雑魚兎が貴族に飼われてもいいじゃない!?

べべ

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第1章:兎、把握しました

第1章ー3

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 アッセンバッハ家の屋敷は、この自然溢るる広場からさほど離れてない所にある。
 町の喧騒からそこそこ離れ、かつ遠すぎない。自然を味わいながらも、領主としての仕事に支障が出ない範囲が計算された立地といえよう。

 ここに屋敷を建てようと思った先々代さんのお墓にゃあ、足向けて眠れねぇくらいの高立地だ。森も近いが故に、俺がここに厄介になれたんだしな。

 外装も、淡い茶を基調にしつつ派手さの無い、しかし最低限の外装には気をつかった落ち着いた雰囲気だ。お偉いさんが万が一にもここに来た場合にも、失礼のない範囲でお通しできるようにって配慮が伺えるな。

「坊ちゃま、おかえりなさいませ」

「おかえりなさいませ」

 そんな屋敷の正門を、テルム坊っちゃんがくぐると同時に、仕事に励んでいた数人の使用人が声をかけつつ一礼する。こういう光景を見ていると、「あぁ、この子貴族様なんだなぁ」と再認識するな。

 俺がそんなふうに考えてると、その内の一人……白髪混じりでメガネをかけた知的な雰囲気のおっちゃんに、テルム坊っちゃんは笑いかけた。

「ただいま、コンステッド。食事には間に合ったかな?」

「は、まだその時間には至ってございません。しかし、既にゴウン様とネア様はお席についておられるご様子で。テルム坊っちゃまにおかれましては、少々急いだほうがよろしいかと……」

「んっ、わかった! ありがとうねっ」

 執事服に身を包んだおっちゃん、コンステッド氏に礼をつげ、テルム坊っちゃんは足を進める。そんな中でも、メイド達に手を振ることは忘れない。
 えぇ子やなぁ。もう4年くらいしてそれやられると、コッテリ行きそうな女の子は多そうだ。

「まずいよカクっ、お父様とお母様、もういるんだって!」

『あ~れま。まぁ、少しくらいのお小言は覚悟しとかにゃならんかもだなぁ』

「も~っ、カクがゆっくりで良いって言うからじゃないかぁっ」

『ごもっともで。後で埋め合わせはしやすから、今は急ぐんですなぁ』

 急ぎつつも、息は乱さない。さっき言ってた家訓を忠実に守るテルム坊っちゃんの視線の先には、食堂のドアが確認できた。
 ドアの前に来て、ゆっくり深呼吸し、少し呼吸を整える。

「失礼します、少々遅くなってしまいましたぁ」

 その一言と共に、坊っちゃんはドアを開けて中を覗き込んだ。
 流石に食事を囲む場なだけあって、その広さは日本の家のリビングなんぞ目じゃない広さを誇っている。

 落ち着いた色合いの壁、天井の高さを際立たせるための濃いカーペット。数こそ少ないが、俺には値段なんぞ皆目検討もつかん調度品なんかも飾ってある。
 もしこの空間にシャンデリアなんぞ吊ってあった日には、お城の一室だと勘違いできるんじゃないだろうか? いや、見たことねぇけどさ。

「おぉ、テルム。なんとか間に合ったみたいだね。コック長と打ち合わせでもしていたのかな?」

「ふふ、嫌ですよアナタ」

 そんな空間でテルム坊っちゃんを待っているのは、坊っちゃんのご両親であるお二人さんだ。

「む~、お兄ちゃんもデブ兎も遅いよ~っ」

 ……もう1人、なんだかこまっしゃくれたピーピー声が聞こえるな。この生意気極まりないチビっ子め!
 俺がフーッ! と息を荒げると、そいつも「イーッ!」と歯をむき出しにしてくる。なんつう凶暴な奴だ。

「ははは、少々外に出ていたものでして」

「うむ、体を動かすのは良いことだな。食事がより美味くなる」

 身なりを整え、椅子に座る坊っちゃんの前に座っているのは、坊っちゃんの父親にしてこの土地の領主様でもある男、『ゴウン・フォン・アッセンバッハ』。温厚そうな雰囲気で、口ヒゲがどこかユーモラスな雰囲気を醸し出している、とっつきやすそうなおっさんだ。

 坊っちゃんと同じ銀色の髪。やや丸めの鼻、人懐っこそうな目。恰幅の良さも相まって、総評して『なんか可愛いおっさん』という意見が出てきそうな御仁と言える。
 俺としても、このおっさんの側は落ち着く雰囲気があって結構心を許している。……いや、けっして体の一部に共感を抱いている訳ではないんだぞ? けっして、おっさんの近くには常につまめる物があるからとかでもないんだぞ?

「む~、けど、外で遊んでて遅くなった~なんて、言い訳にならないと思うのよ。お兄ちゃん?」

「そうねぇ、少し余裕を持って行動するべきね、テルム? あとテレサ、お兄様でしょう?」

「ぅ……はぁい、お母様」

「すみません、お父様、お母様」

 ゴウンのおっさんの隣に座っているのは、もちのろんろん坊っちゃんのお母ちゃん。名前を、『ネアヒリム・フォン・アッセンバッハ』。
 こちらはおっさんとは対極的な、金色の髪をまとめて後ろでお団子にしている御婦人だ。切れ長の瞳に、スラリと伸びた鼻筋。グロスなんぞ必要ないと言わんばかりに艷やかな唇は、男共の妄想を駆り立ててやまないのは目に見ている。

 おっさんとは同い年らしいが、その見た目はかなり若々しく、美しい。……いや、というか、おっさんが老けてるだけなのか? この二人、たしか俺の生前とさほど変わんなかったような気がするし。
 
 んで、さっきからぶーたれてるこのチビっ子が『テレサレイン・フォン・アッセンバッハ』。
 生意気盛りな言動は目立つが、この子もまた素材は一級と言っていい。お母ちゃんによく似た雰囲気の瞳に、丸みを帯びて健康的な幼子特有の輪郭。髪の色や質も母親譲りらしく、なんだかミニチュア版のお母ちゃんを見てる気分になってくる。

 元気が服着て歩いてるってのがよく分かる雰囲気の、まぁ、通りかかった男子が二度見しそうな勢いの美少女ってのは確かだろう。

「……何よ、デブ兎っ」

「っ、フーッ!」

 まぁ、ご覧の通りでかーなーりー生意気ですがねぇ!!
 おめぇ、それ実の父ちゃんに向かって言えんのか!? 脂肪ってのはつくもんじゃねぇ、ついちまうもんなんだよ! 不可抗力なんだよぉ!!
 
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