神様になったTS妖狐はのんびり生活したい~もふもふ妖狐になった新人神様は美少女となって便利な生活のため異世界と日本を往復する~

じゃくまる

文字の大きさ
110 / 180

第110話 妖都の生活

しおりを挟む
 諸問題はさておき、ボクは馬車から見える妖都の街並みを眺めることにした。
 馬車は現在石畳の道を進んでいる。
 両サイドには電気街灯と商店などが立ち並び、人が往来していた。
 馬車は車道を通っているのだが、ここには人力車も通っている。
 教科書で見る昔の日本のような雰囲気を感じる不思議な場所だった。
 
「遥さんは普段は妖都にはいないのですか?」
 窓に張り付いて外を眺めていたボクに、通伸さんが声をかけてくる。

「はい。いつもは別のところにいます。こちらに来ても街を眺めることはありませんでしたし」
 ボクには妖都以外にどんな都市があるかわからない。
 でもいつかは見て回れたらなとは思う。

「ほう。いつもはどちらに?」
 興味を引かれたのか、通伸さんがさらに尋ねてきた。

「そうですね。新規の開拓地といったところでしょうか。少しずつ建設作業が始まったのですが、最近は人が増えてきて物流も始まった感じで楽しくなってきたところです」
 まだまだ新しい世界だけど成長していってます。
 まぁほとんどおんぶにだっこ状態なのですが……。

「新規開拓地ということですか。武蔵国では聞いたことはありませんね」
 伯爵家でも知らない情報があるようだ。

「そうですね~。まだ大っぴらにはできないので一部の人しか知らないかもしれません」
 もし伯爵家の飛び地が欲しいなら今がチャンスですけどね。

「誰も知らない開拓地、それを知る妖狐族の少女。ふむ……」
 どうやら情報収集をしていたようで、通伸さんは考え込んでしまった。

「考え込んでしまった通伸さんはさておき、当家も一枚嚙ませてくれないかしら」
「通伸おじさんを置いておいていいんですか?」
「構わないわ」
 どうやら心優さんはボクたちの世界に絡んでくるつもりのようだ。
 まぁ構わないんだけど。

「そうですね、諸条件は後程確認してください。それで問題がなければ領地をあげます」
「あら、いいの? ずいぶん太っ腹な決定に思えるのだけど」
 即断したボクに心優さんは驚いた様子だった。

「はい。もともと誰もいない場所ですし、ボクが全責任者なので問題は起きないんです。それに妖種の入植は大歓迎ですから」
 勧誘、というほどでもないが来たいならくればいいと思う。
 なので特に拒否することもないのだ。

「あ、棒手売の人だ。すごい! 初めて見た!!」
 馬車の外には、両端にたらいを吊るした棒を担いでいる人が何やら声を出しながら歩いている姿が見えた。
 少し遠くてわからないが、豆腐とかお揚げっぽい? 一応、上を何かで覆っているので土埃は入っていない様子だ。

「とうふ~とうふ~」
「おぉ、豆腐屋さん!」
 少し窓を開けるとそんな声が聞こえてきたので、ボクのテンションは爆上がりだった。

「お姉さん、何を見てるんですか?」
 ボクの様子が気になったのか、ミユキさんが話しかけてくる。

「豆腐を売っている人がいたんです。斬新です。新鮮です」
 斬新ではないけど、なんとなくそう言いたくなってしまった。
 実際にこういった光景を見られるとは思わなかったからだ。

「お豆腐1丁くださいな」
「あいよ。お姉さん美人だからお揚げ1枚おまけだもってけ!」
「あらありがとう」
 そんな会話が繰り広げられているのだが、その時気が付いてしまった。
 棒手売りの人は男性で、買いに来た人は女性だ。
 棒手売りの人は人間なのに、買いに来た人は妖狐族なのだ。

「人間と妖種が共存している?」
 話には聞いていたが、本当にそうだとは思わなかった。

「そうだね。この国では人間も妖種も関係なく共存しているよ。ただ婚姻関連には少々高いハードルがあってね……」
「ふむむ」
 通伸さんは若干言いにくそうにしているが何となく理解した。
 今ちょうどナンパされている妖種女性がいるのだが、相手が人間の男性だとわかると怪しい微笑みを浮かべるだけ浮かべて相手を袖にしていたのだ。
 どうやら恋愛の主導権は妖種女性にあるようだ。

「平等に見えて恋愛面では不平等なんですね」
「はは。そうかもしれないね。人間が悪いというわけではないのだが、寿命との兼ね合いもあってなかなか……」
 妖種女性としては妖種男性が数少ないから集まっているだけで、男性ならどの種族でもいいというわけではないらしい。
 これは男性間でのいじめの原因になりそうだと思った。

「恋愛関係は難しいですね」
 ボクは思わずそんな感想を口にした。

「人間の議員さんもいますし、爵位持ちさんもいますけど、寿命の兼ね合いで話がころころ変わったりするそうで、なかなか折り合いがつかないそうなのです」
 不意にミユキさんからそんな言葉が聞こえてきた。

「ミユキさん、博識ですね」
「勉強中なのです」
「えらいえらい」
「んふ~」
 頭を撫でてあげると、嬉しそうに頭をぐりぐり擦り付け始めるミユキさん。
 子供らしくてかわいらしい反応だ。

「あ、鍛冶屋さん」
「あれは店頭で実演している包丁鍛冶だね。仕事ぶりを見せて買ってもらおうという寸法なんだよ」
 通伸さんの言葉を聞いてよく見てみる。
 すると、鍛冶師の周辺には円状の何かが描かれており、そこより外に人が集まっている様子だった。
 叩いている時も歓声が聞こえるが、水に入れた瞬間の歓声もすごかった。
 一種のエンターテインメントとして確立しているようだった。

「参考になります」
 妖都に来て、のんびり街並みを眺めていてよかったかもしれない。
 ボクはそう思った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...