったけれど、ハーミルの言葉を聞いた男達の間には、ざわめきが起こった。

「ま、まさか……」
「だけどこいつらが生きているって事は……」

動揺する男達に、ハーミルが追い打ちのような言葉を投げ掛けた。

「調べてきたら? 傷一つなく、死んでいるから」

男達の一人が、奥へと走っていった。
暫くすると、男が悲鳴のような叫び声を上げながら、走って戻って来た。

「そいつの言う通りだ! 皆死んでいる。しかも傷一つ無いまま」

動揺が大きくなる男達に、ハーミルが冷ややかな視線を投げかけた。

「私達ね、危害を加えようとしてくる相手を呪い殺せるの」
「「ええっ!?」」

何それ、怖い。

男達と一緒に、思わず僕も素っ頓狂な声を上げてしまった。
ハーミルがそのまま言葉を続けた。

「たとえばソロとか二人連れとかの冒険者を騙してここへ閉じ込めて、使い魔達がその冒険者を殺した頃見計らって入り口開いて入ってきて、死体漁りしようとか……そんな事考えている不埒ふらちな連中にも、呪いをかける事が出来るの」
「お、俺達はそんな事……」
「呪いがかかったが最後、どうあっても死の運命は逃れられないわ。そして呪われた者は、ある日唐突に死ぬの。奥の使い魔達みたいにね」
「ひっ!」

男達の中には、腰を抜かしてガタガタ震えだす者まで現れた。
ハーミルが残酷そうな笑みを浮かべて、彼等に問いかけた。

「まさかあなた達は、私達に危害を加えようとか……思ってないわよね?」
「危害なんてそんな……」
「た、助けてくれ! 俺はこいつに騙されていたんだ」
「何言ってんだ。お前だろ? 言い出しっぺは!」

状況がようやく飲み込めた僕が生暖かく見守る中、男達が少々お粗末な感じの内輪もめを始めた。
少しの間、その様子を観察する素振りを見せた後、ハーミルが冷ややかに宣言した。

「あなた達、今日中に自首しなさい。そうしないと解けない呪いをかけたわ。それとも、ここで私と死合いして、自分の運試ししてみる?」

彼等は皆、自首する方を選んだ。

「期限は今日の日没。それまでに、アルザスの衛兵詰め所に自首しなさい。そうすれば呪いを解いてあげるわ」



野宿セットを片付けて洞窟から出た所で、ハーミルが僕に笑顔を向けてきた。

「まあ、あれだけ脅しときゃ、自首するかどうかはともかく、当分悪さはしないでしょ」

僕は一応、聞いてみた。

「いつ気が付いたの?」
「最初からよ」
「えっ?」

驚く僕を見て、ハーミルが少々呆れ顔になった。

「考えてもみなさい。あんな小さな女の子一人で、冒険者様~とか三文芝居、引っ掛かる方がどうかと思うけど」
「でもでも、冒険者ギルドに依頼するには、相応のお金が必要だって……」
「あ・の・ね。そんなお人好しでどうするの? 小さい子使って、相手の善意に付け込もうって手口、もう陳腐過ぎて笑っちゃうレベルよ?」

つまり、善意が逆手に取られてしまった?
いやでも、だからと言って、あの状況でそんな風に裏を読んだり……普通は出来ないよね?
ってあれ?
もしかして、ちゃんとそういう裏を読んでいたから、冒険者の皆さん、レミアの話に耳を貸そうとしなかった?

そんな事を考えていると、ハーミルが悪戯っぽい顔になった。

「まあ、私も楽しめたから、結果オーライって事で」
「そ、そう?」
「それに私、そんなお人好しな所も含めてカケルの事が好きなわけだし」
「えっ?」

思わずハーミルの顔を見返してしまった。
僕の視線に気付いた彼女は、何故か耳まで真っ赤にしてあたふたし始めた。

「あ、その、お人好しなのもカケルの魅力って意味で……あ、違う! そうじゃなくて、友達として! そうそう、カケルって友達として好きって事で……」
「う、うん」

しかしハーミルは、何故かそのまま頭を抱えてうずくまってしまった

「ああ……私ってバカ? バカなの? わざわざ言い直す必要、ある? なんなの一体!?」
「え~と……大丈夫?」

ハーミルはなおもひとしきり、なにやらぶつぶつつぶやいた後、ようやく立ち上がった。

「大丈夫! 勝負はまだ終わってないわ!」
「何の勝負?」
「気にしないで。さ、帝都に戻りましょ」



自宅に戻り、準備を済ませたハーミルを、僕とメイは転移の魔方陣まで見送ることにした。
道々、ハーミルが僕達に声を掛けてきた。

「カケル、メイ、私がいないからって、ハメ外しちゃダメよ?」
「ハメ外すって定義がよく分らないけど、規則正しい生活、心掛けるようにするよ」

ハーミルは少しの間、僕の顔をまじまじと眺めた後、メイにささやいた。

「ちょっと位カケルに甘えるのは、大目に見るけどさ。ちゃんと節度を守るように」
「心配しないで。私達は、節度を守ってお付き合いしているから」
「お付き合いって、メイ! あなたねぇ」
「あら? 友達付き合いの話じゃ無かったの?」

メイは恐らくハーミルをからかっているのだろう。
それに気付いたらしいハーミルの機嫌が悪くなった。

初日第203話、せっかく大目に見てあげたのに。今度から、夜、カケルの部屋に忍び込んだら、すぐに連れ戻しに行くわよ?」
「……気付いていたの?」
「ふっふん。気付いてなかったとでも思ったの?」
「なんで初日、何も言わなかったの?」
「それは、メイが寂しがっていたの、知っていたし。それにカケルの事だから、メイに何もしないに決まっていたし」

今度は、メイの機嫌が悪くなった。

「ハーミルだって、どうせ昨晩、カケルと何も無かったくせに」
「そういう事、言うかな?」

二人でごしょごしょ何かを話していると思ったら、急に険悪なムードになってしまった。
さらに何かをごしょごしょ言い合う二人に、僕は声を掛けてみた。

「ほら、二人とも。もうすぐ転移の魔法陣だよ」



ハーミルを見送った後、僕はメイと二人で、もう一度、あの腕輪を作ってくれた古民家風の建物へ向かってみることにした。

十数分程で辿たどり着いたその建物のたたずまいは、一昨日と変わり無さそうに見えた。
僕は建物の扉に手を掛けてみた。
しかし扉は、固く閉ざされている。
そのまま霊力を展開して、内部の様子を探ってみた。
内部は何の変哲も無い廃屋であった。
ほこりが積もり、ここ数日以内に誰かが侵入した形跡も感じられない。
閉店して店主が故郷に帰った、というミーシアさんの言葉に、いつわりは無さそうであった。
僕はメイの方に顔を向けた。

「やっぱり、閉店しちゃっているみたいだ。中も、ただの廃屋って感じだし」
「でも確かに、ハーミルはこの中に入って行ったんだけど……」

そう口にしながら、メイも古民家の扉に手を掛けた。
どうやら、内部を魔力で探っている様子であった。
やがてメイが首を傾げながら、手を離した。

「カケルの言う通り、この中はただの廃屋みたい」
「もしかして、ハーミル、近くの似た感じの古民家に入って行ったんじゃないの?」
「そんなはずは……」

釈然としない想いを残したまま、僕達はその場を立ち去る事にした。

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