雑魚兎が貴族に飼われてもいいじゃない!?

べべ

文字の大きさ
17 / 47
第2章:兎、村と町に行きます

第2章ー5

しおりを挟む
 
 町の活気は、俺達の……というか、ネアお母ちゃんを満足させるには充分だったらしい。
 ギルドでの報告内容(金使ったのは内密にしてくれた)や、市場の物品。鍛冶職人の需要など、様々な情報を確認していったお母ちゃんは、このホーンブルグの町を「現状問題なし」と定めたようだ。

 特に、途中で寄ったサマンサの食堂での報告が良かった。
 昼間にチビっ子が言ってた通り、そこでは試験的に「白ごはん」をメニューとして提供してもらっている。あそこの料理なら、米に合うのは間違いないとチビっ子が太鼓判を押して置いて貰っていたのだが……

「お米、町の皆にに気に入られているみたいで良かったですね。お母様」

「えぇ、本当に。これでホーンブルグから名産品を発信できる確信を得られたわ」

 アッセンバッハ邸での晩餐後、親子の喋り場にて。
 テルム坊っちゃんとお母ちゃんが、俺の思考をバトンリレーしてくれたかのように言葉を繋いでくれた。
 そう、米は町民にかなり人気だったという。

 あっさりしたスープ、こってりした肉。サッパリした漬物など、ありとあらゆる食材と調和する万能穀物。それが米だ。その魔力は例外なく、食った皆を虜にしたらしい。
 サマンサの食堂では既に売り切れ御免。入荷待ちの状況にまでなっていた。

「でも、おかげで私達が食べられなかったというのは納得行かないわ!」

「まぁまぁテレサ。美味しいものは皆で分け合わないと」

 チビっ子は個人的理由で不服らしいが、まぁ俺としても坊っちゃんの意見に賛成だ。
 美味い物を食わせてくれる領主がいりゃあ、俺だってなんもしてくれない神様以上に崇め奉るってもんだ。支持の為には少しの我慢も必要ってこったな。

『しかし、なんだな……そうなると、稲作が成功してもらわん事には財政も厳しくならんか?』

『う~ん、そうだねぇ……田んぼを作ったりするのに水路広げたりしたそうだし、そこそこお金はかかってるみたい。少なくとも、元手を取り返せるくらいにはお米が作れないと厳しいかもねぇ』

 やっぱそうみたいだな。その為におっさんが村に視察に行くんだから。

「あ~ぁ、今頃お父様は、村で採れたお野菜をたくさんいただいているのかしら? 羨ましいわぁ」

「ふふ、ノンブルグに行った人の特権ね。今度は連れて行ってもらえるようお願いしてみたらどうかしら?」

「ん~、でも馬車で移動すると、お尻が痛くなるんだもの」

 会話の途中で、チビっ子が何故か俺を持ち上げ、膝の上に乗せて腹を揉み始める。
 おい、断りもなく何してやがるコイツ?

「……フシッ」

「あはは、ノンブルグまではそんなに遠くないんだから、少しの我慢じゃないか~」

「お兄ちゃんっ、女の子の体は繊細なのっ! お兄ちゃんだって華奢なんだからそのくらいわかるでしょ!?」

「フシッ」

「遠回しに僕を女の子扱いしないでもらえるかな!? 僕は大丈夫だよっ、何回も行ったことあるし……!」

 あ、無視ですか、そうですか。
 というか、コイツなんでこんなにねちっこく腹を揉むの? なんかうどん生地こねるみたいな手付きなんですけど。こ、こそばゆいんですけどぉん!?

「フ、フシュゥゥン……!」

「デブ兎、うっさい」

「!?」

 理不尽過ぎません!?

「せっかくモチモチしててもふもふしてて気持ちいいんだから、そのまま静かに抱かれなさいよね。アンタ、抱き心地に関しては最高級なのよっ。自分の才能を活かす為に黙りなさい!」

「フシーッ! フスッ、フスッ!」

「あはは、ぬいぐるみ扱いするなってさ」

「違うわ。抱きまくらよ」

 それほぼ一緒ですよね!?

「あはははっ」

「ふふ、んふふ……! テレサ、笑わせないでちょうだい」

「ふふんっ」

 家主のいない、少しだけ寂しい夜。
 こうして家族三人が、自室に戻らずに夜を過ごすのは、少しだけ変わった環境をお互いで埋め合おうとしているからなのかもしれない。
 仲良きことは良きことかな。まぁ、そういう夜に笑いを提供できるってんなら、俺もこうしてもふもふされることはやぶさかではない。

「……ただいまぁ……」

「ははは、は……は?」

「ふふ……え?」

「あぇ?」

 おう?

「……あはは、ただいま皆」

 硬直する俺たち。
 いやいやいや、おかしいおかしい。
 なんでおっさんがリビングに入ってくるんだよ!?

「お、お父様!? お帰りは明日の夕方なのでは!?」

「アナタ、どうしたの?」

「おかえりなさいお父様。どしたの?」

 驚きの反応を返す身内に対し、おっさんはバツが悪そうに「たはは……」と笑う。
 おそらくずっと馬車で揺られていたのだろう。わずかに腰が曲がり、さする姿はなんとも痛々しい。

「いやぁ、少しトラブルがあってね、私だけでは対処しきれないものだから……即座に引き返してきたんだよ」

「トラブル? ノンブルグで、ですか?」

「あぁ」

 おっさんがソファの上に、うつ伏せで寝転がる。服が乱れようがお構いなしな態度は、よほど腰にきてるんだと容易に想像させる。
 おっさんの後ろについてきていたコンステッド氏は、「失礼いたします」と一礼し、早速おっさんのマッサージを開始した。出来る執事だ。

「すまないけど、このまま話してもいいかい? 明日の朝にまた、すぐノンブルグに行かねばならないんだ。少しでも体を休めたくてねぇ」

「えぇ、アナタ。お湯を沸かしましょうか?」

「たのむよぉ」

 とろけ顔のおっさんは今にも寝てしまいそうだが、湯浴みをして明日に備えるつもりらしい。
 お母ちゃんがメイドを呼び、すぐに湯船にお湯を溜めるよう伝えている。お湯に関しては後日に話を置いておくとして……なんでまた、戻ってきた? トラブルってなんだ? 

「はぁ……テルム」

「はい、なんでしょうお父様」

「明日なんだが……私と一緒に、ノンブルグに来てくれないか?」

「え?」

 俺と坊っちゃんは、互いに顔を見合わせる。
 おっさんが帰ってくる理由は、坊っちゃんを呼ぶため?
 それは、すなわち……

「稲が、病気にかかった可能性があるんだ」

 平和な、家族団欒の空間が、死んだ。
 まるで冷水を浴びせたかのように、場が静まり返る。
 坊っちゃんを真っ直ぐに見つめるおっさんの目が、妙に印象に残った。
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

神様のミスで死んだので、神獣もふもふと異世界インターネットで快適スローライフ始めます ~最強生活チートと1000万ポイントでポチりまくり!~

幸せのオムライス
ファンタジー
★HOTランキング1位感謝!(2026.1.23) カクヨムコン部門別 週間ランキング5位! なろう四半期ランクイン中!(異世界転生/ファンタジー/連載中) ★ 山根ことり、28歳OL。私の平凡な毎日は、上から降ってきた神様の植木鉢が頭に直撃したことで、あっけなく幕を閉じた。 神様の100%過失による事故死ということで、お詫びにもらったのは3つのチート能力。 ①通販サイトや検索が使える【異世界インターネット接続】 ②もふもふ動物と話せる【もふもふテイマー&翻訳】 ③戦闘はできないけど生活は最強な【生活魔法 Lv.99】 私の願いはただ一つ。働かずに、可愛いペットともふもふしながら快適なスローライフを送ること! のはずが、転生先は森のど真ん中。おまけに保護された先の孤児院は、ご飯はまずいしお風呂もない劣悪環境!? 「私の安眠のため、改革します!」 チート能力を駆使して、ボロ屋敷がピカピカに大変身! 現代知識と通販調味料で絶品ごはんを振る舞えば、心を閉ざした子供たちも次々と懐いてきて……? 気づけばギルドに登録し、薬草採取で荒稼ぎ。謎の天才少女として街の注目株に!? あれ、私のスローライフはどこへ? これは、うっかりチートで快適な生活基盤を整えすぎた元OLが、最強神獣もふもふや仲間たちとのんびり暮らすために、ついでに周りも幸せにしちゃう、そんな物語。 【今後のストーリー構想(全11章完結予定)】 第1章 森の生活と孤児院改革(完結済) 第2章 ヤマネコ商会、爆誕!(連載中) 第3章 ようこそ、ヤマネコ冒険部へ! 第4章 王都は誘惑の香り 第5章 救国のセラピー 第6章 戦場のロジスティクス・イノベーション 第7章 領主様はスローライフをご所望です 第8章 プロジェクト・コトリランド 第9章 ヤマネコ式教育改革 第10章 魔王対策は役員会にて 第11章 魔王城、買収しました(完結予定)

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

ギルドの小さな看板娘さん~実はモンスターを完全回避できちゃいます。夢はたくさんのもふもふ幻獣と暮らすことです~

うみ
ファンタジー
「魔法のリンゴあります! いかがですか!」 探索者ギルドで満面の笑みを浮かべ、元気よく魔法のリンゴを売る幼い少女チハル。 探索者たちから可愛がられ、魔法のリンゴは毎日完売御礼! 単に彼女が愛らしいから売り切れているわけではなく、魔法のリンゴはなかなかのものなのだ。 そんな彼女には「夜」の仕事もあった。それは、迷宮で迷子になった探索者をこっそり助け出すこと。 小さな彼女には秘密があった。 彼女の奏でる「魔曲」を聞いたモンスターは借りてきた猫のように大人しくなる。 魔曲の力で彼女は安全に探索者を救い出すことができるのだ。 そんな彼女の夢は「魔晶石」を集め、幻獣を喚び一緒に暮らすこと。 たくさんのもふもふ幻獣と暮らすことを夢見て今日もチハルは「魔法のリンゴ」を売りに行く。 実は彼女は人間ではなく――その正体は。 チハルを中心としたほのぼの、柔らかなおはなしをどうぞお楽しみください。

処理中です...