138 / 592
第十一章:南の大陸へ
第百三十八話:再び二人で旅をする
しおりを挟む
オリヴィア達が王都から戻って来ると同時、二人は港町を出発した。
まだまだ、いくらでもエリー達の面倒はみたいところではある。それでも、南の大陸での人材探しも必要であれば、残された時間も少なかった。
オリヴィアは王都に戻ったついでにサニィが発見したいくつかの町を襲撃から守り、あの時の死闘の感覚を自分の物にした様だし、エリーもさらなる成長と、能力の可能性を見出していた。
後はきっと、放っておいても自分が育てるのと変わらない成長を見せるのだろう。
そう、思ってしまった。
「さて、そんなわけで、俺達は行って来る」「うん、行ってきます」
「どんなわけかは分からないですれど、行ってらっしゃいませ」
そう言いあって手を振ると、船が離岸して行く中で、それまで何も言わなかったエリーは叫んだ。
「寂しがりやの師匠、行ってらっしゃい!!」
そうして、誰よりも大きく手を振った。
何やら恥ずかしいな。そんなことを呟くレインに、サニィは筒抜けですからと笑う。
見送りには町の警備部隊やアリス、女将と、存在感の薄い大将、実に多くの人が集まっており、この船も彼らが手配してくれたものだった。
手配してくれたとは言っても、船頭もいない、二人きりの大型木造ボードをプレゼントされただけだった。
きっとこの光景を見た町の住人多くは、無謀な旅を強行した馬鹿で好かれている奴を、せめてみんなで見送ろうとでもしていると思ったことだろう。
乗っているのが正確な空間把握能力を持つ怪人と、無限のマナを操れる聖女だとは、見送りをしていた人間達以外は誰も知らない。
――。
港が視界から消え、腰を下ろす。
互いの目の前にいるのは、随分と懐かしい顔だった。
「それにしても久しぶりだな、サニィ」
「2週間位ぶり、ですか。でもその前も別々に行動してましたし、確かに久しぶりですねー」
「ああ、出会った最初は一瞬たりとも離れる気なんか無かったんだけどな」
「……私は最初レインさんのこと怖かったですけど」
そんなサニィの言葉にレインは少しだけしゅんとする。
久しぶりの二人きりだからだろうか、師匠として厳しくしてきた反動だろうか、それとも、自分が頼りになるようになったということだろうか。
何はともあれ、そんな久しぶりの二人きりを、サニィはとても愛おしく思った。
「南の大陸ですか。私達が英雄に興味を持ったきっかけのヴィクトリア様とフィリオナ様は、そこの出身なんですよね」
「ヴィクトリアは巨人の子どもだったって説があるよな」
「ああー、それ、マルス様が違うって否定しましたよ」
「なんだと……?」
もしかして魔王の時の様に、またそんなファンタジーを信じていたのだろうか。
魔王はファンタジーではなかったけれど、巨人族なんてのは存在しない。ジャイアントって魔物は確かに南の大陸にいるけれど。
「そもそも、185cmって普通に大きい人じゃないですか。確かに、女性としては凄く大きいですけど」
「うーん、言われてみればマルスも自分よりは小さかったと言っていたような……」
「あはは、結構レインさんってそういう所信じるんですね」
やっぱりそういう部分で可愛いところがある。
そんな風に思ってしまったのは流石に本人には言えない。
恐らく気にしないだろうとは思うが、もしも恥ずかしがったりしたら船の上では流石に気まずくなってしまう。
「まあ、俺の存在自体が奇妙なものだしな。何があってもおかしくはないと思ってるが……」
それは確かに。
と思ったところで、サニィは一つの事実に気がついた。
「あ、もしかして、レインさんって私のそういうところを見越してたんですか?」
「ん? なんでだ?」
違ったらしい。ファンタジー好きなら魔法使いじゃない魔法使い(正確には奇跡らしいけれど)を見抜いて惚れたのなんだの言ったのではと思ったけれど。
では、とサニィは考えたところで、レインは言葉を続けた。
「俺は普通にお前の見た目が好みだったし、血の臭いを落とせば良い匂いもしたし、寝顔、いや、寝相も面白かったしな。まあ、最初に言った通りの一目惚れだったわけだ」
「寝相って……。ってか体臭の話とかしないでくださいよ恥ずかしい!」
この男のことだから、そんな予想は、ちょくちょく外れる気がする。
「そもそも、能力を見てないのに分かるわけがない」と言われてしまえば確かにそうだ。
これ以上は藪蛇になりそうだったので、話題をやめることにした。
「いやぁー、ヴィクトリア様が巨人の子孫じゃないってのは残念ですけど」
「なんだその下手なごまかし方は」
「あっちの大陸には狛の村とは違う戦闘民族がいるってのは事実みたいなんで楽しみですね」
「おい」
「女性だけの民族と言うことですよ。どういうマナが作用してアレしてるのか今からアレですねー!」
何やら久しぶりののんびりしたやり取りになんとなく癒されつつ、二人は大海原の旅を続ける。
目指すのは南の大陸、世界にある三つの大陸の最後の一つ。
せめて到着までは、この雰囲気の中で過ごしていたいと二人は思っていた。
残り[1058日→1043日]
まだまだ、いくらでもエリー達の面倒はみたいところではある。それでも、南の大陸での人材探しも必要であれば、残された時間も少なかった。
オリヴィアは王都に戻ったついでにサニィが発見したいくつかの町を襲撃から守り、あの時の死闘の感覚を自分の物にした様だし、エリーもさらなる成長と、能力の可能性を見出していた。
後はきっと、放っておいても自分が育てるのと変わらない成長を見せるのだろう。
そう、思ってしまった。
「さて、そんなわけで、俺達は行って来る」「うん、行ってきます」
「どんなわけかは分からないですれど、行ってらっしゃいませ」
そう言いあって手を振ると、船が離岸して行く中で、それまで何も言わなかったエリーは叫んだ。
「寂しがりやの師匠、行ってらっしゃい!!」
そうして、誰よりも大きく手を振った。
何やら恥ずかしいな。そんなことを呟くレインに、サニィは筒抜けですからと笑う。
見送りには町の警備部隊やアリス、女将と、存在感の薄い大将、実に多くの人が集まっており、この船も彼らが手配してくれたものだった。
手配してくれたとは言っても、船頭もいない、二人きりの大型木造ボードをプレゼントされただけだった。
きっとこの光景を見た町の住人多くは、無謀な旅を強行した馬鹿で好かれている奴を、せめてみんなで見送ろうとでもしていると思ったことだろう。
乗っているのが正確な空間把握能力を持つ怪人と、無限のマナを操れる聖女だとは、見送りをしていた人間達以外は誰も知らない。
――。
港が視界から消え、腰を下ろす。
互いの目の前にいるのは、随分と懐かしい顔だった。
「それにしても久しぶりだな、サニィ」
「2週間位ぶり、ですか。でもその前も別々に行動してましたし、確かに久しぶりですねー」
「ああ、出会った最初は一瞬たりとも離れる気なんか無かったんだけどな」
「……私は最初レインさんのこと怖かったですけど」
そんなサニィの言葉にレインは少しだけしゅんとする。
久しぶりの二人きりだからだろうか、師匠として厳しくしてきた反動だろうか、それとも、自分が頼りになるようになったということだろうか。
何はともあれ、そんな久しぶりの二人きりを、サニィはとても愛おしく思った。
「南の大陸ですか。私達が英雄に興味を持ったきっかけのヴィクトリア様とフィリオナ様は、そこの出身なんですよね」
「ヴィクトリアは巨人の子どもだったって説があるよな」
「ああー、それ、マルス様が違うって否定しましたよ」
「なんだと……?」
もしかして魔王の時の様に、またそんなファンタジーを信じていたのだろうか。
魔王はファンタジーではなかったけれど、巨人族なんてのは存在しない。ジャイアントって魔物は確かに南の大陸にいるけれど。
「そもそも、185cmって普通に大きい人じゃないですか。確かに、女性としては凄く大きいですけど」
「うーん、言われてみればマルスも自分よりは小さかったと言っていたような……」
「あはは、結構レインさんってそういう所信じるんですね」
やっぱりそういう部分で可愛いところがある。
そんな風に思ってしまったのは流石に本人には言えない。
恐らく気にしないだろうとは思うが、もしも恥ずかしがったりしたら船の上では流石に気まずくなってしまう。
「まあ、俺の存在自体が奇妙なものだしな。何があってもおかしくはないと思ってるが……」
それは確かに。
と思ったところで、サニィは一つの事実に気がついた。
「あ、もしかして、レインさんって私のそういうところを見越してたんですか?」
「ん? なんでだ?」
違ったらしい。ファンタジー好きなら魔法使いじゃない魔法使い(正確には奇跡らしいけれど)を見抜いて惚れたのなんだの言ったのではと思ったけれど。
では、とサニィは考えたところで、レインは言葉を続けた。
「俺は普通にお前の見た目が好みだったし、血の臭いを落とせば良い匂いもしたし、寝顔、いや、寝相も面白かったしな。まあ、最初に言った通りの一目惚れだったわけだ」
「寝相って……。ってか体臭の話とかしないでくださいよ恥ずかしい!」
この男のことだから、そんな予想は、ちょくちょく外れる気がする。
「そもそも、能力を見てないのに分かるわけがない」と言われてしまえば確かにそうだ。
これ以上は藪蛇になりそうだったので、話題をやめることにした。
「いやぁー、ヴィクトリア様が巨人の子孫じゃないってのは残念ですけど」
「なんだその下手なごまかし方は」
「あっちの大陸には狛の村とは違う戦闘民族がいるってのは事実みたいなんで楽しみですね」
「おい」
「女性だけの民族と言うことですよ。どういうマナが作用してアレしてるのか今からアレですねー!」
何やら久しぶりののんびりしたやり取りになんとなく癒されつつ、二人は大海原の旅を続ける。
目指すのは南の大陸、世界にある三つの大陸の最後の一つ。
せめて到着までは、この雰囲気の中で過ごしていたいと二人は思っていた。
残り[1058日→1043日]
0
あなたにおすすめの小説
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる