三毛猫、公爵令嬢を拾う。

蒼依月

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第2章

2-32

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 1週間後、ルーカスの姿は王城にあった。3大貴族会議が開かれた後ルーカスはすぐに王に謁見を申し込み、指定された日付が今日だった。
 通された謁見の間で、ルーカスは恭しく首を垂れる。

「面を上げよ」
「は」

 王が話を切り出す。

「して、何の用かな、ルーカス」
「はっ。発言を許可していただきありがとうございます。実は、私の大事な娘が誘拐されまして」
「ほう?」

 王は片眉を上げる。長い顎髭をしきりに触りながら、先を促した。

「ずっと我がネイティア家で捜索をしておりましたが、娘の足取は一向につかめておりません。先日、ハリス・ラングレーとクラリス・リビオラに捜索の協力をお願いしたのですが、叶わず。こうして王である貴方様にお願いをしに参った次第でございます」
「なるほど?」
「王よ。何卒ご協力のほど、お願いしたく」
「ふむ」

 王は終始厳しい表情だ。普段は温厚な性格故微笑むことが多い彼にしては、珍しかった。

「だがな、こちらも他に重要な件を抱えていてな。裏切者の処理をしている最中なのだ。すまんが今回は協力は出来ん」
「王よ!そこをなんとか!もう2ヶ月も行方不明なのです。私は連日夜も眠れず」
「ならば何故もっと早く動かなかった?ラングレーやリビオラの当主もそれが気に食わなかったのではないのか?」
「それは」
「ルーカス。お前のその誇り高い志は認める。だが、それは本当に必要なものなのか?」

 ルーカスは首を傾げた。

「申し訳ございません。それはどういう意味で?」
「わしの言いたいことが本当に分からないのか?」
「え?」

 ルーカスは背に汗をかいた。

(なんだ?王の様子がおかしい。妙に苛ついているような)

 王はおもむろに立ち上がって、ルーカスを睨みつけた。

「この話はここまでだ。協力は出来ない。帰りたまえ」
「お待ちください!」

 王が呆れ顔で振り返る。

「なんだ」
「では、では捜査の拡大の許可をいただけませんか!?国中に娘の肖像画を張り、捜査情報の公開をしたく存じます!」
「勝手にしろ」
「ありがとうございます」

 それでもルーカスはどこか不満そうだ。王が全く話を聞こうとしない態度に、彼は内心腹を立てていた。

「ルーカスよ」
「は」
「いや、何でもない」

 王は最後まで固い表情を崩すことは無かった。
 王の退室後、ルーカスは騎士に連れられて、速やかに部屋を出た。その間も、ルーカスは王の言動を思い返す。

(本当に分からないとはなんだ?もしや王まで私を人間の親として失格だと言いたいのか?それとも、密輸のことが……)

 ルーカスは悪い予感をかぶりを振って払う。

(そんなはずはない。バレないように慎重に行っているんだ。見つかるはずもない。だが、だとしたら裏切者というのは一体……?)

 屋敷に戻ったルーカスは、すぐにルネの肖像画を転写したビラを大量に作成、街中にばらまくよう命令を下した。
 
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