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幕間ー魔術師の奮闘
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宰相を輩出する公爵家。
それはとても冷たい家だった。
宰相になるために作られた子供。
王族に合わせて作られた子供。
兄であり、弟であり、私のことだ。
父は宰相だけあって忙しく、家に帰る事も少なければ、家にいる時間も少ない。
母も王妃に仕える側近の一人で、社交に公務にと忙しい。
政略結婚という冷たい仕組みの中でも、両親は成功例の一つだろう。
何故ならお互いに関心がないから。
そして、子供達にも一切の関心がなかった。
生まれた頃から、乳母が親代わりで、成長してからは家庭教師がその後を継いだ。
使用人達も、死なない程度に子供の面倒を看る。
兄も弟も静かで、三人兄弟全員が兄弟らしい交流などなかった。
知識は深まるが、対人相手には、その交流が円滑には行かない事に気づいたのは学園に通い始めてからだった。
言葉がきつい。
冷たい。
性格が悪い。
正しくても、その言い方はない。
意地悪だ。
そんな言葉たちは、私の言葉を理解出来ない馬鹿共が吐くものだとして、無視を貫いた。
冷たいなら、冷たくしてやろう。
お前達が望んだ私の姿だろう。
そういう風に切り捨てたのだ。
すっかりそれも板についてきた私の前に現れた春風のような女性が(以下略)
卒業パーティで、記憶を失くしてしまったミアに、私達は慌てふためいた。
でも、その記憶を失った彼女の指摘は、あまりにも的を射ていて、私たちも反論できないまま。
彼女は颯爽と消えてしまったのだ。
婚約者とは元々上手くいっていない。
婚約者どころか、うまく私と話が出来ていたのはミアとミアの周囲の友人達だけだ。
彼女が円滑剤となっていた。
一癖も二癖もある人間たちが、纏まっていられたのはミアの力でしかない。
私の周囲には、彼女を介さない何者も存在しない。
寂寥とした光景も、見慣れていたはずなのに。
ミアに出会ってから、その温かさや安らぎを知ってしまったらもう無理だった。
エルンストがミアが一人で冒険者になって旅立った事を伝えに来てくれる。
一人で、生命の危険がある職業を選んで、決意して旅立ったのだ。
私は自分が迷っていたのが恥ずかしくなった。
エルンストに頼み、婚約を円満に解消する為に、新たな婚約を結び直してもらう事にした。
家格はともかくとして、人格に問題のある私と距離を置きたい婚約者との利害は一致している。
一ヶ月もしない内に、アルクハイド王子が第二王子にその席を譲って、ミアの元へと旅立った。
そして、漸く私も旅に出る支度が整う。
婚約を解消し、王子に仕える者として傍に行くといえば、親は勝手にしろとあっさり言った。
それはそうだろう。
元々アルクハイド王子の為の子供であり、彼が消えるなら私が消えるのも構わないのだ。
親にとっては。
初めて、親の冷たさが嬉しいと思った。
愛しいミアの元へいけるのならば、他の誰から捨てられても構わない。
それはとても冷たい家だった。
宰相になるために作られた子供。
王族に合わせて作られた子供。
兄であり、弟であり、私のことだ。
父は宰相だけあって忙しく、家に帰る事も少なければ、家にいる時間も少ない。
母も王妃に仕える側近の一人で、社交に公務にと忙しい。
政略結婚という冷たい仕組みの中でも、両親は成功例の一つだろう。
何故ならお互いに関心がないから。
そして、子供達にも一切の関心がなかった。
生まれた頃から、乳母が親代わりで、成長してからは家庭教師がその後を継いだ。
使用人達も、死なない程度に子供の面倒を看る。
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知識は深まるが、対人相手には、その交流が円滑には行かない事に気づいたのは学園に通い始めてからだった。
言葉がきつい。
冷たい。
性格が悪い。
正しくても、その言い方はない。
意地悪だ。
そんな言葉たちは、私の言葉を理解出来ない馬鹿共が吐くものだとして、無視を貫いた。
冷たいなら、冷たくしてやろう。
お前達が望んだ私の姿だろう。
そういう風に切り捨てたのだ。
すっかりそれも板についてきた私の前に現れた春風のような女性が(以下略)
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でも、その記憶を失った彼女の指摘は、あまりにも的を射ていて、私たちも反論できないまま。
彼女は颯爽と消えてしまったのだ。
婚約者とは元々上手くいっていない。
婚約者どころか、うまく私と話が出来ていたのはミアとミアの周囲の友人達だけだ。
彼女が円滑剤となっていた。
一癖も二癖もある人間たちが、纏まっていられたのはミアの力でしかない。
私の周囲には、彼女を介さない何者も存在しない。
寂寥とした光景も、見慣れていたはずなのに。
ミアに出会ってから、その温かさや安らぎを知ってしまったらもう無理だった。
エルンストがミアが一人で冒険者になって旅立った事を伝えに来てくれる。
一人で、生命の危険がある職業を選んで、決意して旅立ったのだ。
私は自分が迷っていたのが恥ずかしくなった。
エルンストに頼み、婚約を円満に解消する為に、新たな婚約を結び直してもらう事にした。
家格はともかくとして、人格に問題のある私と距離を置きたい婚約者との利害は一致している。
一ヶ月もしない内に、アルクハイド王子が第二王子にその席を譲って、ミアの元へと旅立った。
そして、漸く私も旅に出る支度が整う。
婚約を解消し、王子に仕える者として傍に行くといえば、親は勝手にしろとあっさり言った。
それはそうだろう。
元々アルクハイド王子の為の子供であり、彼が消えるなら私が消えるのも構わないのだ。
親にとっては。
初めて、親の冷たさが嬉しいと思った。
愛しいミアの元へいけるのならば、他の誰から捨てられても構わない。
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