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終末のダンジョン
生まれた思い
しおりを挟む俺はお嬢のお願いもとい強制命令で一人の少年を追い続けていた。
俺なんか眼中にないおぞましい力を持つララちゃんとの旅。
旅という名の長期間のストーキング。
恋する乙女たちの一時の過ち。
そう頭に無理矢理刻み込んでここまで来た。
主の命令だしこの凶暴な女性相手に逆らうことも出来ない。
でも、もう無理だ。
思えば最初は羨望だった。お嬢に姫様、受付嬢と美女美少女から慕われてちょっとした妬みもあった。
けれど、それはすぐに同情へと変わった。どんなに容姿が優れた人達でもあれは無い。好きだから監視したい拘束したい逃したくないだなんて俺なら発狂してしまう。
そして、このダンジョンで少年達に追い付いてしまった。もうその時には同情から罪悪感へと進化した。
どうにか出来るか分からなくてももう止めるべきだとか進言出来たはずだ。
でも、俺は死の恐怖に勝てなかった。
本当に申し訳無い。
俺は臆病だから勝ってくれと祈ることしか出来ない。
ララちゃん達が倒れ、少年達が完全に勝利したと思った。今更だろうけどお詫びの言葉だけは伝えて帰ろうとした時、またしても事態が急変していった。
そう邪神が現れた。
あの雰囲気、意地悪そうな笑み、どう見ても邪神の類だろう。
そして人外の戦いから神話の戦いへと変化。
またしても俺は隅の方で見守るしか出来なくなった。途中から隣にやって来た小さなうさぎと眺めるだけ。
少年達がどんどん劣勢へと追い込まれていく。
なのに、どうして…どうして彼らの目は死んでいない。絶望を前にして何故諦めず立ち向かうことが出来る。
隣の小さなうさぎも全く諦めた様子もなくクゥーと応援している。
俺はもう一度彼らを見た。
笑っていた。
圧倒的不利な状況下で笑っていた。
あれは戦場で戦う漢の微笑みだ。
あの姿を見て思う。俺はなんて情けないんだ。あんな子供が自分の大切なものの為に戦っている。俺はこうして見守ることしか出来ないのか。
主からの使命と同性の将来が俺の心で葛藤する。
少年達が頷き合い総攻撃を始めた時、俺の気持ちは決まった。
今日一日だけの命令無視。
あの邪神と似たような禍々しいオーラを放つ像へ刃を振り下ろした。
幸い少年達の攻撃で注意が逸れていたのか簡単に壊すことが出来た。
これであの邪神に少しでも痛手を負わせられたら良し。
これが俺の今までの償いだ。
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