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第八章:ほんの僅かの前進
第百十一話:ほんと、めちゃくちゃだねナディアさん……
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クーリアイリス姉妹の家に戻り夕飯を食べる。
イリスの修行中にマルスが準備をしておいた鍋だ。
流石に目を覚ましていたクーリアと共に五人でテーブルを囲う。
「ところでイリス姉、さっきナディアさんに追いつきたいって言ってたけど、イリス姉の目標ってナディアさんなの?」
ふと、エリーは先ほどのことを思い出して気になったことを問う。
正統派な戦士を目指していたはずのイリスが、なんでもする、所謂邪道の戦士であるナディアを目標にするというのは、考えてみればどこか違和感を感じたのだ。
「ああ、かつてはお姉ちゃんお姉ちゃんと可愛かったイリスも、今やあのナディアに毒されてしまってなぁ……」
そんな問いに、姉クーリアは演技がかったように悔しがる。
もちろん、イリスが言った言葉がどういう意味なのかは知っている様子。
なのでエリーもいつもの様にいたずらっぽくそれに乗っかってみる。
「そっかー、超正統派戦士のクーリア姉が目標だったあのイリス姉はもう居ないのね……」
「ふふ、戦い方も正統派とは少し違う形になりましたものね」
オリヴィアもそれを察したのか、流れに乗る。
そして、そんな一同を微笑ましい顔で見守っているマルス。
全員が茶化し終えたところで、イリスも口を開き始めた。
「もう、違うよ。ナディアさんに追いつきたいって言うのは、ウアカリの首長としての話。もちろん強さそのものもだけどさ」
そんな風に。
「へ? 首長として?」
その言葉が意外だったのか、エリーはそんな間の抜けた声を上げる。
「どうしたのエリーちゃん?」
「え、いや、ナディアさんって首長としては結構アレじゃないの?」
アレとはもちろん、宜しくないのではということだ。
自由過ぎる彼女は、修行の為に首長を投げ出して国を出たと言う。
それ以外にも、色々アレだ。
ライラを見れば襲いかかるし、レインさんレインさんと頭の八割はレインで埋まっている。
しかも、戦い方も戦士というには余りにも邪道。毒だろうが罠だろうが何でもアリ。戦いの中に自身の生を求める傾向の強いウアカリに於いて、戦いには相手の死しか求めない彼女はそれほど支持率は高くないと考えていた。
もちろん、強ければ許されるのがウアカリだ。
ナディアはその強さだけで首長の役割を果たしているのだと、エリーは失礼ながらそう考えていた。
その言葉の裏を正確に読み取ったイリスは苦笑いをしながら答える。
「あはは、ナディアさんは実はね、首長としての支持率凄く高かったんだよ」
「ああ、下手したらアタシより上だったな」
姉妹揃って、そんなことを言う。
超正統派、英雄ヴィクトリアの再来とまで言われたクーリアの支持率が高いのは容易に予想できる。
あの豪快で爽快なクーリアの戦いっぷりには、思わず見蕩れてしまう様な魅力がある。
実際の強さとしては現在ではナディアやイリスに遅れをとってしまっているものの、かつてのイリスの様にそれを理想として鍛錬しているウアカリ戦士達も多いはずだ。
自ら馬鹿を自称する彼女達にとって、分かりやすいのは間違いなくナディアではなくクーリアだと予想していたのに……。
「あ、もしかして、レイン様関連だったりしますの?」
まるで怪奇現象でも見ているかの様に不可解な顔をするエリーを置いて、オリヴィアがそんなことを口にする。
「そう、流石は現役のお姫様だねオリヴィアさん」
答えたイリスに、エリーは更に怪訝な顔を深める。
「ん? 師匠? どういうこと?」
「質問ですわ、エリーさん。ここウアカリで、お師匠様はどういう存在でしょうか?」
「最強の種馬」
オリヴィアの質問に、即答のエリー。
「……誰に似たのかしら?」
「オリ姉」
オリヴィアの質問に、即答のエリー。
「………………ご、ごほん。ここウアカリに於いて、お師匠様は、えーと、えーと」
「誰しもが求める史上最高の男だ」
なんと言うべきか悩むオリヴィアに、助け舟を出すクーリア。
「そう、それですわ」
「一緒じゃん」
ぽんと手を打つオリヴィアに、即答のエリー。
「……まあ、レイン様が罪な方だと言うのは分かっていました……。ともかく、わたくしはこう予想しましたわ」
そうしてオリヴィアは席を立ち、手を広げ、演説を開始する。
「今日からこのウアカリは、レインさんの組織した魔王討伐軍に参加することになりました。レインさんは言いました。お前達の力で魔王を討伐して欲しい。俺からの最後の願いだ。世界の命運はお前たちにかかっている。これが彼の最後の言葉です。彼の信じた私達の力で、なんとしても魔王を討伐しましょう。と、こんな感じでどうでしょう」
それくらいが、オリヴィアの予想だった。
「いや、師匠そんなこと言わないと思うけど……」
思わずエリーは突っ込む。
「ナディアさんなら言いますわ」
「……それもそうだね」
そう二人で納得していると、イリスは苦い顔をしながら笑う。
「あ、あはは。実はね、見事魔王を倒した者にはオリヴィアさんの持つアレを手に入れる権利がある……って」
それは、黒い剣ではなく。
エリーは、その内容を理解する。
「ほんと、めちゃくちゃだねナディアさん……」
「私は言ったよ。それはオリヴィアさんのものだって。でも、それでも支持は下がらなかったの」
「ウアカリは馬鹿ばっかりだからな。それが実在するってイリスが認めたものだから……。と言うか、ナディアはお前が言うまでそれの存在を知らなかったんだぞ……」
「え……?」
クーリアに言われ、自ら墓穴を掘っていたことを今になって知ったイリスは頭を抱える。
そして、そんな3人のやりとりを見ていたオリヴィアは急激に涙目になって……。
「こ、これはわたくしのものですわ! エリーさんにだってあげませんわ!!」
そう叫ぶ。
「いやいや、私は狙ってないから……。そもそもオリ姉から奪える人なんて今この世界に居ないから」
そう呆れて見せても、なかなか涙目になったその表情は、治まらなかった。
イリスの修行中にマルスが準備をしておいた鍋だ。
流石に目を覚ましていたクーリアと共に五人でテーブルを囲う。
「ところでイリス姉、さっきナディアさんに追いつきたいって言ってたけど、イリス姉の目標ってナディアさんなの?」
ふと、エリーは先ほどのことを思い出して気になったことを問う。
正統派な戦士を目指していたはずのイリスが、なんでもする、所謂邪道の戦士であるナディアを目標にするというのは、考えてみればどこか違和感を感じたのだ。
「ああ、かつてはお姉ちゃんお姉ちゃんと可愛かったイリスも、今やあのナディアに毒されてしまってなぁ……」
そんな問いに、姉クーリアは演技がかったように悔しがる。
もちろん、イリスが言った言葉がどういう意味なのかは知っている様子。
なのでエリーもいつもの様にいたずらっぽくそれに乗っかってみる。
「そっかー、超正統派戦士のクーリア姉が目標だったあのイリス姉はもう居ないのね……」
「ふふ、戦い方も正統派とは少し違う形になりましたものね」
オリヴィアもそれを察したのか、流れに乗る。
そして、そんな一同を微笑ましい顔で見守っているマルス。
全員が茶化し終えたところで、イリスも口を開き始めた。
「もう、違うよ。ナディアさんに追いつきたいって言うのは、ウアカリの首長としての話。もちろん強さそのものもだけどさ」
そんな風に。
「へ? 首長として?」
その言葉が意外だったのか、エリーはそんな間の抜けた声を上げる。
「どうしたのエリーちゃん?」
「え、いや、ナディアさんって首長としては結構アレじゃないの?」
アレとはもちろん、宜しくないのではということだ。
自由過ぎる彼女は、修行の為に首長を投げ出して国を出たと言う。
それ以外にも、色々アレだ。
ライラを見れば襲いかかるし、レインさんレインさんと頭の八割はレインで埋まっている。
しかも、戦い方も戦士というには余りにも邪道。毒だろうが罠だろうが何でもアリ。戦いの中に自身の生を求める傾向の強いウアカリに於いて、戦いには相手の死しか求めない彼女はそれほど支持率は高くないと考えていた。
もちろん、強ければ許されるのがウアカリだ。
ナディアはその強さだけで首長の役割を果たしているのだと、エリーは失礼ながらそう考えていた。
その言葉の裏を正確に読み取ったイリスは苦笑いをしながら答える。
「あはは、ナディアさんは実はね、首長としての支持率凄く高かったんだよ」
「ああ、下手したらアタシより上だったな」
姉妹揃って、そんなことを言う。
超正統派、英雄ヴィクトリアの再来とまで言われたクーリアの支持率が高いのは容易に予想できる。
あの豪快で爽快なクーリアの戦いっぷりには、思わず見蕩れてしまう様な魅力がある。
実際の強さとしては現在ではナディアやイリスに遅れをとってしまっているものの、かつてのイリスの様にそれを理想として鍛錬しているウアカリ戦士達も多いはずだ。
自ら馬鹿を自称する彼女達にとって、分かりやすいのは間違いなくナディアではなくクーリアだと予想していたのに……。
「あ、もしかして、レイン様関連だったりしますの?」
まるで怪奇現象でも見ているかの様に不可解な顔をするエリーを置いて、オリヴィアがそんなことを口にする。
「そう、流石は現役のお姫様だねオリヴィアさん」
答えたイリスに、エリーは更に怪訝な顔を深める。
「ん? 師匠? どういうこと?」
「質問ですわ、エリーさん。ここウアカリで、お師匠様はどういう存在でしょうか?」
「最強の種馬」
オリヴィアの質問に、即答のエリー。
「……誰に似たのかしら?」
「オリ姉」
オリヴィアの質問に、即答のエリー。
「………………ご、ごほん。ここウアカリに於いて、お師匠様は、えーと、えーと」
「誰しもが求める史上最高の男だ」
なんと言うべきか悩むオリヴィアに、助け舟を出すクーリア。
「そう、それですわ」
「一緒じゃん」
ぽんと手を打つオリヴィアに、即答のエリー。
「……まあ、レイン様が罪な方だと言うのは分かっていました……。ともかく、わたくしはこう予想しましたわ」
そうしてオリヴィアは席を立ち、手を広げ、演説を開始する。
「今日からこのウアカリは、レインさんの組織した魔王討伐軍に参加することになりました。レインさんは言いました。お前達の力で魔王を討伐して欲しい。俺からの最後の願いだ。世界の命運はお前たちにかかっている。これが彼の最後の言葉です。彼の信じた私達の力で、なんとしても魔王を討伐しましょう。と、こんな感じでどうでしょう」
それくらいが、オリヴィアの予想だった。
「いや、師匠そんなこと言わないと思うけど……」
思わずエリーは突っ込む。
「ナディアさんなら言いますわ」
「……それもそうだね」
そう二人で納得していると、イリスは苦い顔をしながら笑う。
「あ、あはは。実はね、見事魔王を倒した者にはオリヴィアさんの持つアレを手に入れる権利がある……って」
それは、黒い剣ではなく。
エリーは、その内容を理解する。
「ほんと、めちゃくちゃだねナディアさん……」
「私は言ったよ。それはオリヴィアさんのものだって。でも、それでも支持は下がらなかったの」
「ウアカリは馬鹿ばっかりだからな。それが実在するってイリスが認めたものだから……。と言うか、ナディアはお前が言うまでそれの存在を知らなかったんだぞ……」
「え……?」
クーリアに言われ、自ら墓穴を掘っていたことを今になって知ったイリスは頭を抱える。
そして、そんな3人のやりとりを見ていたオリヴィアは急激に涙目になって……。
「こ、これはわたくしのものですわ! エリーさんにだってあげませんわ!!」
そう叫ぶ。
「いやいや、私は狙ってないから……。そもそもオリ姉から奪える人なんて今この世界に居ないから」
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