24 / 26
母は怪物から逃げ惑う
しおりを挟む
久しぶりのお茶会の招待に、リアーヌの気持ちは沈み切っていた。
同じ伯爵家の家門からの誘いの大きな理由はシヴィアだというのは分かっている。
将来の王妃かもしれず、最低でも女公爵になる優秀な娘。
王城への登城許可証を幼いながら与えられ、第一王子のご学友となっているのは周知の事実だ。
シヴィアと親しくなれば、彼女を介して王子とも親しくなれるかもしれない。
今すぐにはなれなくても、ただ仲良くなるだけでも恩恵は計り知れない。
母であり伯爵夫人でもあるリアーヌは付属品だ。
妹のフローレンスに至っては、更に付録の付録、だろう。
それでもドレスは新調せねばならず、顔を合わせたくないフローレンスと仕立て屋とで新しいドレスを仕立てる。
無難な装いを選び、晩餐用のドレスも幾つか仕立てた。
シヴィアも誘ったが、自分で用意できるので、と断られてしまっている。
お茶会も、勉強を優先させたいと断られてしまった。
「行きたくないわ………」
ぽつりと呟くが、夫のディーンも同意はしてくれないだろう。
社交は貴族を夫に持つ妻の仕事である。
最近、フローレンスが恐ろしくてなるべく顔を合わせないようにしていたのだが、どんどんディアドラの様に敵意をもって見てくるようになっていた。
「フローが王子殿下とお勉強できないのは、お母様のせいよ!」
そう言って本をぶつけられさえ、した。
何故、そんな事を言われなくてはならないのかも分からないまま、リアーヌは逃げ出してしまったのだ。
確かに、勉強しなくてもかまわないと思っていた。
どうせ伯爵家だって優秀な姉が継ぐのだし、学園に入る前に覚えるのはこの国の言語と礼儀作法だけでいい、と。
それは夫で現伯爵のディーンも同じ考えで、同じ事を言っていたのだ。
シヴィアだけは早々に子供でいる事を諦めて、早すぎる自立をしていただけ。
わたくしは、何も悪くない……。
シヴィアを欠いたまま、フローレンスとリアーヌはコーブス伯爵家の茶会に招かれていた。
伯爵家としては権力のある方で、屋敷も庭もそこそこ広い。
春の庭は花が咲き乱れていた。
「ようこそお出でくださいました。シヴィア嬢はやはりお忙しいのですわね」
「ええ、殿下が優秀だからと負けぬよう王城に通っていると申しておりましたわ」
ほほほ、と笑顔を交わしながら、茶会の席へと向かう。
夫人達の席の近くには子供達の食卓も設えられて、小さな紳士と淑女がお行儀よく椅子に座っている。
「初めまして、皆様。フローレンス・リナ・レミントンと申します」
可愛らしく小首を傾げて、スカートを広げて膝を折る淑女の礼は、お稽古でも何とか合格点を貰ったフローレンス。
愛らしいその姿に、令息達は期待を込めて目を輝かせた。
だが、その後起こる惨事を誰が予想しただろうか。
後々まで語り継がれるお茶会の幕が、静かに上がったのである。
同じ伯爵家の家門からの誘いの大きな理由はシヴィアだというのは分かっている。
将来の王妃かもしれず、最低でも女公爵になる優秀な娘。
王城への登城許可証を幼いながら与えられ、第一王子のご学友となっているのは周知の事実だ。
シヴィアと親しくなれば、彼女を介して王子とも親しくなれるかもしれない。
今すぐにはなれなくても、ただ仲良くなるだけでも恩恵は計り知れない。
母であり伯爵夫人でもあるリアーヌは付属品だ。
妹のフローレンスに至っては、更に付録の付録、だろう。
それでもドレスは新調せねばならず、顔を合わせたくないフローレンスと仕立て屋とで新しいドレスを仕立てる。
無難な装いを選び、晩餐用のドレスも幾つか仕立てた。
シヴィアも誘ったが、自分で用意できるので、と断られてしまっている。
お茶会も、勉強を優先させたいと断られてしまった。
「行きたくないわ………」
ぽつりと呟くが、夫のディーンも同意はしてくれないだろう。
社交は貴族を夫に持つ妻の仕事である。
最近、フローレンスが恐ろしくてなるべく顔を合わせないようにしていたのだが、どんどんディアドラの様に敵意をもって見てくるようになっていた。
「フローが王子殿下とお勉強できないのは、お母様のせいよ!」
そう言って本をぶつけられさえ、した。
何故、そんな事を言われなくてはならないのかも分からないまま、リアーヌは逃げ出してしまったのだ。
確かに、勉強しなくてもかまわないと思っていた。
どうせ伯爵家だって優秀な姉が継ぐのだし、学園に入る前に覚えるのはこの国の言語と礼儀作法だけでいい、と。
それは夫で現伯爵のディーンも同じ考えで、同じ事を言っていたのだ。
シヴィアだけは早々に子供でいる事を諦めて、早すぎる自立をしていただけ。
わたくしは、何も悪くない……。
シヴィアを欠いたまま、フローレンスとリアーヌはコーブス伯爵家の茶会に招かれていた。
伯爵家としては権力のある方で、屋敷も庭もそこそこ広い。
春の庭は花が咲き乱れていた。
「ようこそお出でくださいました。シヴィア嬢はやはりお忙しいのですわね」
「ええ、殿下が優秀だからと負けぬよう王城に通っていると申しておりましたわ」
ほほほ、と笑顔を交わしながら、茶会の席へと向かう。
夫人達の席の近くには子供達の食卓も設えられて、小さな紳士と淑女がお行儀よく椅子に座っている。
「初めまして、皆様。フローレンス・リナ・レミントンと申します」
可愛らしく小首を傾げて、スカートを広げて膝を折る淑女の礼は、お稽古でも何とか合格点を貰ったフローレンス。
愛らしいその姿に、令息達は期待を込めて目を輝かせた。
だが、その後起こる惨事を誰が予想しただろうか。
後々まで語り継がれるお茶会の幕が、静かに上がったのである。
58
あなたにおすすめの小説
王宮勤めにも色々ありまして
あとさん♪
恋愛
スカーレット・フォン・ファルケは王太子の婚約者の専属護衛の近衛騎士だ。
そんな彼女の元婚約者が、園遊会で見知らぬ女性に絡んでる·····?
おいおい、と思っていたら彼女の護衛対象である公爵令嬢が自らあの馬鹿野郎に近づいて·····
危険です!私の後ろに!
·····あ、あれぇ?
※シャティエル王国シリーズ2作目!
※拙作『相互理解は難しい(略)』の2人が出ます。
※小説家になろうにも投稿しております。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
隠された第四皇女
山田ランチ
恋愛
ギルベアト帝国。
帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。
皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。
ヒュー娼館の人々
ウィノラ(娼館で育った第四皇女)
アデリータ(女将、ウィノラの育ての親)
マイノ(アデリータの弟で護衛長)
ディアンヌ、ロラ(娼婦)
デルマ、イリーゼ(高級娼婦)
皇宮の人々
ライナー・フックス(公爵家嫡男)
バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人)
ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝)
ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長)
リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属)
オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟)
エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟)
セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃)
ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡)
幻の皇女(第四皇女、死産?)
アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補)
ロタリオ(ライナーの従者)
ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長)
レナード・ハーン(子爵令息)
リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女)
ローザ(リナの侍女、魔女)
※フェッチ
力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。
ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。
公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる
夏菜しの
恋愛
十七歳の時、生涯初めての恋をした。
燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。
しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。
あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。
気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。
コンコン。
今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。
さてと、どうしようかしら?
※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
噂の聖女と国王陛下 ―婚約破棄を願った令嬢は、溺愛される
柴田はつみ
恋愛
幼い頃から共に育った国王アランは、私にとって憧れであり、唯一の婚約者だった。
だが、最近になって「陛下は聖女殿と親しいらしい」という噂が宮廷中に広まる。
聖女は誰もが認める美しい女性で、陛下の隣に立つ姿は絵のようにお似合い――私など必要ないのではないか。
胸を締め付ける不安に耐えかねた私は、ついにアランへ婚約破棄を申し出る。
「……私では、陛下の隣に立つ資格がありません」
けれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「お前は俺の妻になる。誰が何と言おうと、それは変わらない」
噂の裏に隠された真実、幼馴染が密かに抱き続けていた深い愛情――
一度手放そうとした運命の絆は、より強く絡み合い、私を逃がさなくなる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる