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おいでませ妖精の里
変態が起きる前に
しおりを挟むどんな躾を施したのかは知るのも怖いけど、丸一日経過しても神様は戻らない。今朝も子供らしい大きく元気な挨拶をしてきて、とても同一人物だと思えない。
妖精さん達を周りに集わせて、朝食をお互いに食べさせ合いっこしている。あの女の子は本当にあの神様なのかな。脳が否定しようと警鐘を鳴らしっぱなしだ。
「妖精王さん、あの子は本当に神様ですか?」
「ん、何を言っておる。あれはどっからどうみても彼奴じゃろうに。」
「あの、でも中身が全然違います‥。ずっとあのままですか?」
出来ればこのままでという気持ちと余りの変貌ぶりに調子が狂う気持ちが交差する。何だかんだで神様との付き合いはそこそこ長くなってきている。性格を変えられるのは少し不憫に思っちゃう。
「なに心配する必要はない。此奴への説教は今日に始まったことではない。今回で通算説教数 11,029回。どうじゃ、多少は同情心も収まったろう?」
「はい。」
神様は神様なんだ。
長い年月を通して妖精王さんも容赦しなくなったんだね。
「これの反省は保っても2、3日ってとこじゃ。あっという間に元の愚か者に退化するぞ。」
「そう‥ですか。」
「あれが復活する前にここを退散することをお勧めするぞ。」
仲良くなれたのにもうお別れ。
寂しい。
うさぎさん達に続く安らぎの場所だったのに。
暗くなる僕の心を案じるように妖精王さんは頭を撫でてくる。その顔は苦笑しつつも何処までも優しい。小さい頃の大好きだったお母さんを連想させて目頭と心が温かくなる。
「なにこれで今生の別れとはならん。まだまだ先は長い。幾らでも会う機会は多くあろう。だから大丈夫じゃ。」
「‥はい、また必ず会いに来ます。」
「うむその意気だ。そうじゃ、これを渡しておこう。」
妖精王さんは何処からかポンっと取り出した。それは蒼く光の反射で綺麗に輝く水晶がはめ込まれたペンダント。とても只のペンダントとは考えられない。
妖精王さんは特に気にした様子もなく当然のように渡してくる。
「こ、これは何ですか?」
「それはまあ平たく言えば御守りみたいなもんじゃ。もしお主達が助けを必要とした時、それを握り魔力を込めよ。さすれば儂が一時的に顕現して助けとなろう。」
「そ、そんな凄いものい頂く訳にはいきません!」
「良いから遠慮せず受け取れ。これはこれからもお主達と仲良しでいたいという証じゃ。受け取らんと困るし怒るぞ。」
「わ、分かりました。ありがとうございます!」
妖精王さんがぷくぅーと頬を膨らませ始めたので慌てて受け取る。失くさないようにちゃんと首にかけておく。
お別れの時まであと少し。
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