雨の世界の終わりまで

七つ目の子

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第十章:未来の為に

第百三十七話:アリエル・エリーゼの道

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 色々とあったが、アリエル・エリーゼ27世は無事にレインとも和解した。
 何が無事なのか、分かりづらい所ではある。彼女の母親を殺したことは事実だし、彼女がレインに死んじゃえと吐き捨ててしまったことも事実だ。
 アリエルは女王とは言えまだ9歳だし、その執務の殆どは宰相であるロベルトが肩代わりしている。
 もちろん、彼女自身サニィ達に頼りすぎてしまったことは分かっていたが、それでも、納得を得ると言うのは誰にだって難しいレベルのものだった。
 だから、今回は互いに謝り、竜殺しの英雄レインと聖女サニィがアリエル・エリーゼの味方であると公表し、生きている間は緊急時には駆けつけて国を守る、更にグレーズ王国がアルカナウィンドと同盟国とすることで解決とする。
 その様に定めたのだった。
 この世界に戦争はないものの、末永く仲良くしていこう。
 そんな条約を結ばせたのは、故エリーゼ26世である。そうすれば、きっと彼女も母親も報われる。
 それが、レインとオリヴィアが提案した解決案だった。
 なぜオリヴィアが、と言う理由は簡単だった。
 彼女はアリエルとの外交において全権を任されており、なるべく友好的な関係を築いて欲しいと元から言われていた。
 実際に会ったアリエルがオリヴィアにとって好みの可愛さだったし、訓練の場を提供してくれたしで、オリヴィアは張り切ったと言うわけだ。個人的な理由が多分に含まれているが、まあ、彼女は正真正銘王女だし、英雄なので歴史の闇としておこう。

「わたくしのこともオリヴィア姉さんと呼んでくださって良いのですわよ?」
「えーと、オリヴィア、さん」

 サニィをお姉さん、レインをレイン兄と呼ぶのに対してアリエルが彼女を親しく呼ぶことはなかったが、彼女も彼女なりに、オリヴィアの勇姿を評価はしたらしい。

「で、でも、妾のことはアリエルと呼んでもよいから……」

 と、ほんの少し顔を赤らめて言っている様子は、傍から見ていれば高貴な姉妹の様で微笑ましかった。

 レイン達は一週間程滞在し、オリヴィアの体と精神状態を癒しつつアリエルの寂しさを巻き返す様に一緒に遊んだ。相変わらずトランプはアリエルの圧勝だったし、体を使った遊びはレインが容赦ない。頭を使うゲームではアリエルの能力にオリヴィアが対抗したりもしていた。なんとなく偏りの酷い勝負の状況だったものの、それなりにアリエルは楽しんでいたらしい。
 「また来てね」
 最後に皆にそう告げると、それぞれの場所へと戻っていく。マルスはそのままサニィの後を追いかけて魔王戦の場所を見たいと北に歩いて行ったし、オリヴィアはサニィが王都に連れて行った。
 レインは一足先にエリーの所に戻り、修行を再開する。
 オリヴィアが王に報告を済まして戻ってくるまでもう少し、レインは彼女にオリヴィアが強くなったことを話しながら育て始めた。

 ――。

「ねえ、じい、妾も少しだけ、強くなりたいな」
「そうですか。それならまた今度レイン様が来た時に驚かせてやりましょう。もちろん勉強も手を抜きませんが、宜しいですか?」
「うん、オリヴィアさんみたいに変態になるのは嫌だけど、あんな風になんでも出来るのは格好いい」

 アリエルにとって、王女オリヴィアは衝撃的だった。自分と同じく王族の身でありながら、変態であることを除けば非常に勇敢で有能。今は引きこもり王女という事にしているらしいが、それでもドラゴン襲撃に衝撃を受けた彼女を心配している声は多く出ているらしく、人気も高い。
 今までは能力の影響で女王として優れた可能性を持つと言われながらも、その仕事の殆どを宰相に任せっぱなしにしてしまっていた。能力を除けばお飾り女王。
 そこに少しのコンプレックスを、抱えていた。

「とは言え、焦ってはいけません。私は先々代に受けた恩義を返すためにエリーゼ様に人生を捧げておりますので、私が生きている限りは安心して成長していってください」
「うん、ありがと、じい」

 どんな風でも良いけれど、初代英雄エリーゼの名に恥じない女王でありたい。その為に、まずは目先の魔王戦に向けて体を鍛えたい。自分自身が戦うわけではなくても、戦ってくれる英雄達の足を引っ張らない程度には動けるようになりたい。
 もちろん女王の勉強もたっぷりとして、そしていつかはロベルトを自由にしてあげられるように。

 宰相ロベルトは、エリーゼの血に忠誠を誓っていた。
 かつては盗賊に堕ちていたロベルトを救ったのは先々代。その後短命で亡くなってしまった彼女への恩を返すために先代に仕えていたけれど、彼女はまた、更に短命だった。
 今は幼い女王の代わりに国を治めることで恩を返せているけれど、それでもまだ足りない。
 ロベルトがそんな風に考えていることを、アリエル・エリーゼは知っていた。
 だから今はロベルトの為にあえて精一杯甘えて、そしていつかは、こちらが受けていた恩を返したい。

「よし、それじゃ、何をすれば良い?」
「まずは走り込みですな。安全の為ライラに付き添ってもらって王城内を5周走れるようになりましょう」

 若き侍女ライラは心底嫌そうな顔をしたが、今度レインに見せるの一言で途端にやる気を出すと、アリエルを置きさる勢いで走り込みを始めた。

「言っておくがレイン兄はサニィお姉さんのだからな? 仕事中もやたらレイン兄に近づいてたけど、可能性はないからな?」

 アリエルがそんなことを言っても、愛人でも良いと興奮するライラのことを、レインはきっと覚えてもいない等という事はこの際伏せておくことにしよう。女王はとりあえず、そう決意した。

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