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しおりを挟むパピジェットさんはまだ痛みも残っている中、自身に起きたことを話してくれた。その話はこの島に起きた驚愕な事実だった。
パピジェットさん達が住む場所は最南端で乾燥地帯の近くにある森林。
ある夏の終わり頃、大きなハリケーンが起き、風と雨により草木が倒れ、物が飛んでいったりする被害が出た。
だが獣人達は岩を拠点にしているので、住む場所には被害は及ばず、大事には及ぶことなかった。
逆にハリケーンの雨により、乾燥地帯には草が生えてきて緑が茂ったそうだ。だがその辺りから異変が起きたと言う。
「乾燥地帯に生息しているバッタがいるんだが、そのバッタは普段そんなに多くない。しかし、乾燥地帯に草茂ってきたかと喜んでいると、餌が豊富になったからか、そのバッタが群れで見ることが増えていった」
パピジェットさんの話で、僕は一つの可能性を思い出した。
乾燥地域でのハリケーン。ハリケーンによる沢山の雨。草が生えたことにより、バッタの増加が発生する……。
「それからだ。バッタが異常に繁殖を始め、気づいた時には大群になっていた。大群になったバッタは乾燥地帯に茂った、折角の草を瞬く間に食い尽くした。それから風に乗って至る所に移動し、移動した先で草木を残すことなく食していった。青々とした森から枝しか残らない森に変化した時は、己の目を疑うほどの光景だった」
「なんと……」
ドンドさんを始め、みんな顔を青くしてパピジェットさんの話に耳を傾けた。僕は話を聞くにつれ、可能性を確信に変えていく。
「バッタが草木を食べ尽くすため、まず草食獣人は北上していった。そして草食恐竜も餌にありつけずに死に絶え、生き残ったものは北上していき、我ら肉食獣人も北上しに旅に出た。つられるように肉食恐竜もバッタも移動するから、旅は過酷なものだった」
途中で幾多もの獣人が死んでいったと悲痛な表情で言うパピジェットさん。
日本にいるときよりもこちらの世界は死が近く、そういう世界に来たんだと改めて怖くなった。
「ではバッタはもうこの近くに来ているのか?」
ドンドさんが直球で聞いてくる。恐れる質問にパピジェットさんはフルフルと頭を横に振った。
「いや、原因はわからないが、季節が移り変わり寒くなるとバッタの動きは鈍くなり、動かなくなった。小型の肉食恐竜が動かなくなったバッタを食べてくれて少しずつ数を減らしている状態だ。ここから三日ほど歩いた場所にバッタは至る所の木に留まっている。あの様子なら多分こちらに来ない」
「そうですか……」
皆はホッと息を吐いた。
でも確信を持てないので不安は残っているようだ。
「駆除しに行ったがいいのではないか?」
「バッタの駆除か?だが肉食恐竜が食べてもスゴい数だぞ。森一帯がバッタになるぐらいの量だ」
「……想像しただけでおぞましいわ」
パピジェットさんの答えにバイオレットさんはふるふると身体を震わせた。
「過去にもこんなことがあったりしたのか?ハリケーンがくるのはなかなかないが、今後またハリケーンが原因でバッタが大量発生したときは大変なんじゃないか?」
「そうだな……。とりあえず今のバッタをどうにかしないと」
「ああ、そうだな……」
だがパピジェットさんによると、過去に天災により生態系が崩れたことは何度かあるが、バッタにより森が消えたとは聞いたことがないとのことだった。
バッタごと森を焼く、袋に地道にバッタを捕まえると言ったアイデアが出るが、森を焼けば木が生えてくるまで何十年もかかるし、袋も一から作らなければいけないので時間がない。どうしたものかと皆頭を悩ました。
僕が懸念している情報は、実際に見たこともなければ、ネットでの情報だ。
この世界は日本と似た環境と言ったって、恐竜がいたり、虫が大きかったりと違う生態系がある。僕の中途半端な考えを言っていいのか悩んだが、一つの意見として参考にしてもらえばと口を開いた。
「すみません。ちょっと僕が話していいですか?」
「どうしたルイ君」
みんなの視線が僕に集まる。
「僕の住んでいた地球でも、似たようなバッタがいたんです。それはサバクトビバッタと言います。こちらのバッタも地球でのバッタも実際に見たことがないので、確証はないんですが、状況がよく似ているので一意見として参考にしてください」
みんなが僅かばかりの希望を目に宿した。
「話してみてくれ」
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