13 / 44
第一章 帝国脱出
『第十二話 脱出への戦い(Ⅰ)』
しおりを挟む
あれから姉妹での話し合いはヒートアップした。
四ヶ月くらいも姉妹間で話していなかったらしく、その期間を埋めるかのように笑い合う。
俺たちも頬を緩めるしかない。
翌朝、改めて協力を申し出て承諾されたため、俺たちの馬車に乗って門へと向かっていく。
「ここからは気を引き締めねばな。いつ敵が来るか分からん」
「そうですね。不意打ちは最も避けるべき事態です」
ダイマスがべネック団長とともに御者席へと向かい、辺りを警戒し始めた。
俺とアリアも横や後ろをチェックする。
武器を手入れしていたイリナが立ち上がり、御者席にいるべネック団長に近づいた。
「磨いておきました。切れ味が良くなっているはずですよ」
「予備用の剣がこんなに綺麗になるのか。普段から手入れをしているのか?」
「ええ。いざという時には命に関わりますから」
敵を斬ったのにも関わらず軽傷であれば、返り討ちに遭う可能性も出てきてしまう。
ゆえに武器の手入れは大切。
ギルドでも散々聞かされてきた内容だったため、特に驚きはなかった。
「主武器も磨いてくれないか? イリナが磨いた剣は切れ味が良すぎるからな」
「わっ……硬いはずの木が簡単に真っ二つに……」
アリアが瞠目する。
視線を辿ってみると、木の枝らしきものが真っ二つに切断されていた。
しかも刃こぼれをしている様子もない。
感心していると、後方を警戒していたアリアと前方を警戒していたダイマスが同時に声を上げた。
「「敵襲です!」」
「挟み撃ちか。アリア、敵はどこの組織の者か分かるか? 前方の敵は恐らく騎士団だろう」
べネック団長が緊迫した声で尋ねた。
先ほどから一言も喋っていないデールさんも、顔が強張っているように思える。
「多分ギルド所属の冒険者です。みんなペンダントを持っていますし」
「間違いないですね。先頭で馬に乗っている男がいますが、彼がギルドマスターです!」
胸元で虹色に光るペンダント。
色によってランクが分かるようになっており、Sランクだった俺は金色だった。
虹色はSSランクのギルドマスターしかつけられないため、本人で間違いないだろう。
「前を突破した方が早いか。デールは絶対に馬車を止めるなっ!」
「分かっています。敵の殲滅は任せました」
デールさんの返事を聞くが早いか、べネック団長がスタッフを取り出した。
隣ではダイマスが剣を構えている。
「デールの指示で攻撃するぞ。闇の精霊よ、我に力を。【ダーク・スラッシュ・ツイン】」
「はい。氷の精霊よ、僕に力を貸して。【アイス・ソード】」
べネック団長は闇の精霊の力を借りて、漆黒の刃を二つ作っている。
一方のダイマスは氷で剣を作成した。
「そろそろ準備しておいてくださいよ。――今です!」
「「斬撃、発射!」」
指示の声で二人が一気に攻撃の技を発射すると、敵が次々と薙ぎ倒されていく。
混乱する敵兵の中を颯爽と馬車が駆け抜けた。
後ろを確認してみれば、ギルドマスターたちが敵兵と間違えられて攻撃を受けている。
あれは……騎士団の連中だから追っ手同士が戦っているのか。
しばらく時間は稼げそうだ。
「後方でギルドマスターたちが不測の事態により停止。今のうちに距離を!」
「分かった。馬には無茶をさせることになるが……行こう!」
距離を稼ぎたい気持ちはみんな同じだな。
馬車のスピードがさらに上昇し、周りの景色が物凄いスピードで流れていく。
「このままのペースで進めば、あと五分程度で門に着きます!」
「武器が磨き終わりました。受け取って下さい!」
危険な状態を抜け出すにはベネック騎士団長の力が必要だと考えたのだろう。
ベネック騎士団長も受け取って白銀の刀身を晒した。
「ここから裏道を進んでいきます。多分この国でも知っている人は少ないと思います」
「何でそんな道を知っているのかは聞かないでおこうかな」
無表情で馬車を動かすデールさんさんをジト目で見つめるダイマス。
馬車は大きく右方向に旋回し、乱立する木々の間を抜けて草原の中を疾走していく。
「周りから丸見えではないか。弓や魔法で攻撃を受けたら危ないんじゃないか?」
「今のところ怪しい気配はないですね。気配を消していれば別ですが」
「そんなことが出来るのか?」
「ギルドマスターの腹心であるマルティークという副ギルドマスターが能力持ちです」
【気配消去】という能力だ。
名前の通りに、自分の気配を消して行動できることから暗殺向けの能力と言われる。
俺の察知能力では気配を消したマルティークを見つけることは出来ない。
「副ギルドマスターということは、今回の冤罪騒動に一枚噛んでいると考えていいな」
「そうですね。厄介な相手です」
べネック団長が顔を歪めたその時、後方から飛来した矢がアリアの足元に刺さる。
アリアは小さく悲鳴を上げて蹲った。
「キャアアア!」
「矢じりに彫ってある紋章はギルドのものだ。恐らくはマルティークがどこかにいます!」
みんなに危険を知らせつつ周囲を確認した。
すると、脇にある森林の中から疾走するような音が響いてくることに気づく。
でも……尋常な速さじゃないのだが。
「右手にある森林から音が聞こえてきます。ただ……速さが尋常ではありません」
「馬車よりも早いということは魔道具ですかね?」
先端が妙な色をしている矢を怯えたような目で見つめながら、アリアが呟いた。
毒でも塗ってあるのだろうか。
首を傾げた時、御者席で警戒していたダイマスが悲鳴に近い声を上げる。
「前方に敵五百。先頭は――ギルドマスターだっ!」
「何だと!? 裏ルートを通って来たということはここにいる人しか分からないはず……」
べネック団長も驚きを隠しきれていない。
俺はゆっくりと御者席に移動すると、剣を構えながらギルドマスターに向かい合う。
彼の胸元で光る虹色のペンダントが今は憎らしい。
「久しぶりですね。ギルドマスター」
「ああ、信じていたお前と剣を交わらせなきゃいけないことを残念に思うよ」
ギルドマスターはそう言って肩を竦めた。
俺たちが隣国に入るまで……あと二時間。
四ヶ月くらいも姉妹間で話していなかったらしく、その期間を埋めるかのように笑い合う。
俺たちも頬を緩めるしかない。
翌朝、改めて協力を申し出て承諾されたため、俺たちの馬車に乗って門へと向かっていく。
「ここからは気を引き締めねばな。いつ敵が来るか分からん」
「そうですね。不意打ちは最も避けるべき事態です」
ダイマスがべネック団長とともに御者席へと向かい、辺りを警戒し始めた。
俺とアリアも横や後ろをチェックする。
武器を手入れしていたイリナが立ち上がり、御者席にいるべネック団長に近づいた。
「磨いておきました。切れ味が良くなっているはずですよ」
「予備用の剣がこんなに綺麗になるのか。普段から手入れをしているのか?」
「ええ。いざという時には命に関わりますから」
敵を斬ったのにも関わらず軽傷であれば、返り討ちに遭う可能性も出てきてしまう。
ゆえに武器の手入れは大切。
ギルドでも散々聞かされてきた内容だったため、特に驚きはなかった。
「主武器も磨いてくれないか? イリナが磨いた剣は切れ味が良すぎるからな」
「わっ……硬いはずの木が簡単に真っ二つに……」
アリアが瞠目する。
視線を辿ってみると、木の枝らしきものが真っ二つに切断されていた。
しかも刃こぼれをしている様子もない。
感心していると、後方を警戒していたアリアと前方を警戒していたダイマスが同時に声を上げた。
「「敵襲です!」」
「挟み撃ちか。アリア、敵はどこの組織の者か分かるか? 前方の敵は恐らく騎士団だろう」
べネック団長が緊迫した声で尋ねた。
先ほどから一言も喋っていないデールさんも、顔が強張っているように思える。
「多分ギルド所属の冒険者です。みんなペンダントを持っていますし」
「間違いないですね。先頭で馬に乗っている男がいますが、彼がギルドマスターです!」
胸元で虹色に光るペンダント。
色によってランクが分かるようになっており、Sランクだった俺は金色だった。
虹色はSSランクのギルドマスターしかつけられないため、本人で間違いないだろう。
「前を突破した方が早いか。デールは絶対に馬車を止めるなっ!」
「分かっています。敵の殲滅は任せました」
デールさんの返事を聞くが早いか、べネック団長がスタッフを取り出した。
隣ではダイマスが剣を構えている。
「デールの指示で攻撃するぞ。闇の精霊よ、我に力を。【ダーク・スラッシュ・ツイン】」
「はい。氷の精霊よ、僕に力を貸して。【アイス・ソード】」
べネック団長は闇の精霊の力を借りて、漆黒の刃を二つ作っている。
一方のダイマスは氷で剣を作成した。
「そろそろ準備しておいてくださいよ。――今です!」
「「斬撃、発射!」」
指示の声で二人が一気に攻撃の技を発射すると、敵が次々と薙ぎ倒されていく。
混乱する敵兵の中を颯爽と馬車が駆け抜けた。
後ろを確認してみれば、ギルドマスターたちが敵兵と間違えられて攻撃を受けている。
あれは……騎士団の連中だから追っ手同士が戦っているのか。
しばらく時間は稼げそうだ。
「後方でギルドマスターたちが不測の事態により停止。今のうちに距離を!」
「分かった。馬には無茶をさせることになるが……行こう!」
距離を稼ぎたい気持ちはみんな同じだな。
馬車のスピードがさらに上昇し、周りの景色が物凄いスピードで流れていく。
「このままのペースで進めば、あと五分程度で門に着きます!」
「武器が磨き終わりました。受け取って下さい!」
危険な状態を抜け出すにはベネック騎士団長の力が必要だと考えたのだろう。
ベネック騎士団長も受け取って白銀の刀身を晒した。
「ここから裏道を進んでいきます。多分この国でも知っている人は少ないと思います」
「何でそんな道を知っているのかは聞かないでおこうかな」
無表情で馬車を動かすデールさんさんをジト目で見つめるダイマス。
馬車は大きく右方向に旋回し、乱立する木々の間を抜けて草原の中を疾走していく。
「周りから丸見えではないか。弓や魔法で攻撃を受けたら危ないんじゃないか?」
「今のところ怪しい気配はないですね。気配を消していれば別ですが」
「そんなことが出来るのか?」
「ギルドマスターの腹心であるマルティークという副ギルドマスターが能力持ちです」
【気配消去】という能力だ。
名前の通りに、自分の気配を消して行動できることから暗殺向けの能力と言われる。
俺の察知能力では気配を消したマルティークを見つけることは出来ない。
「副ギルドマスターということは、今回の冤罪騒動に一枚噛んでいると考えていいな」
「そうですね。厄介な相手です」
べネック団長が顔を歪めたその時、後方から飛来した矢がアリアの足元に刺さる。
アリアは小さく悲鳴を上げて蹲った。
「キャアアア!」
「矢じりに彫ってある紋章はギルドのものだ。恐らくはマルティークがどこかにいます!」
みんなに危険を知らせつつ周囲を確認した。
すると、脇にある森林の中から疾走するような音が響いてくることに気づく。
でも……尋常な速さじゃないのだが。
「右手にある森林から音が聞こえてきます。ただ……速さが尋常ではありません」
「馬車よりも早いということは魔道具ですかね?」
先端が妙な色をしている矢を怯えたような目で見つめながら、アリアが呟いた。
毒でも塗ってあるのだろうか。
首を傾げた時、御者席で警戒していたダイマスが悲鳴に近い声を上げる。
「前方に敵五百。先頭は――ギルドマスターだっ!」
「何だと!? 裏ルートを通って来たということはここにいる人しか分からないはず……」
べネック団長も驚きを隠しきれていない。
俺はゆっくりと御者席に移動すると、剣を構えながらギルドマスターに向かい合う。
彼の胸元で光る虹色のペンダントが今は憎らしい。
「久しぶりですね。ギルドマスター」
「ああ、信じていたお前と剣を交わらせなきゃいけないことを残念に思うよ」
ギルドマスターはそう言って肩を竦めた。
俺たちが隣国に入るまで……あと二時間。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。
再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。
妻を一途に想い続ける夫と、
その想いを一ミリも知らない妻。
――攻防戦の幕が、いま上がる。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる