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第3章:兎、実りました
第3章ー5
しおりを挟むせんべいをかっ食らっているくま子は一旦置いておくとして、俺たちは今回の本題に入ることにした。
ずばり、新しいギャンブルの提供である。
もはやこの町、賭場を公式化してギャンブルを主軸に回したほうが良いんじゃないだろうか?
『んじゃ、早速紹介して行こうかね』
『んふふ、楽しみだねぇ』
『今回は変に儲けが偏るような奴じゃにゃあなんな?』
そこんとこは心配いらん。
今日のギャンブルは、なるべく均等な奴にしたからな。
俺はもふもふの毛の中から、とある品を取り出す。
それは、羊皮紙を簡単に丸く切って、真ん中に串を通した代物だ。
『なんだいそれは?』
『これか? コマだよ』
『にゃー? 貴重な羊皮紙で出来とるにゃあ』
『おう、重ねて接着してるからソコソコ金かかってるぞ。適当にちょろまかして作った』
『『外道だね(にゃ)』』
『うるせぇわ』
コマには、黒と白に交互に塗られており、そこに数字が書いてある。
黒と白、それぞれ1から5までの数字だ。
これを見たのなら、同郷者は簡単に理解できる事だろう。
『とにかく、今回やるのは「ルーレット」だ』
『るーれっと、ねぇ』
『そりゃあコマって名前なんと違うにゃんならぁ?』
『コマはルーレットの概念を説明する為に作った教材だよ』
『ほぉん……』
なんかギルネコは着眼点がずれてんな。まぁいい。
ルーレットは単純明快。色や数字を当てるゲームだ。
回転する円形の盤上を玉が転がり、その結果としてとある一点に着弾する。
それが黒なのか白なのか、はたまた何の数字なのか、それを考える。
まぁ、やってみるべ。
『じゃあ、この小石が目盛な?』
『ふむふむ』
『んで、コマを回す。本当ならこのコマの上で更に玉が回るんだけど、今回は簡単に目盛制でいくぞ』
『なんでもいいから早くおしよ』
『おう。んじゃあ手始めに、このコマは、黒に目盛がとまると思うか? それとも白か?』
俺の質問に、ナディアは「そういうことかい」と笑い、黒を選択した。
ギルネコは無言。参加しないんか。
『んじゃ、回すぞ~』
軽い気持ちで、コマを回す。重心も上手く安定しており、綺麗に回転してくれた。
ナディアは感心したように声を出し、ギルネコは目を見開く。
やがてコマは回転を衰えさせ、軸をブレさせていく。
『っとと、そりゃずれるか……まぁ、目盛に指定した石から近い目が当たりだからな?』
『となると……ふふ、黒の4ってわけだね?』
ナディアの言う通り。目盛石から最も近いのは、黒の4番であった。
つまり、黒を選択したナディアの勝ちという事だ。
『この場合、単純に色を選ぶだけなら2つに1つ。確率は半々だ。つまり、倍率は低い。当然だな』
『色に関係なく、数字を当てにいく事もできるんだね? このコマには1から5まで書いてあるから、この場合5分の1……色を当てるよりも倍率が高い、と』
『そうだな。そして当然……』
『色と数字を当てる、一点張りが最難関……最高倍率ってわけかい』
流石、理解が早い。
このギャンブルは、複数人がまとめて賭けるが、それぞれがディーラーと一対一だ。
負けたら当然没収。勝てばその場で有り金が増える。
客と客とが争う心配はほとんどない。わりとクリーンな部類のギャンブルと言えよう。
『ふぅん……もちろん盤はでかく、数字は多くするとして……さっきは、玉を転がして遊ぶって言ってたね?』
『あぁ。それぞれの数字の場所に溝を作って、そん中に勢いが落ちた玉が入るんだ。回転する盤と、転がる玉を見つめるヒリヒリ感を味わうんだよ』
『いいじゃないか。是非職人に依頼して盤を作って貰うとしよう』
このルーレットに、ナディアはご満悦だ。何度もコマを回しながら、確率の計算なんぞ始めている。
気に入ってくれたら何よりだが……。
『一応言っとくが、法外なオッズはだめだからな』
『心配するんじゃないよ。一番信用のある賭場に置かせるさ』
『ホント頼んだぞ。約束破ったらもうアイディアあげねぇからな』
『怖い怖い。それはゴメンだから必ずそうさせるさ』
うん、これで大丈夫だろ。
坊っちゃん達に話は通してないが、まぁ一個くらいギルドオリジナルがあってもいい筈だ。
うん、そのはずだ。そう思っておこう。
『……のぉ、ところでカク』
『あん?』
と、ナディアとの会話が途切れた所で、ギルネコが割って入ってくる。
何だ? やっぱりルーレットダメだったか?
『いや、ルーレットに関してはにゃんもにゃぁ。割と公平だしにゃ』
『俺顔に出てた?』
『口から出てたにゃんならぁ。それよりも、これにゃこれ』
そう言ってギルネコが前足で包むのは、ころりと転がるコマである。
『コマがどうかしたのか?』
『こりゃあ、紙だけじゃにゃあで……いろんな材料で出来るにゃんな?』
『そうだな。これは軽いから指で回せるけど、木とかで作った奴は紐巻いたりして遊べるぞ』
『にゃるほどにゃ……ちなみに、これもご家族には見せたんにゃ?』
『コンステッドに作ってもらって、坊っちゃんは知ってる』
そこまで聞いて、ギルネコは思い切り舌打ちを打った。なんだよ、感じ悪いな。
コマがどうかしたんか?
『となると、兄君にご挨拶に伺わんとにゃらんにゃあ。こりゃあ、工芸品としてはいい線言ってる玩具にゃんならぁ』
『……あぁ、コマ売る算段してたのか!』
『当たり前にゃ。初めて見る玩具にゃんならぁ、職人達に作らせれば市場のバランスを取りやすくなるにゃ! 食文化と娯楽はまた加速するだろうし、こういうので職人達にテコ入れせにゃあ……!』
お、おう、たくましいなぁコイツ。
まぁ、坊っちゃんと話が通れば問題ないだろうし、別にいいんじゃね? 知らんけど。
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