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第1章:兎、把握しました
第1章ー4
しおりを挟む「ふむ、確かにそうだなぁ。我がアッセンバッハ家の者は、常に余裕を持って行動すべしと祖父の代から教わっている。規律だって行動しなければいけない訳ではないが、こうして家族で語り合う場くらいには慌てる事のないようにしないとねぇ?」
「ぅ……はい、わかりました。お父様」
おっさんの言葉からは、優しくも威厳を感じさせる雰囲気が滲み出ている。貴族としての心構えかどうかは知らんが、守るべきは守れよ? って一線を教えられてる感じだな。
あれだ、学校の先生に近い。
「テレサも、はしたない行動は慎みなさい? 食事の場において礼節を欠いてはいけませんよ?」
「うぐっ! ……はぁい、お母様」
チビっ子もまた、母ちゃんに指摘されて肩を縮めている。いい気味だとも思うが……母ちゃんが、喧嘩相手である俺の事を指摘しないの、なぁんか引っかかるんだよなぁ。
あえて無視されてるっていうか……こう、いないものとして扱われてるっつうか……。これだったら、今も俺をジト目で睨んできてるチビっ子を相手してる方が気ぃ楽だわ。
「ははは。さぁ、注意はここまでで良いだろう? それより私はお腹が空いてしまったよ。ご飯はまだかなぁ?」
おっさんは、チラリと母ちゃんを見てからやや声を大きくして腹をさする。空気が悪くなりそうなのを悟ったんだろう。
「そうですね。僕もお腹ペコペコですよぉ」
テルム坊っちゃんも乗っかり、食卓にふんわりとした温かみが戻る。
出来るおっさんに助けられ、俺もようやく一息つけた。貴族ってのは、時々なんでか家族間でも変な空気になるもんだなぁ。
と、そんな事を考えながら床に降り、待っていると……
「たぁいへん長らくお待たせいたしまっしたぁ! いやぁ流石はノーズデンの名産である岩塩! 私、あまりの風味と香りについつい削り出しを長引かせてしまいましたよハッハッハッハ!!」
そんな声と共にドアが開き、料理と共に男が入ってきた。
まぁ、わかりやすく料理長だな。優男って雰囲気の見た目だが、目利きと料理の腕は確かな奴だ。
だが、どうにもこいつの料理は長ぇのがいただけねぇ! 岩塩を延々と削ってたって自白してる時点でなんかもうダメだろう!?
「やぁ、ようやく一心地つけそうだ。待っていたよ料理長」
「ん~! お館様におかれましては、本日も私めの作品を心待ちにして頂けたご様子で! 大変恐縮感激雨あられに存じます! ささ、どうぞどうぞ。此度の作品も大変美味しく仕上がっていると自負いたしますれば!」
料理長が口だけ動かしてる間にも、給仕の姉ちゃんが3人分くらいの動きで坊っちゃん達に料理を配っていく。
この姉ちゃんがいて初めて、俺たちが食事まで漕ぎ付けられているのは想像に難くない。というか、料理長は手伝う気がねぇんならここまで来る必要なくない!?
「さぁ、それじゃあ皆食べようじゃないか。恵みに感謝しながらね」
おっさんが軽く祈りを捧げ、ご家族もそれにならう。
そんな光景を見守る俺に対し、給仕の姉ちゃんはソッと野菜が入った皿を置いてくれるのであった。
◆ ◆ ◆
「ところで、テルム? 少しお話をいいかしら?」
今日のメニューに舌鼓を打ち、朗らかに会話を楽しんでいた一同。
チビっ子なんかは、マナーに気を遣いながらも夢中で肉にかぶり付いていたなぁ。あれを見てると流石の俺も、肉を食いたくなるってもんだわ。
まぁ、ここの野菜も相当にいい品質だから文句はないけどな! ウマーっ!
と、そんな時に、お母ちゃんがテルム坊っちゃんに改まった話を切り出してきた。
「ん、なんでしょうお母様?」
坊っちゃんはナプキンで口元を軽く拭い、返事を返す。なんとも、一枚絵にしてもいいくらいの肖像だなぁ。
もひもひと野菜を食べながらそんな事を考えている俺の横で、お母ちゃんが口を開く。
「貴方の『契約獣』についてです。再三言っているけれど、本当にこのままホーンラビットを連れ回すつもりなのかしら?」
ぶっほぅ!?
やべ、咽せちまったじゃねぇか! ていうかやっぱ俺のことかい!?
お母ちゃん、ここ3ヶ月俺のこと無視しまくってるからなぁ……やはりと言うかなんというか、全然認めていただいてないご様子ですよ?
「もうっ、汚いなぁ、デブ兎! 床汚れちゃってるじゃないっ」
「フシッ、フシッ!」
しゃあないじゃんかよ! いわゆるリストラ会議に参加してる当人が名前を指摘されたみたいな感じだぞ!?
とはいえ、床は前足で拭かせていただきますともっ、えぇっ。
「貴方が10歳になり、契約獣を選べるようになってからしばらく立ちました。魔力も問題なく増えているのでしょう? であるならば、何も下級の魔物であるホーンラビットといつまでも契約しておく必要はないのではなくて?」
「ん~……」
あ~、まぁ、そうだよなぁ。
お母ちゃんが言ってる『契約』についてだが、これはこの世界における格を表す行為だ。
世界中に生息する、動物とはまた一線を画した存在、『魔物』。
これらと契りを結び、言葉を交わすことによって、魔物はその人間の『契約獣』となる。
これには魔力なんつうエネルギーを媒介とする必要があり、もちろんコレがデカければでかい程に強ぇ魔物と契約が可能になる……そうだ。
かく言う俺も、あのトラバサミぎっちょん事件で坊っちゃんに保護された際に、治療の名目で契約を結ばされて今に至っている。
その際に坊っちゃんとだけ『念話』が可能になり、坊っちゃんの言葉がわかるように、この世界の言語が脳内にインプットされた訳だな。
「アッセンバッハ家は男爵の称号を持ちます。そのアッセンバッハの跡継ぎが、いつまでもホーンラビットと契約をしていると言うのは……この家の名に傷をつけてしまうことになりかねないわよ?」
この世界の定義でいうと、そうなるらしい。
さっき言った通り、この世界の貴族の格ってのは、どんな魔物と契約しているかによる。
魔力がでかけりゃ強ぇ奴と契約出来るってんだから、当然そいつはスゲェって看板を立てられる。
逆に、平民でも契約できるような雑魚と契約しているような奴は……まぁ、鼻で笑われる訳だ。
んで、俺こと角兎の格っていうのは……あ~、あれだ、最下位では、ないらしい、よ?
でもまぁ、推して知るべしって感じなのは確かなんだよなぁ。
「もうそのホーンラビットの傷も癒えたことでしょう。これを機に、新しいパートナーを探してみてはどうかしら?」
あかん。
これはあかんよ。
俺ってば、この3ヶ月テルム坊っちゃんに甘えに甘えてゴロゴロしまくってたわ!?
ただでさえ雑魚モンスターであるワタクシめが、腹ぁ出してスピスピいびきかいてたりしてたもんだから、お母ちゃんが腹に据えかねたらしい。
このままでは、俺の健やか快適生活が音を立てて瓦解してしまう!?
坊っちゃん? 俺のこと、捨てたりしやせんよね? 坊っちゃんんんん!?
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