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第173話 ミレイさんのひめごと
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世界を超えた協力というのはまぁ簡単ではないと思う。
何より世界にはそれぞれ人種が住んでいて、それぞれの利権を守りながら生きているからだ。
世界管理者が融通したり協力しあったりしてもそれは上の方の話なだけで、下の方には一切情報がいかない、もしくはある日突然世界が少し変わっていることに気づかされてしまうだろう。
そうなると生まれるのは、争いしかないと思うのだ。
つまり、根回しが必要なわけで……。
椅子にソファーに座ってクッションを積み上げ座高を高くする。
考え事をする際はちょっと視線の高さが変わる方が気分が変わってちょうどいいのだ
「遥様? 何をお考えで?」
悩んでいるボクの隣にミレイさんがやってきた。
旧世界側の大きな宗教勢力の聖女であり、そのトップの孫娘でもある。
そう考えれば大神殿を通すことで旧世界では一定の理解を得られるかもしれない。
特に魔法などの不思議な力もあるので異世界というのも受け入れやすいだろう。
逆に地球側はどうだろう? もっと大きなトラブルになるかもしれないと思う。
妖都側はそもそも合流してしまうわけだし、こちらも問題はない。
となると、問題は地球だけ? まぁ今考えても仕方ないか……。
「う~ん。世界がですね、いい意味で繋がりそうというか協力し合えるような環境がこの世界を介して生まれそうなんです。でも、理解を得るのは難しいなと……」
「なるほど? お悩みはみんなが共に理解しあえるか、手を取り合えるかということでしょうか?」
「はい」
ミレイさんは優しく微笑みながらボクの隣に座る。
そしてそのままボクの頭を軽く撫でたのだ。
「正直に言えば、神を信じていても信じていなくても人々は容易に理解しようとはしないでしょう。神の言葉として私たちが伝えたとしても信者はまだしも、各国の王族はそれを良しとはしないでしょう。あわよくば異界へと侵攻し、手に入れられるものは手に入れ、領土すらも得ようとするでしょう」
「どこもそれは変わらないという事ですか……」
「はい。人の性はそうそう変わることはないと思います。私も今はこうして遥様の眷属になり、今までの姿と新しい姿の両方を手に入れたことで新しい世界を垣間見ることが出来ました。その上で見えてきたものもあります。人は、それくらい変わらなければその性質を変えることがないと思います」
ボクの横に座り、そんな話をしながらそっと寄りかかるようにボクに体重をかけてくるミレイさん。
ボクの方が小さいせいか若干体勢に無理がある気もするけど、まぁいいか。
ボク自身もそうだったけど、人間だった時と妖種となった時、それぞれ見えてくるものに違いはあった。
人間では知らなかった世界を妖種になって初めて知ることができた。
知らなければ理解しようとはしなかっただろうし、近づいたからこそ分かる触れてはいけないものも理解する事が出来た。
ボクはその狭間にいる。
おそらくミレイさんもだ。
「ミレイさんは世界についてどう思いますか?」
抽象的な質問だと思う。
でも表現の仕方は変わるかもしれない。
「今までは広く大きいものだと思いました。ですが、今では小さく狭い。でも見えなかった大いなる何かがこの世界を管理していることを知りました。神の存在は理解していましたが、それ以上の何かを感じています」
ミレイさんは遠くを見つめている。
ボクはそんなミレイさんを見つめながら、聞いてみた。
「大いなる何か、ですか?」
「はい。神という存在は信託を受けることで認識する事が出来ました。言い換えるなら、それは神を名乗る何者かであるとも言えます。しかし、遥様と世界を作ることになって本格的に認識・知覚する事が出来ました。これが大いなる何かです」
「なるほど」
ミレイさんが感じたもの、それはボクたちと関わらなければ得られなかったものなのだろう。
「領土が欲しいなら世界を作ればいい。人が欲しいなら人を作ればいい。文化が欲しいなら文化を作ればいい。ただそれだけだったのです。奪う必要などどこにもなかった」
「それは出来る人の理論だと思います。ボクたちはこうなった。だからそれが出来た。でも、彼らにはそれが出来ません。だから少ないものを奪うために争い合うんです」
ボクはミレイさんはもう人間には戻れないかもしれないと感じた。
もう小さな殻の中で争い合う事なんてできないだろうとも。
「遥様」
「はい?」
不意にミレイさんに名前を呼ばれたので顔を向ける。
「少しだけ。はしたないなんて思わないでくださいね」
「えっ?」
ボクがきょとんとしているとミレイさんの顔が迫り、ボクの唇に軽く口づけしていった。
ほんの一瞬のことだった。
「なん、で?」
「意外に思いますか? 他の方には話したりしていませんでしたから知らなかったかもしれません。それでも、リディは知っているんですよ?」
ミレイさんは軽く頬を染め、そんなことを言い出す。
ボク自身に何かを思っている人は、お婆様のほかには酒呑童子さんくらいだと思っていた。
まぁミレたちはよくわからないし、ミリアムさんはお姉さん的な立ち位置にいるからよくわからないけど……。
なのに、まさかミレイさんからこんなことをされるとは思ってもいなかった。
「親愛なのか敬愛なのかはわかりません。でも、こうすることが正しいようにも感じました。きっと、眷属になると決めたあの時にはすでに……」
ボクは周りの人とボクの関係を理解していないのかもしれない。
もしくは、知らなくてもいいやなんてどこかで思っていたのかも。
「遥様は誰の物でもなくてもいいんです。私は、こうして気持ちを伝えるくらいしかできませんけど。ただ、遥様とは今後も共にありたいと思っています。だからというわけじゃないですけど、知らなかった世界を教えた責任、もう小さな世界では生きられなくしてしまった責任は取ってくださいね?」
そう話すミレイさんはとてもきれいな笑顔をしていた。
何より世界にはそれぞれ人種が住んでいて、それぞれの利権を守りながら生きているからだ。
世界管理者が融通したり協力しあったりしてもそれは上の方の話なだけで、下の方には一切情報がいかない、もしくはある日突然世界が少し変わっていることに気づかされてしまうだろう。
そうなると生まれるのは、争いしかないと思うのだ。
つまり、根回しが必要なわけで……。
椅子にソファーに座ってクッションを積み上げ座高を高くする。
考え事をする際はちょっと視線の高さが変わる方が気分が変わってちょうどいいのだ
「遥様? 何をお考えで?」
悩んでいるボクの隣にミレイさんがやってきた。
旧世界側の大きな宗教勢力の聖女であり、そのトップの孫娘でもある。
そう考えれば大神殿を通すことで旧世界では一定の理解を得られるかもしれない。
特に魔法などの不思議な力もあるので異世界というのも受け入れやすいだろう。
逆に地球側はどうだろう? もっと大きなトラブルになるかもしれないと思う。
妖都側はそもそも合流してしまうわけだし、こちらも問題はない。
となると、問題は地球だけ? まぁ今考えても仕方ないか……。
「う~ん。世界がですね、いい意味で繋がりそうというか協力し合えるような環境がこの世界を介して生まれそうなんです。でも、理解を得るのは難しいなと……」
「なるほど? お悩みはみんなが共に理解しあえるか、手を取り合えるかということでしょうか?」
「はい」
ミレイさんは優しく微笑みながらボクの隣に座る。
そしてそのままボクの頭を軽く撫でたのだ。
「正直に言えば、神を信じていても信じていなくても人々は容易に理解しようとはしないでしょう。神の言葉として私たちが伝えたとしても信者はまだしも、各国の王族はそれを良しとはしないでしょう。あわよくば異界へと侵攻し、手に入れられるものは手に入れ、領土すらも得ようとするでしょう」
「どこもそれは変わらないという事ですか……」
「はい。人の性はそうそう変わることはないと思います。私も今はこうして遥様の眷属になり、今までの姿と新しい姿の両方を手に入れたことで新しい世界を垣間見ることが出来ました。その上で見えてきたものもあります。人は、それくらい変わらなければその性質を変えることがないと思います」
ボクの横に座り、そんな話をしながらそっと寄りかかるようにボクに体重をかけてくるミレイさん。
ボクの方が小さいせいか若干体勢に無理がある気もするけど、まぁいいか。
ボク自身もそうだったけど、人間だった時と妖種となった時、それぞれ見えてくるものに違いはあった。
人間では知らなかった世界を妖種になって初めて知ることができた。
知らなければ理解しようとはしなかっただろうし、近づいたからこそ分かる触れてはいけないものも理解する事が出来た。
ボクはその狭間にいる。
おそらくミレイさんもだ。
「ミレイさんは世界についてどう思いますか?」
抽象的な質問だと思う。
でも表現の仕方は変わるかもしれない。
「今までは広く大きいものだと思いました。ですが、今では小さく狭い。でも見えなかった大いなる何かがこの世界を管理していることを知りました。神の存在は理解していましたが、それ以上の何かを感じています」
ミレイさんは遠くを見つめている。
ボクはそんなミレイさんを見つめながら、聞いてみた。
「大いなる何か、ですか?」
「はい。神という存在は信託を受けることで認識する事が出来ました。言い換えるなら、それは神を名乗る何者かであるとも言えます。しかし、遥様と世界を作ることになって本格的に認識・知覚する事が出来ました。これが大いなる何かです」
「なるほど」
ミレイさんが感じたもの、それはボクたちと関わらなければ得られなかったものなのだろう。
「領土が欲しいなら世界を作ればいい。人が欲しいなら人を作ればいい。文化が欲しいなら文化を作ればいい。ただそれだけだったのです。奪う必要などどこにもなかった」
「それは出来る人の理論だと思います。ボクたちはこうなった。だからそれが出来た。でも、彼らにはそれが出来ません。だから少ないものを奪うために争い合うんです」
ボクはミレイさんはもう人間には戻れないかもしれないと感じた。
もう小さな殻の中で争い合う事なんてできないだろうとも。
「遥様」
「はい?」
不意にミレイさんに名前を呼ばれたので顔を向ける。
「少しだけ。はしたないなんて思わないでくださいね」
「えっ?」
ボクがきょとんとしているとミレイさんの顔が迫り、ボクの唇に軽く口づけしていった。
ほんの一瞬のことだった。
「なん、で?」
「意外に思いますか? 他の方には話したりしていませんでしたから知らなかったかもしれません。それでも、リディは知っているんですよ?」
ミレイさんは軽く頬を染め、そんなことを言い出す。
ボク自身に何かを思っている人は、お婆様のほかには酒呑童子さんくらいだと思っていた。
まぁミレたちはよくわからないし、ミリアムさんはお姉さん的な立ち位置にいるからよくわからないけど……。
なのに、まさかミレイさんからこんなことをされるとは思ってもいなかった。
「親愛なのか敬愛なのかはわかりません。でも、こうすることが正しいようにも感じました。きっと、眷属になると決めたあの時にはすでに……」
ボクは周りの人とボクの関係を理解していないのかもしれない。
もしくは、知らなくてもいいやなんてどこかで思っていたのかも。
「遥様は誰の物でもなくてもいいんです。私は、こうして気持ちを伝えるくらいしかできませんけど。ただ、遥様とは今後も共にありたいと思っています。だからというわけじゃないですけど、知らなかった世界を教えた責任、もう小さな世界では生きられなくしてしまった責任は取ってくださいね?」
そう話すミレイさんはとてもきれいな笑顔をしていた。
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