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第十二章:仲間を探して
第百六十五話:改めて実感する壁
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ある意味では楽しい場所だったウアカリを後にする。
これから、東の山脈を越えて、大陸の東側を目指す。
ウアカリの女性達は当然残念がったし、二人が出るの時にやってきた五人組の男冒険者グループは、レインと見比べられてあからさまに残念そうな顔で迎えられていたのが可哀想だった。まあ、そいつらは明らかにウアカリの女性達が目的だったので、仕方なかろう。
その時のサニィが何故か勝ち誇った顔をウアカリ戦士達と男冒険者グループ双方に向けていたのが印象的ではあったが、まぁ、少し滞在すればあれはあれで楽しむのだろう。
「ところで実際のところ、レインさんは私に縛られて残念でした?」
「いいや、俺が縛っている以上は縛られるのも当然だ」
即答。
それに満足したのか不満なのか、サニィはふーんと口を閉じたままに答える。
「短い人生なんだから、楽しめる時は楽しめば良いのに。まあ、あれだけ狂ってた私が言えた義理じゃないんですが」
「短い人生だからこそ、俺はお前と居たいんだって何回も言ってるだろう」
ふーん。
今度は、嬉しそうに答える。
「ちなみに、ウアカリで選ぶなら?」
「戦神サニィ」
「……」
「お前はウアカリだと認められただろう」
「なんというか、面白くないなぁ。嬉しいけど、嬉しいけどなんとなく聞きたいことだってあるじゃないですかぁ」
「お前なぁ、俺はお前しか経験がないんだ。そう言うならウアカリ全員と答えるぞ。神にでもなってやる」
「……想像するとそれはそれでやっぱり嫌ですね」
以前のフグの話の時の様に、頰をぷくーと膨らませる。
本当に魔王問題から抜け出したのだろう。
以前の様な黒い感情を感じない。
「想像するなよそんなこと……」
恐らく、これらはサニィ本人が自分の中に潜んでいた魔王の影響を確認する為にあえて聞いたのだろう。
だから、ぐしゃぐしゃとその頭を撫で着ける。何を言っても墓穴な様な気しかしないので、何を言うこともなく、粗雑に撫でる。
んもー、なんですかと嫌がる素振りを見せながらも逃げないサニィは、やはり少し、嬉しそうだった。
――。
大陸の南側を東西に分かつ山脈は、強力な魔物が多く存在する。
主な魔物は下級の竜、ドレイクよりも更に下の存在に位置するワイバーン。尾と爪に毒を持ち、人と見ればただの獲物だと考え反射的に襲いかかってくる。その為危険度だけで言えばドレイクにほぼ近しい。
ドレイクと同サイズではあるが、前足が翼になっているのが見た目での一番の違い。
単体の強さはドレイクに劣る。魔法も使わず、知性もない。しかし、集団で襲いかかられた場合、その毒を一度喰らえば徐々に動きは鈍くなり、長引く程に不利になる。
グランドドラゴンが強いのと似ているが、こちらは毒液を吐かない代わりに空を飛ぶ。
これら50匹を短剣一本で倒したサンダルは、確かに強い。
さて、二人の目の前には、大体250匹程のワイバーンがいる。
魔物は二人が向かう所で増えているのだろう。ここは今、死の山よりも危険だ。
「さて、久しぶりに俺が戦おう」
「はい。ウアカリでのデレデレっぷりを払拭する格好良いところを見せて下さい」
もちろん、デレデレしていた自覚などない。
きっと、これはサニィの被害妄想の類なのだろう。
そう納得しつつ、レインは襲いかかってる250のワイバーンを、一太刀で切り刻んだ。
襲いかかってきた連中とは別の、遥か遠くに居た、合計450程のワイバーンも真っ二つになっているのを、サニィは感じ取る。
ジャングルで、サニィを魔王から救った時に見せた空間を切り裂く技術の応用。
レイン以外誰にも見えない、ほぼ存在しないに等しい次元の狭間に正確に剣を通し、空間を突き抜けて対象物を斬るレインの奥義。
絶対に壊れない剣である【月光】でしか不可能な、圧倒的な、不条理とも言える暴力。
どれだけ鍛えた肉体も、距離も、数も、何もかもが意味を成さず、ただ、それの前には斬られたという事実だけが残る。
レインであっても十分な余裕がある時にしか使えない、頂点の剣。
「う、うわぁ……」
格好良い所を見せたつもりのレインの背後から聞こえた声は、ドン引きだった。
というか、混乱だった。
振り返ると、その目の焦点は既に合っておらず、キョロキョロと宙を舞っている。
「久しぶりに見ると格好良いを通り越して引いちゃいますね、私だってかなり強くなったと思うんですけど、めちゃめちゃ必死に修行してきて死んだりしながら、必死に追いつきたい並びたいと思って、だって好きですし? 何かを守る力欲しかったですし? でも、と言うか、そもそもレインさん俺が戦おう、とかキリッと言ったのに素振りしただけで戦ってないし、え? 今の戦いだったんですか? ぶんってしただけじゃないんですか? ってか、これだけ強い生き物がウアカリで子孫残さないのは逆に犯罪かも、今からでも間に合いますし戻ります?」
何やら早口で意味の分からないことを言う。
サニィは十分に強くなった。今では、一人でドラゴンを倒せるレインを除けば唯一の存在。そこまで強くなったサニィをして、久しぶりに見たその剣は改めてその異常性を彼女に突きつけた。人外の人外。
自分の目標はソレだったのだと、改めてその差を突き付けられた。
それを、今になって改めて実感した彼女は、それに一時的に、耐えられなくなった。
とは言え、立ち直れない様なショックを受けているわけではない。パニックに陥っているだけだ。一時的なもの。だから、大丈夫だとレインの能力は告げる。
それはともかくとして、ぐいぐいと袖を来た道に向かって引くのは勘弁して欲しい。
せっかく耐えたあの変態美女連中の猛攻の中に、サニィから子どもを作れと言われ戻されれば、流石にどうなるか分からない。
いや、これは俺もサニィの混乱に乗せられているのか?
10分ほどそんな葛藤をしただろうか。
ようやくレインの袖を引っ張るのをやめたサニィは、改めて先程の剣を振り返ると、それからの自分の行動を思い返す。
「えーと、落ち着きましょう」
「ああ、落ち着こう」
周囲には、250のワイバーンが落ちている。
遠くには、450のワイバーンが落ちている。
レインは素振りしただけに見えた。
そしてここは標高4500m。
二人の中に出た結論は、現実逃避だった。
それを行なった本人であるレインすらも、それで納得することに決めた。
「酸素不足で幻覚を見ていました。レインさんの縦横無尽な戦い、格好良かったです」
「ああ、なかなか骨のある戦いだった。標高が高いから気をつけろよ」
「うっかり酸素を集める魔法を使い忘れてました。てへ」
「全く仕方のない奴だ。次は怒るぞ」
「もぅ勘弁して下さいよぉフグさぁん」
二人はそんなコントを繰り広げた後、揃ってはぁと息を吐くと、黙って前へと進んだ。
サニィのその日の手記に「勇者レインはアレ。ずっと思ってたけど、本当アレ。700のワイバーンを一太刀。混乱する程、アレ」と書き綴られた。
これから、東の山脈を越えて、大陸の東側を目指す。
ウアカリの女性達は当然残念がったし、二人が出るの時にやってきた五人組の男冒険者グループは、レインと見比べられてあからさまに残念そうな顔で迎えられていたのが可哀想だった。まあ、そいつらは明らかにウアカリの女性達が目的だったので、仕方なかろう。
その時のサニィが何故か勝ち誇った顔をウアカリ戦士達と男冒険者グループ双方に向けていたのが印象的ではあったが、まぁ、少し滞在すればあれはあれで楽しむのだろう。
「ところで実際のところ、レインさんは私に縛られて残念でした?」
「いいや、俺が縛っている以上は縛られるのも当然だ」
即答。
それに満足したのか不満なのか、サニィはふーんと口を閉じたままに答える。
「短い人生なんだから、楽しめる時は楽しめば良いのに。まあ、あれだけ狂ってた私が言えた義理じゃないんですが」
「短い人生だからこそ、俺はお前と居たいんだって何回も言ってるだろう」
ふーん。
今度は、嬉しそうに答える。
「ちなみに、ウアカリで選ぶなら?」
「戦神サニィ」
「……」
「お前はウアカリだと認められただろう」
「なんというか、面白くないなぁ。嬉しいけど、嬉しいけどなんとなく聞きたいことだってあるじゃないですかぁ」
「お前なぁ、俺はお前しか経験がないんだ。そう言うならウアカリ全員と答えるぞ。神にでもなってやる」
「……想像するとそれはそれでやっぱり嫌ですね」
以前のフグの話の時の様に、頰をぷくーと膨らませる。
本当に魔王問題から抜け出したのだろう。
以前の様な黒い感情を感じない。
「想像するなよそんなこと……」
恐らく、これらはサニィ本人が自分の中に潜んでいた魔王の影響を確認する為にあえて聞いたのだろう。
だから、ぐしゃぐしゃとその頭を撫で着ける。何を言っても墓穴な様な気しかしないので、何を言うこともなく、粗雑に撫でる。
んもー、なんですかと嫌がる素振りを見せながらも逃げないサニィは、やはり少し、嬉しそうだった。
――。
大陸の南側を東西に分かつ山脈は、強力な魔物が多く存在する。
主な魔物は下級の竜、ドレイクよりも更に下の存在に位置するワイバーン。尾と爪に毒を持ち、人と見ればただの獲物だと考え反射的に襲いかかってくる。その為危険度だけで言えばドレイクにほぼ近しい。
ドレイクと同サイズではあるが、前足が翼になっているのが見た目での一番の違い。
単体の強さはドレイクに劣る。魔法も使わず、知性もない。しかし、集団で襲いかかられた場合、その毒を一度喰らえば徐々に動きは鈍くなり、長引く程に不利になる。
グランドドラゴンが強いのと似ているが、こちらは毒液を吐かない代わりに空を飛ぶ。
これら50匹を短剣一本で倒したサンダルは、確かに強い。
さて、二人の目の前には、大体250匹程のワイバーンがいる。
魔物は二人が向かう所で増えているのだろう。ここは今、死の山よりも危険だ。
「さて、久しぶりに俺が戦おう」
「はい。ウアカリでのデレデレっぷりを払拭する格好良いところを見せて下さい」
もちろん、デレデレしていた自覚などない。
きっと、これはサニィの被害妄想の類なのだろう。
そう納得しつつ、レインは襲いかかってる250のワイバーンを、一太刀で切り刻んだ。
襲いかかってきた連中とは別の、遥か遠くに居た、合計450程のワイバーンも真っ二つになっているのを、サニィは感じ取る。
ジャングルで、サニィを魔王から救った時に見せた空間を切り裂く技術の応用。
レイン以外誰にも見えない、ほぼ存在しないに等しい次元の狭間に正確に剣を通し、空間を突き抜けて対象物を斬るレインの奥義。
絶対に壊れない剣である【月光】でしか不可能な、圧倒的な、不条理とも言える暴力。
どれだけ鍛えた肉体も、距離も、数も、何もかもが意味を成さず、ただ、それの前には斬られたという事実だけが残る。
レインであっても十分な余裕がある時にしか使えない、頂点の剣。
「う、うわぁ……」
格好良い所を見せたつもりのレインの背後から聞こえた声は、ドン引きだった。
というか、混乱だった。
振り返ると、その目の焦点は既に合っておらず、キョロキョロと宙を舞っている。
「久しぶりに見ると格好良いを通り越して引いちゃいますね、私だってかなり強くなったと思うんですけど、めちゃめちゃ必死に修行してきて死んだりしながら、必死に追いつきたい並びたいと思って、だって好きですし? 何かを守る力欲しかったですし? でも、と言うか、そもそもレインさん俺が戦おう、とかキリッと言ったのに素振りしただけで戦ってないし、え? 今の戦いだったんですか? ぶんってしただけじゃないんですか? ってか、これだけ強い生き物がウアカリで子孫残さないのは逆に犯罪かも、今からでも間に合いますし戻ります?」
何やら早口で意味の分からないことを言う。
サニィは十分に強くなった。今では、一人でドラゴンを倒せるレインを除けば唯一の存在。そこまで強くなったサニィをして、久しぶりに見たその剣は改めてその異常性を彼女に突きつけた。人外の人外。
自分の目標はソレだったのだと、改めてその差を突き付けられた。
それを、今になって改めて実感した彼女は、それに一時的に、耐えられなくなった。
とは言え、立ち直れない様なショックを受けているわけではない。パニックに陥っているだけだ。一時的なもの。だから、大丈夫だとレインの能力は告げる。
それはともかくとして、ぐいぐいと袖を来た道に向かって引くのは勘弁して欲しい。
せっかく耐えたあの変態美女連中の猛攻の中に、サニィから子どもを作れと言われ戻されれば、流石にどうなるか分からない。
いや、これは俺もサニィの混乱に乗せられているのか?
10分ほどそんな葛藤をしただろうか。
ようやくレインの袖を引っ張るのをやめたサニィは、改めて先程の剣を振り返ると、それからの自分の行動を思い返す。
「えーと、落ち着きましょう」
「ああ、落ち着こう」
周囲には、250のワイバーンが落ちている。
遠くには、450のワイバーンが落ちている。
レインは素振りしただけに見えた。
そしてここは標高4500m。
二人の中に出た結論は、現実逃避だった。
それを行なった本人であるレインすらも、それで納得することに決めた。
「酸素不足で幻覚を見ていました。レインさんの縦横無尽な戦い、格好良かったです」
「ああ、なかなか骨のある戦いだった。標高が高いから気をつけろよ」
「うっかり酸素を集める魔法を使い忘れてました。てへ」
「全く仕方のない奴だ。次は怒るぞ」
「もぅ勘弁して下さいよぉフグさぁん」
二人はそんなコントを繰り広げた後、揃ってはぁと息を吐くと、黙って前へと進んだ。
サニィのその日の手記に「勇者レインはアレ。ずっと思ってたけど、本当アレ。700のワイバーンを一太刀。混乱する程、アレ」と書き綴られた。
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