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第八章:ほんの僅かの前進
第百十二話:勝てる気しないんだけど
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次の日、イリスはオリヴィアと手合わせをした。
夕食時の一件はあったものの、イリスもオリヴィアも特に気まずい雰囲気になるでも調子を狂わせるわけでもなく、無事にイリスの鍛錬を兼ねた手合わせは終了した。
「ふう。いい調子ですわね」
「ほんと、エリーちゃんの一言は的確だね」
「ふふふ、それが的確に聞こえるのはイリスさん位のものですわ」
アーツに稽古を付けるときには、こういう感じ、と言いながら身振り手振りで教えているエリー。
それが言葉の裏までをも聞けるイリスには的確に聞こえる様で、思わず笑ってしまう。
的確な一言とは、つまり盾についてだ。
もう少し大きな盾。
その一言は、イリスの戦い方の大きなヒントになっていた。
元々小型の盾を利用していたイリスは、それを斜めに傾けたり振りながら敵の攻撃に合わせることで、受け流したり弾いたりとそう言った戦い方を主体としてきた。上手く決まれば相手の隙を作れるものの、受け止められる衝撃には限りがある。盾が小さい為に、足もしっかりと使っていかなければ攻撃を防ぎきることは出来ない。
そんな戦い方だった。
何故それが一番向いていると考えていたのかは最早覚えていないものの、恐らく戦士として剣で相手を倒したいという意識が漏れていたのだろう。
そんな意識が残っていたのだろうか、エリーとの戦いの際には相変わらず攻撃を弾く意識が強く、長剣の貫通によって見事にその意識に隙を作られたのだ。
そこで、オリヴィアとの戦いの際にはもう少し大きい盾を用意した。
受け流すだけではなく、しっかりと受け止められる位の大きさのもの。
その選択が功を奏した。
オリヴィアの右手のレイピアはいつも通り受け流し、左手の不壊の剣は受け止める。
そんな使い分けが、少し盾の大きさを変えるだけで実現出来たのだと言う。
「ヒントはエリーちゃんの突進なんだよね。盾に完全に隠れちゃうなんていうのはエリーちゃんしかできないけど、盾に信頼を置くって行為を今まで私はしてこなかった」
そう言いながら、昨日は潰された左腕をさする。
「あの盾は特別性ですけれど……、でもエリーさんに潰されてすぐに盾に信頼を置けるイリスさんは凄いですわ」
「あはは、あれは思わず自分から腕を振っちゃったんだよね。今までの癖と盾の重さでやっちゃったって感じ」
今回の手合わせは、互いに一切の怪我無し。
防御に徹したイリスに攻めあぐねるオリヴィアだったが、互いに一切の隙を見せず膠着状態が続いた。
最終的に隙間とも言えない防御の隙間を突いた必中のオリヴィアが勝ちはしたものの、その防御はドラゴンよりも堅いと言うのがオリヴィアの評価だった。
「これから専用の盾を作るよ。少しの衝撃吸収と、徹底的に頑丈なだけの盾だけどね」
そんな言葉で、最後は締められた。
エリーから学んだ盾で戦う技術の集大成は、オリヴィアですら攻めの糸口を見出すのに苦労する程の防御。
それで決定した様だ。
それは実際魔物に対しても有効で、威圧感のある風貌に多くの魔物達は怯み、また勇敢な魔物はイリスの言霊の支配下となる。魔王に対してはそれらが通用しなくとも、生存率は飛躍的に高まった。
盾をただの防具として見るのではなく、武器として見ることで自身の戦士として有りたいという精神とのミスマッチをも解消して、イリスは飛躍的に強くなった。
――。
数日後、勇者のランキングが更新されたという記事が出回った。
1位 オリヴィア
2位 ライラ
3位 ナディア
4位 エリー
5位 ディエゴ
6位 サンダル ※本日はこの順位
7位 イリス
どこの誰が集計したのかも分からないそのランキングは、以前と変わらず同じ新聞社。
しかし、それを見て英雄候補達は皆が納得を覚えたのだった。
特に、エリーの順位に関して。
地味に順位の下がっていたサンダルとディエゴの差は、本日はこの順位という注釈が気になるものの、イリスがそのランキングに載ったことも、魔王戦に向けての大きな一歩だろう。
――。
「あれ、私っていつの間にかディエゴさん超えてるの? 勝てる気しないんだけど」
「うーん、難しいところですわね。多分ディエゴとエリーさんが直接戦ったらディエゴが勝つのでしょうけれど、それ以外の相手だったり対魔物に関しては、確かに最近のエリーさんは凄いと認めざるを得ませんわ……」
「そっか。でもオリ姉は私以外に負けちゃダメだよ」
「ふふ、エリーさんにも負けませんわ。一番弟子をエリーさんに譲る代わりに、月光はわたくしのものですもの」
「何? やるの?」
「はいはい、来月またやりましょう」
ウアカリを発ち西の港町へと着いた二人は、今日もそんな風に闘志を漲らせていた。
到着した直後に二人で60m程のドラゴンを討伐したのだが、それも彼女達にとっては最早大した敵ではなくなっているらしい。
その様子を見た街の人々が、相変わらず血に濡れたオリヴィアに恐怖しながらも、二人を英雄の様に讃えていたことは、一先ず置いておいても良いだろう
夕食時の一件はあったものの、イリスもオリヴィアも特に気まずい雰囲気になるでも調子を狂わせるわけでもなく、無事にイリスの鍛錬を兼ねた手合わせは終了した。
「ふう。いい調子ですわね」
「ほんと、エリーちゃんの一言は的確だね」
「ふふふ、それが的確に聞こえるのはイリスさん位のものですわ」
アーツに稽古を付けるときには、こういう感じ、と言いながら身振り手振りで教えているエリー。
それが言葉の裏までをも聞けるイリスには的確に聞こえる様で、思わず笑ってしまう。
的確な一言とは、つまり盾についてだ。
もう少し大きな盾。
その一言は、イリスの戦い方の大きなヒントになっていた。
元々小型の盾を利用していたイリスは、それを斜めに傾けたり振りながら敵の攻撃に合わせることで、受け流したり弾いたりとそう言った戦い方を主体としてきた。上手く決まれば相手の隙を作れるものの、受け止められる衝撃には限りがある。盾が小さい為に、足もしっかりと使っていかなければ攻撃を防ぎきることは出来ない。
そんな戦い方だった。
何故それが一番向いていると考えていたのかは最早覚えていないものの、恐らく戦士として剣で相手を倒したいという意識が漏れていたのだろう。
そんな意識が残っていたのだろうか、エリーとの戦いの際には相変わらず攻撃を弾く意識が強く、長剣の貫通によって見事にその意識に隙を作られたのだ。
そこで、オリヴィアとの戦いの際にはもう少し大きい盾を用意した。
受け流すだけではなく、しっかりと受け止められる位の大きさのもの。
その選択が功を奏した。
オリヴィアの右手のレイピアはいつも通り受け流し、左手の不壊の剣は受け止める。
そんな使い分けが、少し盾の大きさを変えるだけで実現出来たのだと言う。
「ヒントはエリーちゃんの突進なんだよね。盾に完全に隠れちゃうなんていうのはエリーちゃんしかできないけど、盾に信頼を置くって行為を今まで私はしてこなかった」
そう言いながら、昨日は潰された左腕をさする。
「あの盾は特別性ですけれど……、でもエリーさんに潰されてすぐに盾に信頼を置けるイリスさんは凄いですわ」
「あはは、あれは思わず自分から腕を振っちゃったんだよね。今までの癖と盾の重さでやっちゃったって感じ」
今回の手合わせは、互いに一切の怪我無し。
防御に徹したイリスに攻めあぐねるオリヴィアだったが、互いに一切の隙を見せず膠着状態が続いた。
最終的に隙間とも言えない防御の隙間を突いた必中のオリヴィアが勝ちはしたものの、その防御はドラゴンよりも堅いと言うのがオリヴィアの評価だった。
「これから専用の盾を作るよ。少しの衝撃吸収と、徹底的に頑丈なだけの盾だけどね」
そんな言葉で、最後は締められた。
エリーから学んだ盾で戦う技術の集大成は、オリヴィアですら攻めの糸口を見出すのに苦労する程の防御。
それで決定した様だ。
それは実際魔物に対しても有効で、威圧感のある風貌に多くの魔物達は怯み、また勇敢な魔物はイリスの言霊の支配下となる。魔王に対してはそれらが通用しなくとも、生存率は飛躍的に高まった。
盾をただの防具として見るのではなく、武器として見ることで自身の戦士として有りたいという精神とのミスマッチをも解消して、イリスは飛躍的に強くなった。
――。
数日後、勇者のランキングが更新されたという記事が出回った。
1位 オリヴィア
2位 ライラ
3位 ナディア
4位 エリー
5位 ディエゴ
6位 サンダル ※本日はこの順位
7位 イリス
どこの誰が集計したのかも分からないそのランキングは、以前と変わらず同じ新聞社。
しかし、それを見て英雄候補達は皆が納得を覚えたのだった。
特に、エリーの順位に関して。
地味に順位の下がっていたサンダルとディエゴの差は、本日はこの順位という注釈が気になるものの、イリスがそのランキングに載ったことも、魔王戦に向けての大きな一歩だろう。
――。
「あれ、私っていつの間にかディエゴさん超えてるの? 勝てる気しないんだけど」
「うーん、難しいところですわね。多分ディエゴとエリーさんが直接戦ったらディエゴが勝つのでしょうけれど、それ以外の相手だったり対魔物に関しては、確かに最近のエリーさんは凄いと認めざるを得ませんわ……」
「そっか。でもオリ姉は私以外に負けちゃダメだよ」
「ふふ、エリーさんにも負けませんわ。一番弟子をエリーさんに譲る代わりに、月光はわたくしのものですもの」
「何? やるの?」
「はいはい、来月またやりましょう」
ウアカリを発ち西の港町へと着いた二人は、今日もそんな風に闘志を漲らせていた。
到着した直後に二人で60m程のドラゴンを討伐したのだが、それも彼女達にとっては最早大した敵ではなくなっているらしい。
その様子を見た街の人々が、相変わらず血に濡れたオリヴィアに恐怖しながらも、二人を英雄の様に讃えていたことは、一先ず置いておいても良いだろう
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