姉に巻き込まれて異世界転移〜ワガママ舌を満足させます〜

ぺんたまごん

文字の大きさ
23 / 36

23

しおりを挟む

 アンキロサウルスの巨大な肉の塊を前に、みんな塩漬けを作ろうとキッチンに集まる。

「今日と明日使う分以外は干し肉にしていいですか?」
「あら、ルイ君。干し肉も作れるの?」

 バイオレットさんがキョトンとした顔で問いかける。

「はい。皆さんもお肉塩辛いって感じてるって言ってたので、塩辛さが軽減する方法で作りたいなって思ってて」
「そんな方法があるの?それなら私も知りたいわ」
「量めちゃくちゃあるから手伝うよ」
「俺も」
「私も」

 みんなで干し肉を作ることになった。楽しみ。うまく教えれるように頑張るぞ。

 アンキロサウルスは鎧のような硬い皮膚の内側は豚肉のように脂肪が沢山ついていた。脂肪は水分を多く含んでいて、水分が多いと折角の干し肉が腐ってしまうから、干し肉用の肉は丁寧に脂肪を取っていく。

 取った脂は後でヴィス君が森に捨ててきてくれるって。ありがとう。

 半数で脂を削いでいる間に、残りの半数で海水をたっぷり持ってきてもらう。
 僕は肉削ぎ班。寒くなってきて湿度は体感的に低いと思うけど、早めに干し肉になってくれるように一センチぐらい薄く切る。肉が大きいからめちゃくちゃデカいステーキみたい。この黒石のおかげでスルスル切れるから助かった。

 大体肉が切れたら干し肉の下拵えの準備。近くに自生している生姜とニンニクをすり鉢でたっぷりすり潰していく。肉の臭み消しだ。

 海水に生姜とニンニクを入れて、薄切りした肉を入れる。これで一晩つけ、日陰に数日干してカチカチになったら干し肉一種類目が完成。

 季節が移り変わって湿度が下がったので、食糧保管庫で半年ぐらい保管できるだろう。
 でも万が一腐ったときが怖いので、塩分濃度を上げるために塩草でも作っておく。塩辛くならないように塩抜きはしたよ。

「塩抜きって工程をするといいんだな」
「水場の水は塩辛いところと辛くないところがあるが、塩辛い水はこうやって干し肉で使えるとは考えなかったな」

 みんな関心そうに干し肉作りを手伝ってくれたので、思いの外早く終わった。出来上がりが楽しみ。

 今日の夜は新鮮なお肉でお肉パーティーになった。
 主に干し肉を作る上で、脂身を取り除くのが難しい豚バラのような肉質の部位で作っていく。

 まず一品目は豚バラと白菜のトロトロ煮。塩コショウした豚肉を生姜油で炒めてそこに白菜を入れてサッと炒める。

 野菜のクズを煮て作った野菜スープであとはトロトロになるまでアクを取りながら煮たら完成。

 次はポークケチャップ。
 油で玉ねぎと豚コマを炒め、自家製ケチャップに砂糖草、自家製米酢、ニンニク、オレガノ、日本酒を入れてソースがトロトロととろみが出るまで焼いていく。塩コショウで味を整えて完成。
 んーいい匂い。トマトにニンニク、オレガノがいい役割をしている。

 次は塩角煮。
 豚バラを五センチ角に切っていって、底が広い鍋で焼け目をつける。豚バラがひたひたになるまで水を入れて、アクを取りながら三十分ほど弱火で煮ていく。
 水を捨てて、日本酒、ネギ、にんにく、生姜、水を入れて先程より長く茹でていく。あとは塩で味を整えたら完成。

 最後にハーブを使ったステーキ。
 これは数種類のハーブと塩をすり鉢でゴリゴリしてハーブソルトを作り、お肉にまぶしてちょっと寝かせて焼いたら完成。簡単だけどすごく美味しいよね。

 お肉が重たいので、玄米は味をつけずおにぎりにする。久しぶりの新鮮なお肉をみんなで集まって食べることになった。
 大きなお皿にドーンと持ったお肉達は良い香りを立てている。
 いただきますと手を合わせて、みんな勢いよく食べ始めた。

「美味ーい!」
「久しぶりのお肉だわ!」
「なんだこの味付け。めちゃくちゃ美味い!」

 みんな称賛してくれるが、特に旭とお姉ちゃんの喜び様が違った。
 だって異世界に来てからは、肉といったら干し肉の出汁のみ。塩辛くて、肉のスープしかお肉の美味さを感じれなかった。
 お肉の塊が美味しくてたまらなくて当然だ。

 お姉ちゃんは脂身が美味しいと恍惚とした表情で食べている。僕も久しぶりのお肉を口に運んだ。塩角煮がホロホロと口の中で崩れて美味しい。

「最近はぐれ恐竜が増えましたね」

 ラインさんが食べながらドンドさんに話しかけていた。少しトーンの落ちた声に思わず聞き耳を立てる。

「南での天災の影響だろうか?」

 南の天災?何が起きたんだろうと更に聞き耳を立てた。

「ここ最近、乾燥地帯の南でハリケーンが起きたと風の噂で聞いた。ハリケーンが起きるのは数十年ぶりだ。被害が大きければ、獣人が北上してくることもあるだろう……」

 ハリケーンと乾燥地帯と聞いて、僕は一つの懸念が頭をよぎったが、この世界の生態系を把握している訳ではないし、遠く離れた地のことは、僕にはどうこうする力はない。

「そうですね、まだこの辺りまで南の獣人達は避難してきていないのでなんとも言えませんが、どこかで生態系が崩れた可能性があると思います」

 ドンドさんはフム、と何かを考える動作をする。僕の隣にいるヴィス君もドンドさん達の会話に入っていった。

「ここら辺で卵を産む肉食恐竜がいるのも珍しかったもんな。確かに発酵種がない場所で、最近恐竜の痕跡がよく残ってる」
「そうだな……。私も別の群れに物々交換しに行くときにティラノサウルスがパラサウロロフスを捕食しているのを見かけた。何か起こっているんだろう」

 ティラノサウルスが近くに来ている!と好奇心がムクムク湧いてきて詳しく聞きたかったが、聞けるような雰囲気ではなかったので、僕はおにぎりをもぐもぐする。

 冬に向けて蓄えを多めにしておこうと話し合うドンドさん達を横に、僕は少し不安を覚えながら、食事を済ませたのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界でホワイトな飲食店経営を

視世陽木
ファンタジー
 定食屋チェーン店で雇われ店長をしていた飯田譲治(イイダ ジョウジ)は、気がついたら真っ白な世界に立っていた。  彼の最後の記憶は、連勤に連勤を重ねてふらふらになりながら帰宅し、赤信号に気づかずに道路に飛び出し、トラックに轢かれて亡くなったというもの。  彼が置かれた状況を説明するためにスタンバイしていた女神様を思いっきり無視しながら、1人考察を進める譲治。 しまいには女神様を泣かせてしまい、十分な説明もないままに異世界に転移させられてしまった!  ブラック企業で酷使されながら、それでも料理が大好きでいつかは自分の店を開きたいと夢見ていた彼は、はたして異世界でどんな生活を送るのか!?  異世界物のテンプレと超ご都合主義を盛り沢山に、ちょいちょい社会風刺を入れながらお送りする異世界定食屋経営物語。はたしてジョージはホワイトな飲食店を経営できるのか!? ● 異世界テンプレと超ご都合主義で話が進むので、苦手な方や飽きてきた方には合わないかもしれません。 ● かつて作者もブラック飲食店で店長をしていました。 ● 基本的にはおふざけ多め、たまにシリアス。 ● 残酷な描写や性的な描写はほとんどありませんが、後々死者は出ます。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

処理中です...