悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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公衆浴場と防疫

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デザート以外は食べないつもりでいたものの、マリアローゼは野菜を食べていない事に気づいて、差し出された野菜のテリーヌを自分の皿に1つだけ取り分けた。

兄達はその後も普通に食事を続け、メインのウナライスだけ、一皿ずつ配られた。
勿論、2食目のウナライスを兄達は事も無げに平らげる。

「美味しいですわねぇ」
「ええ、義姉上、マリアローゼは厨房に舞い降りた料理の女神と慕われているそうですよ」

(何ですかそれ!?
初耳なんですけど!?)

マリアローゼはあまりの言葉に口をはくはくと動かした。

「そんな、レイ様の買い被り過ぎですわ」

やっとの事で否定の言葉を口にするが、にこやかに爽やかにジェレイドが首を横に振る。

「僕じゃなくてユグムが言っていたんだよ。もっと調味料や香辛料を買い求めたいと力説されてね。少なくとも山椒は収穫を増やすつもりだし、土地を有効利用して色々な所に植えるつもりだよ。レモーヌもね」
「そ、それは嬉しゅうございますけれど……土地を有効利用……」

ジェレイドに言われた言葉に、マリアローゼはふと考え事を始めた。
明日は冒険者ギルドと孤児院へ行く予定となっている。
道中は馬車での移動になるし、そろそろ夜の勉強会以外にもこの地域の勉強も必要である。

「何か望みでもあるのかい?」
「……ええ、明日の予定は埋まっておりますが、明後日は何かございまして?」

一応何かしないといけない事があるのなら、更に後日に延ばしてもいいのだが、ジェレイドは首を横に振った。
そしてにっこり微笑む。

「君の魔法の先生はもう少し時間もかかるから、明後日の予定は特に無いよ」
「では、町の地図を下さいませ」

マリアローゼの望みを聞いて、ジェレイドは眉を跳ね上げた。

「ほう、何か建てるのかい?」
「いえ、まだ…知識不足ですので、もう有るかも知れませんし……」

もじもじと身体を揺らすマリアローゼの、いじらしい姿に、遠くでグフォ!という音がして、目の前でもジェレイドが笑顔のまま数秒間固まった。

「……はあ、生きてて良かった。で?勉強するより僕に聞いた方が早いよ!」

親指を立てて、ビッと自分をさすジェレイドに、マリアローゼは迷いつつも頷いた。

「公衆浴場を作っては如何かと思いまして」
「ほう。それはまだ無いな。グーラには確かあった筈だが、一度それで病気が蔓延したと聞いたことがある」

その言葉にマリアローゼは少し眉を顰めた。

「確かに、その懸念もございますので、防疫には気を使う事に致しましょう」
「で、どんな構想なんだい?」

促されてマリアローゼは続ける。

「1つは冒険者様の為の施設なので、ギルドの近くの郊外の土地か、孤児院の近くの土地で良いと思います。1つは、貴族の女性用の薬湯のお風呂で、同じ施設に女性用の無料のお風呂を作りたいのです」

「ふむ、料金は貴族の分で賄うと言う事だね?」
「はい。そして、もう一つは男性用のお風呂も同じ様に作りたいのですが、こちらは商業区域にした方が労働後に入りやすいと思います」

ジェレイドはマリアローゼの言葉にこくこくと頷いた。
そして、嬉しそうに目を細めて訊く。

「防疫について何か考えはあるかい?」
「貴族のお風呂の方では石鹸と洗髪剤を購入頂きます。持ち込んでも、店で預かっても構いません。庶民用のお風呂では紙石鹸をお配りしては如何でしょうか?お風呂にタイルで絵を描いて、まず身体を洗ってからお湯に浸かる事を徹底するのです。お湯は消毒効果もある薬湯を使えば問題ないかと」
「ふむ、流石だ、ローゼ。ブルーローズ商会の洗髪剤や洗顔料や石鹸を買わせる事で、宣伝効果にもなるね。香水も置こう」

そこまでは考えていなかったが、マリアローゼは満面の笑顔で頷いた。

「まあ……ローゼは天才なのかしら?わたくしの可愛い天使ちゃん……」

まだ5歳の娘が語った構想に、ミルリーリウムが早速親馬鹿を発揮したのである。
横ではジェレイドがうんうんと頷いている。

「町の人間を清潔に保つ事で病気も防ぐ、何とも慈悲深い行いですし、冬であっても芯まで温まれば風邪も減るでしょう。まさに天が遣わした天使ですね、義姉上!」

勿論物言わず給仕している使用人も、後ろで控えている従僕や執事も、貴族からの収入で庶民を支えると言う、全く逆の発想に驚きを隠せないでいた。
貴族とは庶民から搾り取り、貪るしかないと思われる存在である。
それなのに幼い姫君が、可愛らしい言葉で紡ぎだした提案は、貴族の金で庶民の健康を保つ行いなのだ。
改めて忠誠心を強くした使用人達の言葉が、町中に広がるのもそう遠くない未来なのである。
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