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第二部第一章:鬼神を継ぐ二人
第一話:魔王を倒して、世界を救うわ!!
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その少女の風貌は、異常だった。
膝までも届きそうな長い金髪を風になびかせ、両の腕を組んで仁王立ち。いや、悠然と歩いてくる。
その深いワインレッドの瞳は自信に満ちている。
歳の頃は12、3歳。いや、童顔も相まってもっと幼く見える。
人形の様な美しい顔立ち。身長は150cm弱と小柄だが、細身の体はスタイルも申し分ない。
ドヤ顔がとても可愛らしい。
それだけならば、誰しもが振り返る美貌であるだろう。
しかし、人々は全く別の理由で振り返っていた。
「なんだアレは……」
「しっ、変に見てたら流石に可哀想だって」
「いや、しかしアレは……」
その場に居た人々、120人ほど。魔物の襲撃に備えて門の前に待機していた守備隊や冒険者達はその少女を見て、怪訝に呟く。
しかし、その金髪はそんな小言など意にも解さず歩を進めながらこう言った。
「私が来たからにはもう安心。あなた達は下がってて良いわ!」
一瞬にして、何を言っているんだこの娘は、そう言った空気がその場を支配する。
それも当然だ。
その少女の見た目は完全に戦いと言うものを舐めているとしか思えない。ど素人もここに極まれり。
いや、まず戦闘などして良い歳に見えない。
ここが戦場でなければよしよしと頭でも撫でてみたいものだが。
左右の腰には2本の剣と一本のメイス、背中には180cm程もある大剣を背負い、その柄の横からは更に長い槍が顔を出し、その背後には盾も見える。尻の付近には弓がぶら下がっており、よく見ればナイフと片手剣らしき剣も腰の裏に差してある様だ。
多くの武器を持つと言う発想は、誰しもが想像してしまう一種のロマンではあるだろう。
しかし、実際に多くの武器を持つことはなんのメリットにもならない。
剣の一般的な重量は1~2kg程度だとは言え、その女はそれだけに済まない。背中に背負った大剣など、彼女の細い体躯からすれば歩くのすら本来は難しい。いや、持つことすら出来なくてもおかしくはないだろう。
ともかく、手は二本しかないのにそんなにごちゃごちゃと武器を背負って何がしたいのか、全く理解が出来ない。
何より、鎧も付けずにその『重り』は致命的だろう。
小柄な体躯にあまりにもアンバランスな武器の群れ。
この場に居た全ての者は、そんな女の見た目と自信に失笑を禁じ得なかった。
微笑ましかったのかもしれない。ともかく、意図せず笑みがこぼれてしまう。
「ま、良いわ。いつものことだもの。でも私は笑っても良いけれど、この武器達を笑う事は許さないからね。ともかく、巻き添えを喰らいたくなければ下がりなさい?」
うわー、頭のおかしい少女が来てしまった……。皆がそう思った頃、遠くに魔物の軍勢が見える。
オーガの群れだ。3mにもなる体を持つオーガの群れが、町を滅ぼそうと攻めて来ている。今回の戦いは皆命がけだ。
死者が何人になるか想像も付かない。
そんな場面で、こんな頭のおかしい少女の相手もするのはごめんだった。
皆の心は一つだった。
「あ、そっか。それなら行ってくるわ。待ってなさい」
少女はそんな事を言うと、目にも止まらぬ速度で駆け出した。
誰も止める間も無く、いや、誰しもが気付く間も無く、彼女はオーガの群れへと向かって駆けていた。
……。
殆どの者は、何が起きたのか理解出来なかった。
相手は250を超えるオーガの軍勢だ。
それは1匹であっても単純な膂力で人々を圧倒する化け者。死者は100%出る。それが誰になるかは分からないが、決して無駄にせず、必ず誰かは生き残って町を守る。
現代の魔法であれば、戦士が僅かに耐えられれば数で負けていても決して不可能ではない。
そんな風に考えていた。
それが、ものの数瞬で真っ赤に染まり地に伏していた。
「いやー。やっぱり師匠の様にはいかないわねー。師匠なら動く必要すらないもの」
少女は再び同じ様に、金髪を靡かせながら両腕を組み、悠然と歩いてくる。ただ違う所は、その武器達が悉く血に濡れていることだけ。
その表情はやはり自信に満ち溢れ、先ほどまでの彼らの覚悟を無に帰すかの様に微笑んでいた。
「あなた達、死ななくて良かったわね」
笑顔のままそんなことを言う少女を笑う者は、最早存在しなかった。
「き、君は一体何者だ? 勇者だろうって事は分かるが、それは俺もだ。しかしアレは……。それにまだまだ子どもだろう」
一人の冒険者が、少女に向かってそんな事を訪ねる。あれ程の強さの人間など、その男は二人しか知らなかった。人外と言われた王国の筆頭騎士でさえ、オーガの群れをあれ程の速度で倒す事は敵わない。
王都の都市伝説、謎の女勇者だけはその筆頭騎士よりも強いようだが、それはあくまで都市伝説の域だ。しかし、それは目の前の少女とは歳も合わない。高貴な喋り方をすると言う。
「殆どあなたの思った通り。私は勇者レインの弟子にして後継者、勇者エリー。師匠の教え通り、魔王を倒して、この世界を救うわ! ちなみに14歳よ!」
その様に自信満々に答える。
勇者レイン。
数多の魔物をなぎ倒し、世界を救った二人の英雄のうちの一人。人外の人外。
ドラゴンを軽くあしらい魔王よりも強いと言われる伝説の英雄。曰く【鬼畜王】、曰く【魔神】
その強さは一人で一国の軍隊を軽く上回ると言われている。
ここグレーズ王国の筆頭騎士がその背を追い続けた存在。フグが好物。
腰をよく見ると、そんな勇者レインが愛用したとされる漆黒の刀身に金色の波模様の宝剣が差さっている。
人々は確信した。
勇者レインは数人、弟子を残していると言う噂がある。何故か全員が女だと言う噂。
しかしそれならばこの強さも納得だ。そして弟子だと言う事実も、彼女の発言が物語っている。
勇者レインは天然だ。そんなことは『聖女の魔法書』と呼ばれる魔法体系を記した書物によって世界共通の認識として浸透していた。彼女は正しくそのレインの後継者だろう。
何故ならば、今の世に魔王は居ない。
魔王というものは100年以上も前に全滅している。
そんなことも知らないとは……。
とても良い笑顔の彼女に、そんなツッコミを入れられる者はいなかった。
「さて、オリ姉はどこに行ったのかしら。あなた、サンダー云々とか名乗る赤い残念美人、知らない?」
残念美人はお前だろ! そんなツッコミを入れられる者も、この中にはいなかった。
膝までも届きそうな長い金髪を風になびかせ、両の腕を組んで仁王立ち。いや、悠然と歩いてくる。
その深いワインレッドの瞳は自信に満ちている。
歳の頃は12、3歳。いや、童顔も相まってもっと幼く見える。
人形の様な美しい顔立ち。身長は150cm弱と小柄だが、細身の体はスタイルも申し分ない。
ドヤ顔がとても可愛らしい。
それだけならば、誰しもが振り返る美貌であるだろう。
しかし、人々は全く別の理由で振り返っていた。
「なんだアレは……」
「しっ、変に見てたら流石に可哀想だって」
「いや、しかしアレは……」
その場に居た人々、120人ほど。魔物の襲撃に備えて門の前に待機していた守備隊や冒険者達はその少女を見て、怪訝に呟く。
しかし、その金髪はそんな小言など意にも解さず歩を進めながらこう言った。
「私が来たからにはもう安心。あなた達は下がってて良いわ!」
一瞬にして、何を言っているんだこの娘は、そう言った空気がその場を支配する。
それも当然だ。
その少女の見た目は完全に戦いと言うものを舐めているとしか思えない。ど素人もここに極まれり。
いや、まず戦闘などして良い歳に見えない。
ここが戦場でなければよしよしと頭でも撫でてみたいものだが。
左右の腰には2本の剣と一本のメイス、背中には180cm程もある大剣を背負い、その柄の横からは更に長い槍が顔を出し、その背後には盾も見える。尻の付近には弓がぶら下がっており、よく見ればナイフと片手剣らしき剣も腰の裏に差してある様だ。
多くの武器を持つと言う発想は、誰しもが想像してしまう一種のロマンではあるだろう。
しかし、実際に多くの武器を持つことはなんのメリットにもならない。
剣の一般的な重量は1~2kg程度だとは言え、その女はそれだけに済まない。背中に背負った大剣など、彼女の細い体躯からすれば歩くのすら本来は難しい。いや、持つことすら出来なくてもおかしくはないだろう。
ともかく、手は二本しかないのにそんなにごちゃごちゃと武器を背負って何がしたいのか、全く理解が出来ない。
何より、鎧も付けずにその『重り』は致命的だろう。
小柄な体躯にあまりにもアンバランスな武器の群れ。
この場に居た全ての者は、そんな女の見た目と自信に失笑を禁じ得なかった。
微笑ましかったのかもしれない。ともかく、意図せず笑みがこぼれてしまう。
「ま、良いわ。いつものことだもの。でも私は笑っても良いけれど、この武器達を笑う事は許さないからね。ともかく、巻き添えを喰らいたくなければ下がりなさい?」
うわー、頭のおかしい少女が来てしまった……。皆がそう思った頃、遠くに魔物の軍勢が見える。
オーガの群れだ。3mにもなる体を持つオーガの群れが、町を滅ぼそうと攻めて来ている。今回の戦いは皆命がけだ。
死者が何人になるか想像も付かない。
そんな場面で、こんな頭のおかしい少女の相手もするのはごめんだった。
皆の心は一つだった。
「あ、そっか。それなら行ってくるわ。待ってなさい」
少女はそんな事を言うと、目にも止まらぬ速度で駆け出した。
誰も止める間も無く、いや、誰しもが気付く間も無く、彼女はオーガの群れへと向かって駆けていた。
……。
殆どの者は、何が起きたのか理解出来なかった。
相手は250を超えるオーガの軍勢だ。
それは1匹であっても単純な膂力で人々を圧倒する化け者。死者は100%出る。それが誰になるかは分からないが、決して無駄にせず、必ず誰かは生き残って町を守る。
現代の魔法であれば、戦士が僅かに耐えられれば数で負けていても決して不可能ではない。
そんな風に考えていた。
それが、ものの数瞬で真っ赤に染まり地に伏していた。
「いやー。やっぱり師匠の様にはいかないわねー。師匠なら動く必要すらないもの」
少女は再び同じ様に、金髪を靡かせながら両腕を組み、悠然と歩いてくる。ただ違う所は、その武器達が悉く血に濡れていることだけ。
その表情はやはり自信に満ち溢れ、先ほどまでの彼らの覚悟を無に帰すかの様に微笑んでいた。
「あなた達、死ななくて良かったわね」
笑顔のままそんなことを言う少女を笑う者は、最早存在しなかった。
「き、君は一体何者だ? 勇者だろうって事は分かるが、それは俺もだ。しかしアレは……。それにまだまだ子どもだろう」
一人の冒険者が、少女に向かってそんな事を訪ねる。あれ程の強さの人間など、その男は二人しか知らなかった。人外と言われた王国の筆頭騎士でさえ、オーガの群れをあれ程の速度で倒す事は敵わない。
王都の都市伝説、謎の女勇者だけはその筆頭騎士よりも強いようだが、それはあくまで都市伝説の域だ。しかし、それは目の前の少女とは歳も合わない。高貴な喋り方をすると言う。
「殆どあなたの思った通り。私は勇者レインの弟子にして後継者、勇者エリー。師匠の教え通り、魔王を倒して、この世界を救うわ! ちなみに14歳よ!」
その様に自信満々に答える。
勇者レイン。
数多の魔物をなぎ倒し、世界を救った二人の英雄のうちの一人。人外の人外。
ドラゴンを軽くあしらい魔王よりも強いと言われる伝説の英雄。曰く【鬼畜王】、曰く【魔神】
その強さは一人で一国の軍隊を軽く上回ると言われている。
ここグレーズ王国の筆頭騎士がその背を追い続けた存在。フグが好物。
腰をよく見ると、そんな勇者レインが愛用したとされる漆黒の刀身に金色の波模様の宝剣が差さっている。
人々は確信した。
勇者レインは数人、弟子を残していると言う噂がある。何故か全員が女だと言う噂。
しかしそれならばこの強さも納得だ。そして弟子だと言う事実も、彼女の発言が物語っている。
勇者レインは天然だ。そんなことは『聖女の魔法書』と呼ばれる魔法体系を記した書物によって世界共通の認識として浸透していた。彼女は正しくそのレインの後継者だろう。
何故ならば、今の世に魔王は居ない。
魔王というものは100年以上も前に全滅している。
そんなことも知らないとは……。
とても良い笑顔の彼女に、そんなツッコミを入れられる者はいなかった。
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