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終末のダンジョン
終わった………?
しおりを挟む以前、何度か見掛けた騎士風のお兄さん。
何処からともなく突然現れたかと思えば、なんと邪な神様の像を破壊してくれた。
今日から僕らの中で勇者様と認定します。
像を砕かれた神様はギョッと目を見開いている。自分の依代がぶっ壊れて驚愕した様子。
それに気付けばララお姉ちゃん達は糸が切れたようにバタリと倒れていた。
「な、な、いつの間に…。全くこの私に感知されず近づくなんて…まさかダンジョンの一部にでも同化していたとでもいうの。」
誰も彼がただ単に存在感が薄かっただけと知ることは無かった。
「くっ…私の悲願が…。ま、まだです!この婚姻届にサインさせれば既成事実です。神界に返却される前になんとか。」
まだ諦めを知らない変態は紙と羽根ペンを手に迫ってくる。足の先から徐々に霧のように消えていってるにも関わらずその目は死んでいない。
僕の元まであと一歩。
でも、もう遠いよ。だって、僕らのお母さんがそれを許さない。
「この戯けが。いい加減反省せい。」
「お、王ちゃん。くっ…ご、後生ですー。ちょっとサインしてもらったらすぐ帰るんで、ね?」
「はいそうですかって言う訳無かろうが!!」
リアル雷がトドメとばかりに神様へ直撃した。
焼き焦げた匂いと煙が舞う中、ようやく神様が顔面から倒れてくれた。
「ふむ、よし儂はこれを連れて帰るとするかのう。コータよ、これのお仕置きは既存の100倍コースにするから安心せい。」
「は、はいお願いします。その、ありがとうございました。」
「よいよい。お主らはよく頑張った。これからの未来が楽しいものであることを祈っておるぞ。」
ニカッと笑ってそう言うと、丸焦げの神様の顔面をわし掴んで帰っていった。
もう下半身が消えてて上半身だけで不気味だったけど、あの神様にはお似合いかもしれない。
そして、ついにストーカー対策用品の転移石を手に入れる時が来ました。
既に小型に戻ったヴァルさんとチビうささんを頭に乗せて、棺の中の丁寧に保管された石を取る。
これまでの苦労を思い出すと涙が出てくる。隣ではクロウさんもやったなやったなと咽び泣いていた。
ヴァルさん?
ヴァルさんはもう涙と鼻水だらけだよ。
ひとまず全員が落ち着き、最後に助けに来てくれた勇者様にお礼を伝える。
「助けに入って頂き本当にありがとうございました。」
「いや、お礼なんていらない。俺こそ遅くなってすまなかった。」
邪神を追い払ったのにとても謙虚な勇者様だ。
しばらくお互いに感謝や謝罪の繰り返しが続いたけど、チビうささんの一鳴きで終了した。
さっきまでの戦いで僕らと勇者様以外は気絶中。なんだかとても安心する。
気絶した人達の対処は勇者様がしてくれることとなった。
感謝してもしきれないよ。
棺の前でもう一度勇者様と固い握手を交わしていよいよ転移。
複数人で転移する場合は所持者に触れていなければならないらしい。ヴァルさん達は頭でクロウさんは僕の肩を触る。
懐かしき友のいる森を思い浮かべて。
「転移。」
薄暗いダンジョンから一変して目の前は緑でいっぱい。
久しぶりのユーリル大森林だ。
それだけでまた瞳が潤んでくる。
チビうささんが森中に響かせるように大きく鳴く。
それに返事するようにチビうささんとは違う鳴き声が返ってきた。
何日経とうとも友の声は忘れない。
僕は声のする方へがむしゃらに走った。
走って走ってそして。
「クックゥー!」
懐かしい丸くて真っ白。
親友は変わらず僕の胸へと飛び込んできた。
力をなくしたようにその場へ膝をつく。
もうダムは完全に決壊。
頭のてっぺんから顎の先まで涙と鼻水だらけになっちゃった。
そして、僕はうさぎさんに返事を返す。
「うん、ただいま!」
こうして、僕達の長かった逃避行に一区切り付ける事が出来た。
めでたしめでたし。
「はぁ、はぁ何ヶ月も森で待機した甲斐がありましたわ。」
「久しぶりすぎて鼻血が止まりませんわ。」
茂みの奥で潜むボロボロの箱とボロボロになったドレスが妖しく揺れていた。
彼ら彼女らの激しい逃亡戦はまだまだこれからだ。
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スカイアさん、コメントありがとうございます!
今までの中で不遇な場面しか無かった人なので…(-_-;)