雑魚兎が貴族に飼われてもいいじゃない!?

べべ

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第2章:兎、村と町に行きます

第2章ー2

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 と、言うわけで。やってまいりましたホーンブルグの町!
 館から歩いて20分かそこらの、丘の下に位置する小さな田舎町。
 かつては農作物を中心に栄えていた村だったそうだが、人口の増加と共に路線変更。狩りや商業、鍛冶を中心にした文化の町となった場所である。

 農業や畜産の技術は、ノンブルグに移った人たちが絶やすこと無く培われている。役割分担を決めた、対等なこの2つの土地が協力し合う事によって、アッセンバッハ家が管理するこの領地はさらなる発展を遂げていく事だろう。

「さぁ寄っといで! ノンブルグ産の新鮮な野菜だよ! 今朝届いた最高の一品さ!」

「ノーズデンから届いた岩塩はいかがかな!? 領主様の屋敷で扱われているのと同じ物だよ~! 今なら勉強させてもらうよぉ!」

「狩ったばかりのホーンラビットの肉だ! タレにつけてガブリと噛み付いてくんなよ!」

「お供に冷えたエールはどうだい? 隣の串焼きは味が濃いめだからサッパリするぜぇ?」

 大通りを歩くテルム坊っちゃんと、その頭の上にいる俺の耳に、町の喧騒が飛び込んでくる。
 隣を歩いているお母ちゃんや、チビっ子も相変わらずの活気に満足そうな様子だ。

 まぁ、ちょっと不穏なワードも聞こえたが……自然の摂理ってのはそういうもんだ。群れの者かはわからんが、ご同輩には冥福を祈らせてもらおう。

「テルム、今日の視察では何を見るべきかわかりますか?」

 お母ちゃんが、歩きながら坊っちゃんに問いかけを投げてくる。いつも雰囲気のいい服に身を包んでいるお母ちゃんだが、出かけの場では気合が違う。ひと目でアッセンバッハ家の者だとわかるような、美しいドレスを着込んでいる。

 通りを行く御婦人や少女はその姿に見惚れ、男性陣はすべからく鼻の下を伸ばしているのだから、おっさんがどれだけ勝ち組な結婚をしたのかは想像に難くない。

「ネアヒリム様! テルムレイン様、テレサレイン様も! 本日もご機嫌麗しゅう!」

「親子3人でお出かけですかぃ、こいつぁ良いもん見れた!」

「ふふ、おはよう皆さん。今日もお忙しいようで大変結構ですわ」

「ははは! 違ぇねぇ、嬉しい悲鳴はいくらでも上げてぇや!」

 町の面々は、お母ちゃんを中心に、親子3人を見つけると嬉しそうに声をかけてくれる。
 民に悪印象を持たれていないってのは、とてもとても重要なことだな。坊っちゃんの今後の為にも、彼らとの関係は良好なものを築きたいものだ。

「そう、ですね。活気はこの前見た時と同じですので、経済はうまく回っているのではないかと思います。なので、今回は町民の意見に耳を傾けるべきではないかと……思うんですが」

 そんな町民の様子を見ての、提案。
 坊っちゃん、あぁた本当に10歳ですか? 意見が子供のそれじゃないんですけど?

「そうねテルム。一軒一軒のお店を逐一確認して回るわけにはいかないけれど、貴方の考えは正しいものだと思うわ」

「え、えへへ」

「あとは、どこでそういう意見を聞くかなんだけど……」

「ねぇねぇお母様! サマンサの所でお食事にしない!?」

 チビっ子、お前は相変わらず食うことばかりなんだな。おじさんは悲しいよ……。
 だが、食いたいのは同感だ。いいぞもっとやれ。

「テレサ……お昼ご飯を町で食べてはいけないというわけでは無いし、サマンサのお店で食べるというのは賛成よ? けれど、お昼ご飯にはまだ少し早いと思うの……」

「あら、お昼時に入ってしまっては忙しくて聞けるお話も聞けなくてよお母様? それに、サマンサのお店では試験的にお米を扱って貰ってるんだから、積極的に見ていかなきゃ!」

 お、おおう、チビっ子め。こと食事に関することだったらいくらでも口が回りやがる。
 確かに、食事処で景気の話をするんだったら、忙しい昼時になる前に行ったほうがいいんだろう。

 ちなみに、サマンサってのはこの町でも老舗の食事処を切り盛りしている女将さんの事だ。旦那と娘がおり、家族が協力して経営している。温かい家庭の味が、圧倒的ボリュームでもって胃袋に襲いかかってくる料理の数々は、この町のちょっとした名物である。

「そうねぇ……確かに、一理あるわ。けど、商人ギルド支部にも顔を見せないといけないから、それが終わってからにしましょう? それなら時間的にもちょうどいいわ?」

「ぶ~……」

「ま、まぁまぁテレサ。お母様は、お父様みたいに突っ込んだ内容は聞かないだろうからそんなに時間はかからないさ」

「むう、わかった……」

 お母ちゃんも坊っちゃんも、まだ胃の中に食い物が残っているもんだから路線を切り替えるのに必死になっている。
 俺としてはサマンサの店が最初でもよかったんだが……まぁ、ギルドに行くのも悪くはない。
 お母ちゃんが職員と話をしている間は自由時間だろうし、坊っちゃんと一緒にギルド内を見て回るのも良いだろう。

『ねぇ、カク?』

『ん~?』

『お金、持ってきた?』

『……へへ~』

 坊っちゃんも、同じ気持ちだったらしい。似たり寄ったりな思考は、相棒としちゃ嬉しい所だ。
 俺は、腹周りの毛皮をゴソゴソと弄る。そこに入っているのは、小さな袋。僅かながら、坊っちゃんのヘソクリを持ち出させて貰っている。

 お母ちゃんはおっさんみてぇに甘くないから、子供に買い物とかさせない為にお金は持たせないんだよな……しかし、俺がこうして持ってりゃあ、見つかることなく悠々と買い物ができるってもんだ。

『坊っちゃんよ、お主も悪よのぉ』

『カク程じゃないさ~』

 多分、二人共悪い顔してんだろうな。チビっ子が首を傾げているが、奴の興味は現在、大半がサマンサの店で何を食うかだ。気付かれはしまい。
 そのまま俺と坊っちゃんはぐふぐふと笑いながらお母ちゃんの後ろを付いていったのであった。

『ちなみにカク、その収納スペースって、やっぱり贅にk……』

『毛ですぅぅぅ! モッフモフの! 毛ですぅぅぅ!』
 
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