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第3章
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「ミカエル様は何も悪くありませんわ。私が勝手に一人で突っ走ってしまったのです。それに、ミカエル様は私をこうして助けてくださいました。やっぱり、ミカエル様は頼もしいですわね」
屈託のない笑みで言われては何も言い返せない。ミカエルは口をつぐんだ。
2人のほんわかした雰囲気をぶち壊すように、砂蛸がミカエルの保護魔法の結界に向けて攻撃をしてきた。上下に地面が揺れる。ミカエルはルネを庇い頭上の砂蛸の吸盤を見やった。何もない。コアはまた別の足にあるようだ。
ミカエルは何かを考えるように指を緩く曲げて顎にあてた。
「ルネ。しばらくこの結界の中にいよう」
「え?それはどうして」
「砂蛸はこの結界に向けて攻撃を仕向けてくる。そしてあの大きな足が結界を叩きつける瞬間、真下のこの中からなら、コアの場所を簡単に見つけることが出来るかもしれない」
「確かに。さすがですわミカエル様!」
「これなら、私も安全だし君が無茶をすることもない」
「う。はい……」
そうして話をしていると、さらに砂蛸の足が頭上に振ってきた。今回もはずれだ。足には大きな吸盤しかない。
もう一度、足を叩きつけられる。コアは見つからない。そうして何度か2人で叩きつけられる砂蛸の足の吸盤を見つめていた時、ミカエルの耳が察知した。
(今叩きつけられた時、音が微かに違ったような)
「ミカエル様!あれ!」
ルネが指さした方角を見ると、大きく振り上げられた足の付け根の辺りに、光るものが見えた。コアだ。白い色をした大きな球体が、吸盤に紛れて足に埋まっている。
「よくやったルネ!」
ミカエルはそう言うと、手のひらに短剣を召喚した。それを目にもとまらぬ速さでコアのある足に目掛けて投げると、短剣は吸い込まれるようにコアが埋め込まれた足に刺さった。
「今だ!ルネ、風魔法で奴を吹き飛ばせ!」
「はい!」
ルネは羽扇に魔力を注ぎ込み、一気にそれを振り下ろした。そこから繰り出された爆風が砂蛸を下から突き上げた。砂蛸は鳴きながら空中に浮かび、その瞬間ミカエルが結界の中から飛び出す。吹き飛ばされひっくり返った砂蛸より高い空中に留まると、ミカエルは先程投げた短剣を目印に、一気に下降した。
まずは一撃、重力に任せて蹴りを入れる。砂蛸が地面にめり込んだ瞬間に鉤爪で十字に斬撃を打ち込んだ。でもまだコアは壊れない。砂蛸が咆哮してミカエルを竜巻が襲う。それを避けようと手を顔の前に構えた時、ミカエルの横を白い光を伴った旋風が3つ駆け抜け竜巻を霧散させた。
ルネの風魔法だ。振り返るとルネが真剣な表情で結界の中で羽扇を構えている。
ミカエルは場違いにも、口の端をつり上げてしまった。
「全く。成長著しいな。私の花は」
ミカエルは高く飛び上がって、もう一度コアに蹴りを叩き込んだ。衝撃でうねった足の上にミカエルが降り立ち、コアに向けて走る。
ミカエルの双眸に、コアが映る。ヒビが無数に入っていてもう少しで壊れそうだ。
「あと一撃で、確実に壊す」
鉤爪に魔力を流し込む。翠色の光が一層強く鉤爪を覆った。
ミカエルが鉤爪を振り上げると同時、うねる蛸足がミカエルを再び空中に飛び上がらせた。だがミカエルは動揺を表さない。そのまま宙で体勢をたて直し、鉤爪の爪先を砂蛸の方に向け、顔の前で交差させて一気にコアに向けて落ちていった。砂蛸に接触する直前、ミカエルは鉤爪を強く握り直し、思い切り腕を引き広げた。
ギィィンという硬い鉱物同士がぶつかり合う音がした後、砂蛸のコアがゆっくりと割れ目を深くしていき、最後には飴玉が噛み砕かれるようにして割れた。
同時に、砂蛸が消えていく。
吹き荒れていた砂塵は、いつの間にか止んでいた。
広場に嵐が去った後の静けさが訪れる。その中で一つ、ミカエルに近づく足音があった。
「ミカエル様ぁっ!」
ルネはミカエルの背後にがばっと飛び乗った。首に腕を回し後ろから頬擦りする。
「ミカエル様!凄いですわ!やりましたわ!あんなに大きな砂蛸を倒すなんて!」
ミカエルはルネのあまりの高揚具合に驚いた。今まで彼女がこんなにも感情を表に出したことがあっただろうか。
ミカエルはふっと微笑んでルネを振り返った。彼女の表情は、花も及ばぬ美しい笑顔だった。
「私だけではない。君の魔法もあったからこそ出来たんだ。2人で、成し遂げたんだよ」
「2人で……っ、はい!」
ミカエルはルネを抱き上げ、その場でくるくると回ってみせた。ルネは驚きながらも、その青いアネモネのような双眸を喜びの色に染めて、ミカエルを抱き締め返した。
屈託のない笑みで言われては何も言い返せない。ミカエルは口をつぐんだ。
2人のほんわかした雰囲気をぶち壊すように、砂蛸がミカエルの保護魔法の結界に向けて攻撃をしてきた。上下に地面が揺れる。ミカエルはルネを庇い頭上の砂蛸の吸盤を見やった。何もない。コアはまた別の足にあるようだ。
ミカエルは何かを考えるように指を緩く曲げて顎にあてた。
「ルネ。しばらくこの結界の中にいよう」
「え?それはどうして」
「砂蛸はこの結界に向けて攻撃を仕向けてくる。そしてあの大きな足が結界を叩きつける瞬間、真下のこの中からなら、コアの場所を簡単に見つけることが出来るかもしれない」
「確かに。さすがですわミカエル様!」
「これなら、私も安全だし君が無茶をすることもない」
「う。はい……」
そうして話をしていると、さらに砂蛸の足が頭上に振ってきた。今回もはずれだ。足には大きな吸盤しかない。
もう一度、足を叩きつけられる。コアは見つからない。そうして何度か2人で叩きつけられる砂蛸の足の吸盤を見つめていた時、ミカエルの耳が察知した。
(今叩きつけられた時、音が微かに違ったような)
「ミカエル様!あれ!」
ルネが指さした方角を見ると、大きく振り上げられた足の付け根の辺りに、光るものが見えた。コアだ。白い色をした大きな球体が、吸盤に紛れて足に埋まっている。
「よくやったルネ!」
ミカエルはそう言うと、手のひらに短剣を召喚した。それを目にもとまらぬ速さでコアのある足に目掛けて投げると、短剣は吸い込まれるようにコアが埋め込まれた足に刺さった。
「今だ!ルネ、風魔法で奴を吹き飛ばせ!」
「はい!」
ルネは羽扇に魔力を注ぎ込み、一気にそれを振り下ろした。そこから繰り出された爆風が砂蛸を下から突き上げた。砂蛸は鳴きながら空中に浮かび、その瞬間ミカエルが結界の中から飛び出す。吹き飛ばされひっくり返った砂蛸より高い空中に留まると、ミカエルは先程投げた短剣を目印に、一気に下降した。
まずは一撃、重力に任せて蹴りを入れる。砂蛸が地面にめり込んだ瞬間に鉤爪で十字に斬撃を打ち込んだ。でもまだコアは壊れない。砂蛸が咆哮してミカエルを竜巻が襲う。それを避けようと手を顔の前に構えた時、ミカエルの横を白い光を伴った旋風が3つ駆け抜け竜巻を霧散させた。
ルネの風魔法だ。振り返るとルネが真剣な表情で結界の中で羽扇を構えている。
ミカエルは場違いにも、口の端をつり上げてしまった。
「全く。成長著しいな。私の花は」
ミカエルは高く飛び上がって、もう一度コアに蹴りを叩き込んだ。衝撃でうねった足の上にミカエルが降り立ち、コアに向けて走る。
ミカエルの双眸に、コアが映る。ヒビが無数に入っていてもう少しで壊れそうだ。
「あと一撃で、確実に壊す」
鉤爪に魔力を流し込む。翠色の光が一層強く鉤爪を覆った。
ミカエルが鉤爪を振り上げると同時、うねる蛸足がミカエルを再び空中に飛び上がらせた。だがミカエルは動揺を表さない。そのまま宙で体勢をたて直し、鉤爪の爪先を砂蛸の方に向け、顔の前で交差させて一気にコアに向けて落ちていった。砂蛸に接触する直前、ミカエルは鉤爪を強く握り直し、思い切り腕を引き広げた。
ギィィンという硬い鉱物同士がぶつかり合う音がした後、砂蛸のコアがゆっくりと割れ目を深くしていき、最後には飴玉が噛み砕かれるようにして割れた。
同時に、砂蛸が消えていく。
吹き荒れていた砂塵は、いつの間にか止んでいた。
広場に嵐が去った後の静けさが訪れる。その中で一つ、ミカエルに近づく足音があった。
「ミカエル様ぁっ!」
ルネはミカエルの背後にがばっと飛び乗った。首に腕を回し後ろから頬擦りする。
「ミカエル様!凄いですわ!やりましたわ!あんなに大きな砂蛸を倒すなんて!」
ミカエルはルネのあまりの高揚具合に驚いた。今まで彼女がこんなにも感情を表に出したことがあっただろうか。
ミカエルはふっと微笑んでルネを振り返った。彼女の表情は、花も及ばぬ美しい笑顔だった。
「私だけではない。君の魔法もあったからこそ出来たんだ。2人で、成し遂げたんだよ」
「2人で……っ、はい!」
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