雨の世界の終わりまで

七つ目の子

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第二章:美少女魔法使いを育てる

第十五話:聖女が堕ちた場所

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(それにしても、サニィは異常に図太い。本人はまだ分かっていないのかもしれないが、立ち直りが早すぎる。なんで平気で肉を食べられるんだ?)

 レインはサニィのことを研究していた。
 サニィを発見した当時、彼女は四肢を切り取られ、頭は割られ、胸には槍が突き刺され、大量の血が台を流れバケツに貯められていた。食人鬼のオーガにとって処女の体は最高級の食材であり、その生き血はどんなワインにも勝る嗜好品だ。それを彼女は少しだけでも目にしたはずである。
 そして、他の人物も同じようになっているのではと、想像したはず。
 それなのに彼女は平然と肉を食べる。
 初めに出したスープには入れないようにしたが、最初はしっかりと煮込んだものを、次いで焼いたものを、そして遂には目の前で調理をしてみても一切の拒否反応を見せなかった。
 そして明日には狩りも頑張ると言う。

 そんなこと、少なくともレインには無理だった。
 母親が死んだ後、2ヶ月ほどは肉を見るだけで吐いたし、ようやくしっかりと焼いたものなら口に入れられるようになったのが半年後だ。
 彼の場合は魔物に対する憎しみが凄まじいものだったので、魔物を殺すことだけはなんとも思わなかったが、そうでないものは割り切れなかった。

 だからレインはそれまで殺す瞬間をサニィに見せないよう気を使ってきた。
 訓練も生き物相手の攻撃魔法ではなく安全な開花の魔法や、木を倒す程度のことに絞ってきた。
 だが、それも最早必要はないのかもしれない。

「お前はやはり強いな」
「え? 突然なんですか?」
「いや、ふと思ったことがあってな。お前は強大な魔法使いになるだろう」
「んんー?」

 レインの突然の発言にサニィは困惑するが、その柔らかくも真面目な表情に悪い気分はしない。
 今まで追いかけてきた両親よりも更に強い人外からの純粋な評価だ。
 何を思ってそんなことを言ったのかは分からないけれど、人の役に立てる力が手に入るのならそれは凄く嬉しい。そして、彼が近くにいる限り、どれだけ力をつけても驕ることはないだろう。
 目標にして安全装置、それが今のサニィにとってのレインの役割だった。
 最も、彼は最低男ではあるけれど!

「全く、また私をたぶらかす気ですか?」
「残念ながら俺に悪意はない。本気だ」
「うっ……」

 攻勢に出ようとするも、更に真剣になったレインの目つきに引いてしまう。
 いつかはこういう方面では上に立ってみたい。けど今は強すぎる……。
 と、言うよりも私が弱すぎる……。
 サニィは初心だった。未だに見た目だけは好みな青年に見つめられると目を合わせ続けられないし、恥ずかしくなってしまう。
 次に咲かせた花は、いつもよりも更に青さを増していた。
 しかし、それは動揺ではない。わざとだ。わざともうちょっと青くしようと思ってやったのだ。
 そんな風に自分に言い聞かせる。

「今回からはよ、より鮮やかに、しようと、お、思ったんですから!」
「そうか。徐々に鮮やかになっていく花の川。良いじゃないか」
「そうなんです! 最終的には輝く真っ白の川になるんですから!」
「期待してるぞ」
「き、期待されてもレインさんの為になんかやらないですから!」

 自分で言っていて何を言っているのかわからないと思いつつも、そのツンはテンプレートに沿っている。
 この反応すらレインは隙を見る力で楽しんでいるのだが、必死なサニィはそんなことには気づかない。
 「別にレインさんのことなんかなんとも思ってないですから!」そんなことを言いつつ、より青くなってしまった色に合わせた花を更に咲かせていく。
 そうして青い道はここから更に青く染まり、『聖女が堕ちた場所』と、呼ばれることになるのだが、それもまた、別のお話。
 ともかく。

「これからの5年間、私はレインさんに迷惑かけまくってやります!」

 そんなことを言うサニィは、ただの微笑ましい反抗期におちた少女のそれでしかなかった。
 もちろん青年はいつも通り微笑んで「望むところだ」そう返していた。
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