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しおりを挟むアンキロサウルスの巨大な肉の塊を前に、みんな塩漬けを作ろうとキッチンに集まる。
「今日と明日使う分以外は干し肉にしていいですか?」
「あら、ルイ君。干し肉も作れるの?」
バイオレットさんがキョトンとした顔で問いかける。
「はい。皆さんもお肉塩辛いって感じてるって言ってたので、塩辛さが軽減する方法で作りたいなって思ってて」
「そんな方法があるの?それなら私も知りたいわ」
「量めちゃくちゃあるから手伝うよ」
「俺も」
「私も」
みんなで干し肉を作ることになった。楽しみ。うまく教えれるように頑張るぞ。
アンキロサウルスは鎧のような硬い皮膚の内側は豚肉のように脂肪が沢山ついていた。脂肪は水分を多く含んでいて、水分が多いと折角の干し肉が腐ってしまうから、干し肉用の肉は丁寧に脂肪を取っていく。
取った脂は後でヴィス君が森に捨ててきてくれるって。ありがとう。
半数で脂を削いでいる間に、残りの半数で海水をたっぷり持ってきてもらう。
僕は肉削ぎ班。寒くなってきて湿度は体感的に低いと思うけど、早めに干し肉になってくれるように一センチぐらい薄く切る。肉が大きいからめちゃくちゃデカいステーキみたい。この黒石のおかげでスルスル切れるから助かった。
大体肉が切れたら干し肉の下拵えの準備。近くに自生している生姜とニンニクをすり鉢でたっぷりすり潰していく。肉の臭み消しだ。
海水に生姜とニンニクを入れて、薄切りした肉を入れる。これで一晩つけ、日陰に数日干してカチカチになったら干し肉一種類目が完成。
季節が移り変わって湿度が下がったので、食糧保管庫で半年ぐらい保管できるだろう。
でも万が一腐ったときが怖いので、塩分濃度を上げるために塩草でも作っておく。塩辛くならないように塩抜きはしたよ。
「塩抜きって工程をするといいんだな」
「水場の水は塩辛いところと辛くないところがあるが、塩辛い水はこうやって干し肉で使えるとは考えなかったな」
みんな関心そうに干し肉作りを手伝ってくれたので、思いの外早く終わった。出来上がりが楽しみ。
今日の夜は新鮮なお肉でお肉パーティーになった。
主に干し肉を作る上で、脂身を取り除くのが難しい豚バラのような肉質の部位で作っていく。
まず一品目は豚バラと白菜のトロトロ煮。塩コショウした豚肉を生姜油で炒めてそこに白菜を入れてサッと炒める。
野菜のクズを煮て作った野菜スープであとはトロトロになるまでアクを取りながら煮たら完成。
次はポークケチャップ。
油で玉ねぎと豚コマを炒め、自家製ケチャップに砂糖草、自家製米酢、ニンニク、オレガノ、日本酒を入れてソースがトロトロととろみが出るまで焼いていく。塩コショウで味を整えて完成。
んーいい匂い。トマトにニンニク、オレガノがいい役割をしている。
次は塩角煮。
豚バラを五センチ角に切っていって、底が広い鍋で焼け目をつける。豚バラがひたひたになるまで水を入れて、アクを取りながら三十分ほど弱火で煮ていく。
水を捨てて、日本酒、ネギ、にんにく、生姜、水を入れて先程より長く茹でていく。あとは塩で味を整えたら完成。
最後にハーブを使ったステーキ。
これは数種類のハーブと塩をすり鉢でゴリゴリしてハーブソルトを作り、お肉にまぶしてちょっと寝かせて焼いたら完成。簡単だけどすごく美味しいよね。
お肉が重たいので、玄米は味をつけずおにぎりにする。久しぶりの新鮮なお肉をみんなで集まって食べることになった。
大きなお皿にドーンと持ったお肉達は良い香りを立てている。
いただきますと手を合わせて、みんな勢いよく食べ始めた。
「美味ーい!」
「久しぶりのお肉だわ!」
「なんだこの味付け。めちゃくちゃ美味い!」
みんな称賛してくれるが、特に旭とお姉ちゃんの喜び様が違った。
だって異世界に来てからは、肉といったら干し肉の出汁のみ。塩辛くて、肉のスープしかお肉の美味さを感じれなかった。
お肉の塊が美味しくてたまらなくて当然だ。
お姉ちゃんは脂身が美味しいと恍惚とした表情で食べている。僕も久しぶりのお肉を口に運んだ。塩角煮がホロホロと口の中で崩れて美味しい。
「最近はぐれ恐竜が増えましたね」
ラインさんが食べながらドンドさんに話しかけていた。少しトーンの落ちた声に思わず聞き耳を立てる。
「南での天災の影響だろうか?」
南の天災?何が起きたんだろうと更に聞き耳を立てた。
「ここ最近、乾燥地帯の南でハリケーンが起きたと風の噂で聞いた。ハリケーンが起きるのは数十年ぶりだ。被害が大きければ、獣人が北上してくることもあるだろう……」
ハリケーンと乾燥地帯と聞いて、僕は一つの懸念が頭をよぎったが、この世界の生態系を把握している訳ではないし、遠く離れた地のことは、僕にはどうこうする力はない。
「そうですね、まだこの辺りまで南の獣人達は避難してきていないのでなんとも言えませんが、どこかで生態系が崩れた可能性があると思います」
ドンドさんはフム、と何かを考える動作をする。僕の隣にいるヴィス君もドンドさん達の会話に入っていった。
「ここら辺で卵を産む肉食恐竜がいるのも珍しかったもんな。確かに発酵種がない場所で、最近恐竜の痕跡がよく残ってる」
「そうだな……。私も別の群れに物々交換しに行くときにティラノサウルスがパラサウロロフスを捕食しているのを見かけた。何か起こっているんだろう」
ティラノサウルスが近くに来ている!と好奇心がムクムク湧いてきて詳しく聞きたかったが、聞けるような雰囲気ではなかったので、僕はおにぎりをもぐもぐする。
冬に向けて蓄えを多めにしておこうと話し合うドンドさん達を横に、僕は少し不安を覚えながら、食事を済ませたのだった。
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