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街までの道のり
猿でも分かるゴブリン語
しおりを挟むカエデの懸命な努力は惜しくも魔法取得までには辿り着かなかった。
これも全てなっちゃんが悪い。ちゃんと魔物が現れることを事前に教えてくれたら凄く才能開花していたと思う。
『感覚を感じる前に快楽を感じていらっしゃるから死んだのです。』
「さっきからなっちゃんの中で私は既に死んでる事になってない?」
『貧弱能天気でいらっしゃるご主人様では魔物三匹相手に勝つなど到底無理でしょう。仕える身として骨はちゃんと拾いますね。』
まあ、この子はなんて酷いナビなんでしょう。光球の皮を被った悪魔だよまったく。
「ギギギ!ギガ、ギギ!」
魔物の一匹が何か喋ってきた。
「な、なっちゃん、あいつら何なの?」
『はい、あれはゴブリンと呼ばれる人に近い魔物です。武器を使う事も出来ますし繁殖能力は魔物界でも随一です。』
人に近いか、確かに二足歩行だし一匹は木の棒をブンブンしている。
私に対して変わらずギーギーと鳴いている。
「なっちゃん、さっきからあいつ等何を言っているの?」
『ずっとお・ん・なお・ん・なとコールされていますよ。おめでとうございます、ご主人様が女性扱いされています。』
「出会って少し経ったけど、もしかしてなっちゃんって私の事嫌い?」
『…………何をおっしゃいますか。ご主人様はご主人様です。』
よ、良かったぁ…嫌われてる訳じゃないみたい。
カエデの頭は平均よりちょっとだけ軽くやたらと前を向く。言葉の意味を深く考えないことに定評がある。
主従の信頼関係を改めて再確認出来たところでこの状況どうしましょう。
ゴブリン三匹に狙われたか弱く純粋無垢な女の子。
異世界にやって来てすぐに訪れた絶体絶命。
「な、なっちゃん、どうしたらいい?勝つのは無理でもどうにか逃げれない?」
『………一つ方法がございます。しかも、逃げるではなく撃退する方法です。』
魔法を使えない私があいつらを撃退する方法?
まさかまだ私には隠れた力が備わっているのかも、絶体絶命のピンチでしか使えない力みたいな。
『その撃退方法とは……。』
「う、うん撃退方法とは?」
今にも迫ってきそうなゴブリン達がいるのに焦らすねぇなっちゃんは。お願いです早く助けて下さい。
『ゴブリン語を使いゴブリン共を説得して撤退してもらう作戦です。』
「ゴ、ゴブリン語?そんな言語なんて私知らないよ。」
『そこで私の出番です。こそっと傍で耳打ちしますので、ご主人様はそれに従って喋って下さい。事前に相手に伝える意味を教えておきます。私は美味しくないですどうかお帰り下さい、です。』
そんな説得で本当に撤退するのだろうか?
『安心して下さいませ。ゴブリンは単純短絡思考な生き物です。容易く説得に応じてくれるでしょう。大丈夫です。』
「で、でも…。」
不安なカエデを励ますように一際光球の輝きが増した。
『ご主人様が信じられないなら。私が信じる私を信じて下さい!』
「う、うん!」
よく分からなかったけど、今まで以上になっちゃんの言葉に力があった。信じる価値があるかもしれない。
小娘一人に対して余裕綽々なゴブリン達。
カエデは一歩前へと出る。
『それでは、私の言う通りに喋って下さい。あと、なるべく強気でお願いします。いきますよ、ゴニョゴニョ……。』
なっちゃんが私の耳元へふわふわと近寄ってゴブリン語を伝えてくれる。
私はそれに倣って言葉を繋いでいく。
「ギギッギ!ギーギーガガギ。ギッギギガーギググッギ。グーギググ、ガガガギググガギググ!(そこのお前達よく聞け!私は病気持ちでこの世界の誰よりも上を行くド変態である。襲ってくる奴らを病気で色々腐らし、腐ったそれをズゾゾと吸い上げて愉しむ変態中の変態だ!)」
それを聞いたゴブリン達の反応がこちら。
「「「ギ、ギグギギガ!!!(き、生粋の変態だぁ!!!)」」」
これには、ゴブリンだってドン引き。
ゴブリン達が何故か怖気づいたようにジリジリと後退していく。
「ギ、ギ、ギギグググゴ?グゲゲゲゲ!(お、お、どうしたの?グゲゲゲゲ!)」
「「「ギ、ギギャアアアアー!!!」」」
唇が少し乾いてきたから舌でペロっとする。
それをキッカケにかゴブリン達は泣き叫ぶように森の奥へと消えて行った。
それは危機を脱したということだ。
カエデは喜びのあまり何度もなっちゃんに御礼を言う。
『いえ、私はご主人様を助けたいが一心です。御礼はいりません。…………さすがに罪悪感で押し潰されそうです。』
「え、なにか言った?」
『いえ、なんでもございません。それよりご無事でなによりです。』
命の恩人なのに謙遜する主人想いのなっちゃんだ。
これからは、なっちゃんを信じてこの世界を生きていこう。
そう意気込むカエデの横で徐々に申し訳なさそうに輝きが弱くなっていく光球でした。
次回からちゃんと魔法の練習します。
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