神様になったTS妖狐はのんびり生活したい~もふもふ妖狐になった新人神様は美少女となって便利な生活のため異世界と日本を往復する~

じゃくまる

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第34話 白狼と影

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 朝食も終え、準備を整えたので早速村へと出発したが、その時ボクは、突如不思議な感覚に襲われた。
 何やらいつもより体が軽いのだ。

「んん? なんか変な感覚」
 ボクがそう呟くと、近くにいたミレが小首をかしげたのが見えた。
「ううん。なんでもない」
 そうは言うものの、周囲の空気? から何かが流れ込んでくるのを感じるうえに、ボクの丹田の部分がほんのり暖かくなっているのが感じられた。
 一体これはどうしたことだろう。

 そんなことを考えつつも結界を抜けたので、周囲を警戒しつつ村へと歩いていく。
 道中、イノシシや狼、ゴブリンなどを倒していくが、ふと妙な気配があることに気づいた。
 
(何の気配? というか、ボクはいつのまにこんなに気配を探れるようになったんだろう)
 何の苦労もなく、何かがいる! ということがわかってしまった。
 まだまだ気配を探るのは苦手なはずなのにだ。

「ミレ、ミカ、ミナ。気を付けて。何かがいる」
 ボクの言葉を聞いて三人が頷く。

「ミリアムさんたちはロッジに置いてきてよかったかな」
 今回のおでかけに際し、ロッジにはミリアムさんと千早さん、それと守備にフェアリーノームを何人か残してきている。
 
 警戒しながら森を進む。すると、近くの茂みから何かがばっと飛び出してきた。

「!?」
 なんとなくいることはわかっていたが、飛び出してくるとやっぱり驚く。
 襲撃に呼応してミレたちは一気にボクの周囲に集まり、三角の形で取り囲んだ。円陣ならぬ三角陣といったところだ。

 何かが近くにいることはわかっているが、素早すぎて未だにその姿を捉えられない。
 感覚からして四足歩行のなにか。例えば狼のようなものだと思う。

「ミレ、正面」
 一気に気配が迫るのを感じた。
 対象はミレ。なので注意を促す。
 するとすぐにガンという音と共に何かが宙を舞う。
 白い狼だ。

「白狼?」
 このあたりにいると狼といえば、黒い狼か茶色い狼、それか灰色の狼くらいだ。
 少なくとも白い狼は見ていない。

「ミカ、注意して」
 宙を舞った狼はいつのまにかミカの側に向かったようだ。

 相手は一匹なのかな? 狼って普通は複数で狩りをするんじゃないの?
 疑問は色々あるけど、今襲ってきている狼は白狼一匹だし、感覚を信じるなら周辺にはほかの反応はない。

「ミカ、来るよ! え!? ミナ、魔法みたいなのが来る、注意」
 誰もいないはずなのにミナの方向から魔法の気配を感じた。
 それは白狼が飛び出すと同時にボクたちに向かって放たれた。

 放たれた魔法は大きな火球だった。
 ミナはそれを防壁を張って難なく防ぐ。
 同時にミカへと迫っていた白狼は踵を返すようにして草むらへと戻っていった。
 相変わらず魔法が飛んできた方向に敵影や気配はない。

「ん~……。まさか?」
 突如ミレの方向から魔法の気配を感じる。
 その気配をじっくりよく見てみると、魔法の発生源と思われる場所から薄い糸のような繋がりがミカの前方の草むらへと伸びているのが見えた。

「あの白狼が遠隔で魔法を使っているっていうの? でも防がれたとわかると白狼はすぐ逃げる。どうすれば……」
 あの白狼はやり手なのだろう。
 おそらく、魔法が防がれても注意が逸れれば襲ってくるはずだ。
 今のボクたちの状態は、魔法が飛んできても誰も崩れないし注意も逸れない。
 だから白狼は襲撃をやめて機会を窺っているのだろう。

『影を使って繋ぎ留めればよかろう』
「だ、だれ!?」
 突然誰かの声が聞こえてきた。
 若い女性の声。でも口調は少し古めかしい感じがする。

『魔法が飛んできた瞬間、奴は飛び出してくる。そして防がれれば奴は逃げる。その瞬間、踵を返す瞬間は無防備じゃ。影を使って足を捕まえればよい。どれ、わしが手伝ってやろう』
 何かの声が聞こえると同時に、ボクの体が勝手に動きだす。

 ミレの方向から魔法が放たれ、今度はミナの方向から白狼が飛び出した。
 ミレが難なく魔法をかき消すと、白狼はやはり踵を返してまた茂みへと戻ろうとする。

『見よ。そして覚えよ』
 そう声が聞こえると、ボクの手はゆっくりあげられる。
 すると、踵を返していた白狼の影がゆっくりと伸び、ボクの手が握る形をすると白狼の影は白狼の後ろ足を握りその場に繋ぎ留めた。

 瞬間、ボクの意識は戻り、体の自由が利くようになった。
「ミレ、ミカ、ミナ。今!」
 三人は地面に落ちた白狼を動けないように手足を切り付け、首元を切り付けて絶命させた。

「はぁ。よかった。でも、今のは何だったんだろう」
 ミレたちは周囲の警戒をしているので、ボクは白狼に近づくことにした。

「血……。血!?」
 不思議なことに白狼から流れ出る液体は赤い血ではなく金色の液体だった。
 血のような臭いがしないそれは、いったい何なのだろう。

「とりあえず収納して、あとで血抜きというか液体抜きをしよう」
 すでに事切れた不思議な白狼の体をボクは空間収納に収めた。

「ミレ、ミカ、ミナ。お疲れ様。ちょっとよくわからないことが多いけど、先に進もうか」
 ミレたちはコクンと頷くと再び歩き出した。
 ボクも一緒にくっついて歩いていく。
 気が付けば、周囲の不思議な空気はきれいさっぱりになくなっていた。

(さっきの声はなんだったんだろう。影を操る? どういうこと?)
 よくわからないので、またできるか試してみたくなった。

「みんな、少しだけ待ってね。ちょっと試したいことがあるんだ」
 ボクの声掛けでミレたちが止まったので、近くの木に試してみることにした。

「貫け」
 言葉にして腕を上げる。
 すると、影が一気に盛り上がり、木に突き刺さってしまった。

「断ち切れ」
 腕を横に振り影に命令すると、木に刺さった影の槍は刃となって木を切断した。

 パチパチパチパチ

 何やらミレたちが驚いた顔をしながら拍手をしてくれていた。

「あ、ありがとう」
 なんだか急に照れ臭くなったけど、新しい力を手に入れられたので少し嬉しかった。

「でもやっぱり、あの声は気になるなぁ」
 新しい力を得ることになった直接の要因。
 あの優しくも威厳のありそうな女性の声は、今は聞こえなかった。
 
「影を操るかぁ。影だけなのかな? ほかにもありそうだけど。そういえば影って黒いよね。黒といえば闇や混沌ってイメージもあるし。影を操る妖狐で【混沌の狐】なんちゃって」
 冗談めかしてそんなことを言ってみると、胸のあたりが軽く疼いた気がした。
 なんだろう?

 結局疑問は解消しないまま、ボクたちはアルテ村へと向かった。
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