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しおりを挟むゆっくりと眠れた僕は、朝起きてミルクスープと塩おにぎりを作った。味噌や卵があれば、味噌汁とか卵焼きしたかったけどなかったんだ。
ヴィス君はまたおかわりしてくれた。旭は続けてミルクスープは嫌だって言って食べてくれなかったけど。残念。
お姉ちゃんと旭は、ドンドさんとバイオレットさんと遊ぶことになり、僕は空いた時間で食材をしっかり見ることにした。
昨日はラインさんが食材について教えてくれたけれど、今日はヴィス君の立候補で、僕と一緒に食事のサポート係をしてくれるそう。……キスじゃなくて、サポートしてね?
「ルイ、昨日も可愛いと思ったけど、この被り物しているルイも可愛い。俺以外の者にルイの肌を見せなくなかったから、俺がこの布を選んだんだ」
「ヴィス君……」
開口一番に甘い言葉を吐いて、布の上から僕の顔をサラリと撫でて布越しにキスをしてきた。これはサポートどころではないかもなと思いながら、布のお礼を言う。
「布選んでくれてありがとう。昨日のよりすごく着やすい」
「お安い御用だ」
ヴィス君が用意してくれた被り物は、獣姿になれない僕のために、薄ピンク色の薄手の布で作られた、イスラーム文化圏にある伝統衣装の一つ、ニカブのような布だ。つまり今の僕は布でぐるぐる巻きになり、目以外は隠している状態になる。
けれど布の通気性がよくて、触り心地がさらさらしているので蒸れたり話しにくかったりはしない。邪魔だけどね。
でもこのヴェールを巻いているのは僕だけ。お姉ちゃんは熊獣人で必要ないし、旭はまだ痴態を晒すのが許される年齢。
朝からお姉ちゃんにピンク似合いすぎと笑われるし、旭はオバケだと騒いで大変だった。
まぁそれはおいといて、食材について確認していくこととする。
春から秋までは、その日の午前中にヴィス君かラインさん、バイオレットさんが食材を収穫し、朝までに消費する流れになっているんだって。冬になる前は蓄えたりして、冬越えの用意をする。
だから今は春なので、食材保管庫は最低限の保管が効く食材を保存している状態なんだって。
確かに毎日ジメジメ蒸し蒸ししていると、作り置きは傷みが怖いので作れなさそう。頑張って毎食作らないとな。
少ない食材で見れていなかった甕の中を確認する。そこで発見したしたのはニンニク、しょうがだった。
この世界でニンニクは匂いがキツくて殆ど使わないんだって。勿体ない。これでお肉焼いたらめちゃくちゃ美味いのに!
生姜も辛いから殆ど使わないんだそう。風邪引いた時にすりおろしてスィート草と混ぜて使うんだとか。生姜湯はあるんだ。生姜もお肉に使って焼きたいな。絶対美味しい。
あとは特に調味料は見当たらなかった。うーん、ケチャップとかマヨネーズとか、酢とか味噌とかあったらいいんだけど、原料に発酵食品が必要なんだよね。
この世界は麹とか酵母はあるのだろうか。昔、酵母菌を作ってみようとして、りんご酵母をしたけど失敗して腐っちゃったんだ。
麹とか酵母は自然の恵みからだから作れないことはないけど、時間がかかるから、この世界に発酵を利用した食品があったら嬉しいな。
そう思ってヴィス君に聞いてみた。
「ヴィス君聞いてもいい?」
「もちろん。なんでも聞けよ」
「この世界に発酵食品ってある?お酒とか酢とか醤油とか味噌とかあると嬉しいんだけど」
「発酵……ショクヒン?発酵種ってのはあるけど、ショクヒンってやつはわかんないな」
「発酵種!もしかしてそれが発酵食品かも……。よかったら見たい」
発酵って言っているから、どんなものかわからないけど、これは期待できるぞ。
「発酵種を……見るのか?」
ヴィス君は嫌そうな顔で僕を見た。え、そんなに嫌なの?
「……ダメ?」
「うっ、そんな上目遣いで頼むとはルイ可愛すぎるな」
ヴィス君がチュッとしてきた。上目遣い?こっちの獣人さんはみんな背が高いから見上げるしかないんだよ。
側から見たら僕たち付き合ってるように見えるんじゃないかなと、ふと思ったけど深く考えないことにした。
「全然そんなつもりで見てないよ」
「可愛いからこれからも是非してくれ」
「……もうそれはいいから、発酵種は?だめなの?」
何を言っても僕の身長は伸びないので、見上げるのは仕方ないと諦めて見上げて話す。
「拗ねている顔もいいな。……ああ、発酵種か。発酵種は恐竜が俺らが住んでいる場所に入ってこないようにするための恐竜避けだ。発酵種はいくつか存在しているけど、恐竜はあの手の臭いが苦手みたいでな、潰して点々と置くだけで一ヶ月は効果がある」
「あ、ドンドさんが言ってた恐竜が嫌う植物って、発酵した植物なんだ」
情報が繋がって内心ワクワクする。
発酵種を持ってたら肉食恐竜も襲ってこないのかな?まぁ一人で森の奥に入る勇気はないけどね。
「俺たちは食用としては扱ってない。だからここには保管されてないんだ。見るとなると外に出るか、俺が取ってくるかだな」
「え、じゃあ僕は外に行って見てみたい!」
やっぱり新しい世界がどんな風に広がってるか気になる。発酵種もいくつかあるって言ってたから、どんなものか知りたいし、見てみたい。
「あっ、命はほしいから安全ならだけど」
命は大事。これ大切。
「発酵種辺りなら恐竜いないし、別に俺と一緒なら案内するぞ」
「いいの?やった!」
まだ昼食までには時間があるので、これから行くことになった。ヴィス君はなんと、金太郎みたいに大斧を背中に担いで、腰には編みかごをぶら下げている。
大斧は台所の包丁と同じ素材の黒い鋭利な石だ。包丁の切れ味がそのまま斧にも活かされているだろう。
うう、超物騒。怖い。全然安全そうじゃないよ?
僕の視線はヴィス君の背中でギラギラ光る黒石に囚われていたら、ヴィス君が近づいてきて、ちょっとしか晒されていない目尻にチュッとキスしてきた。
「これを使うことはほぼないから安心していいぞ。使う時はジッとして見ててくれたら俺が倒すから大丈夫だ」
「……っ」
頼りになる発言に、ちょっとかっこいいなとキュンとしてしまった僕。キスもちょっと嬉しく感じてしまっている僕はヤバい気がする。
この一日で僕はほだされちゃったのか?
いやいや、相手は熊さんで男の子!しっかりしろ僕!
自分の心に渇を入れてから、ヴィス君と一緒に森の方に歩いていった。
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