姉に巻き込まれて異世界転移〜ワガママ舌を満足させます〜

ぺんたまごん

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 昼間も本格的に寒くなり、冬の到来を予期する頃。
 旭とお姉ちゃんと外で鬼ごっこをしていると、お姉ちゃんがピタリと走るのをやめて、鼻をヒクヒクさせた。

「お姉ちゃんどうしたの?」
「……これは。多分、血の匂いだわ」
「えっ!」

 驚いていると、森の方からヴィス君がとうとう怪我をして帰ってきてしまった。

「ヴィス君……!」

 慌てて駆け寄ると、いつものように「ただいま」と言ってくれる顔が少し苦しそうに歪む。

 ヴィス君の左肩は服が破けて、銀色の毛が血でベットリと濡れていた。
 そしてヴィス君の反対側の肩には、ライオンだと思われる獣人さんが肩を借りて歩いている。ライオン獣人さんも負傷しており、右顔面に大きな斜めの爪痕と左脚から血を流していた。見るからどちらも重症だ。

「私ドンド呼んでくる!旭はここにいなさい!」
「う、うん」

 一緒にいたお姉ちゃんがシュっとドンドさんを呼びに行った。旭は怖がりながらもしっかりと頷く。
 僕は常に備えていた腰袋から、乾燥してすり潰した傷薬と小さなすり鉢を取り出した。

「ルイ、その傷薬はこちらのパピジェットさんに先に使ってくれ」
「え!で、でも……」

 僕はライオンさんには悪いが、一番ヴィス君に使いたかった。それをヴィス君もわかっていたようで、僕にわかるように教えてくれる。

「俺の傷はそんなに深くない。それよりもパピジェットさんは南の方から長く歩いてきた。長旅で体力を削られた状態で深く傷を負っているから、処置は早い方がいい」
「う、うん。わかった」

 ヴィス君の言葉通りにライオンさん獣人、パピジェットさんの手当てを優先して行う。
 ヴィス君がパピジェットさんを座らせてくれたので、僕も近くで作業した。

 旭の水分補給で持ってきていた細瓶の水を少しすり鉢に垂らして、傷薬と一緒に混ぜ合わせるとペースト状の傷薬が出来た。パピジェットさんは長ズボンだったので、長ズボンを何とか手で割いて、まず細瓶の水で傷口を流していく。

 傷は左脚を大きく噛まれ、その部分は肉が深く抉れていたので見るからに痛そうだ。
 水が沁みて痛いんだろう。後でサールさんに痛み止めを用意してもらうように言おう。
 土や草などの表面の汚れが落ちて、傷口が綺麗になったら傷薬を塗っていく。

「……自己の群れの者より、他の群れの手当てを優先させてしまいすまない。恩に着る」

 パピジェットさんが辛そうに声を出した。

「喋ると痛いんですよね?気にしないでください。脚が終わったら顔の傷も手当てしますから」
「恩に着る……」

 痛々しい傷口を目にしていると、怪我をしていない僕も胸がズキズキしてくる。パピジェットさんの怪我ちゃんと良くなりますように。ああ、早くヴィス君の手当てもしてあげたい。

「次は顔を手当てしますね。えっと……ねぇヴィス君、目は傷薬塗っていいのかな?」
「目は避けて塗ってくれるか」
「わかった」

 手早く、でも丁寧に傷薬を塗っていく。
 パピジェットさんの顔の処置をしているとドンドさん、バイオレットさん、サールさん、お姉ちゃんが駆け寄ってきた。

「薬一式持ってきましたよ」

 サールさんが紐で連なった小瓶を地面に並べる。僕はホッとした。

「サールさん、こちらのパピジェットさんは傷薬を塗りました。ヴィス君の手当てがまだなんです」
「わかった。おいヴィス坊、ちょっと沁みるぞ」
「ああ」

 ヴィス君の治療をサールさんがし始めてくれたので、僕は落ち着いた気持ちでパピジェットさんの傷に丁寧に薬を塗り付けた。

 サールさんがヴィス君とパピジェットさんに痛み止め草を煎じて飲ませる。
 そして治療がひと段落すると、みんなで来賓室でパピジェットさんの話を聞くことになった。

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