25 / 26
恐怖のお茶会
しおりを挟む
コーブス伯爵家の令嬢のビアンカは、祖母からある話を聞かされていた。
昔々、とても卑しい身分の男爵令嬢が、公爵様に取り入って結婚したのです。
学園に通っていた時も、酷く意地悪な令嬢で、何人もの令息を侍らせていたのですが、誰も彼女と結婚してくれる者はいませんでした。
同じように身分の低い男性からの申し出には、決して首を縦に振らなかったからです。
彼女は侍女として働いていた公爵家で、産後の肥立ちが悪く臥せっていた夫人が死んだ後、まんまとその後釜に座ったのですが、夜会に訪れる度に誰かの悪口をいい、誰かに意地悪をしました。
だから、その悪魔のような女性、ディアドラは皆に嫌われてしまったのです。
お祖母様は、お気に入りのドレスにワインをかけられて、着られなくなってしまったのよ。
いいこと?
レミントン伯爵のご令嬢には気を付けなさい、ビアンカ。
ビアンカはお茶会が始まる少し前、仲の良いご令嬢達に注意喚起をした。
今日招待されているレミントン家のご令嬢には気を付けて、と。
そして、現れた令嬢は可愛らしく挨拶をして、お祖母様に聞いていた禍々しい黒髪の紫の瞳の悪女、とは全然違う金色の髪のご令嬢で、ビアンカはなあんだ、と安心した。
「今日が初めてのお茶会なの?」
お茶会を開催する主催の娘だから、ビアンカはそう会話を切り出した。
フローレンスは可愛らしい笑みを向けて、頷く。
それからちょっと困った顔をした。
「お母様は社交が得意ではないの。だから、私も機会がなくて」
思ったより上品な言葉で話す事に興味を持った、寄り親の侯爵家から来た令嬢、ヒルデが質問をする。
「お姉様のシヴィア様は第一王子殿下と婚約されているとお聞きしてますけれど、お茶会にはいらっしゃらないの?」
「お姉様は王子殿下とは婚約してませんの。でもご学友でいらして、お勉強が忙しくてお茶会にはあまり参加出来ないようです。でも、いつかは我が家でもお茶会を開いて、王子殿下もご招待致しますわ」
皆に注目されたのを良い事に、フローレンスは胸を張って実現出来るかどうかも分からないことを言ってのけた。
だが、まだ幼く多感な少女たちは、まあ、と目をキラキラさせてその話に食いついた。
「その際は是非、わたくしも参加したいです!」
「私も!」
「招待状を送ってください!」
令嬢達にもてはやされて、フローレンスはにこにこと上機嫌で微笑む。
誰も彼もが自分にすり寄る事が気持ち良かった。
けれど逆に、本日の主催であるビアンカは主導権を奪われたようで何だか面白くない。
思わず、言ってしまった。
「伯爵家のお茶会に、王子殿下が来るわけないでしょ」
その言葉に小さな子供達も顔を見合わせる。
それもそうか、と納得しかけたが、いい気分に水を掛けられたフローレンスが負けじと声を上げる。
「伯爵家のお茶会じゃないわ!公爵家のお茶会だもの!」
「この子達は男爵家と子爵家なんだから、公爵家のお茶会に行ける訳ないでしょ!」
「招待すれば来られるじゃない!」
言い合いになった二人を、周囲はあわあわと見つめる。
一瞬詰まったビアンカは、フフンと鼻を鳴らして言った。
「貴女は伯爵家でしょ、公爵になるのはお姉様なんだから、貴女が茶会を開く訳じゃないわ!」
「わたくしがお姉様にお願いするもの!」
苛々のつのったフローレンスはそこで、怒りのあまり手元にあった紅茶をビアンカにぶちまけてしまった。
「きゃあ!……貴女、お祖母様の言った通りだったわ!男爵令嬢の悪女、ディアドラと一緒じゃない!」
「違う!」
更に激高したフローレンスは持っていた茶器を思い切り、ビアンカに投げつけた。
「ぎゃっ」
余りの痛みに悲鳴を上げたビアンカに、周囲も流石に大きな悲鳴を上げた。
「いた……痛い……っうあああああん」
「フン。顔に傷がついた貴女は傷物令嬢ね!いい気味だわ!」
大人達が驚いて駆け付けたが、怒れるフローレンスと大泣きするビアンカと脅える子供達を見て、事態を何となく察した。
近づきたくない、でも行かなければ、と近づいたリアーヌは、フローレンスの怒り狂った瞳と目が合うと恐怖と緊張のあまり、倒れてしまったのである。
昔々、とても卑しい身分の男爵令嬢が、公爵様に取り入って結婚したのです。
学園に通っていた時も、酷く意地悪な令嬢で、何人もの令息を侍らせていたのですが、誰も彼女と結婚してくれる者はいませんでした。
同じように身分の低い男性からの申し出には、決して首を縦に振らなかったからです。
彼女は侍女として働いていた公爵家で、産後の肥立ちが悪く臥せっていた夫人が死んだ後、まんまとその後釜に座ったのですが、夜会に訪れる度に誰かの悪口をいい、誰かに意地悪をしました。
だから、その悪魔のような女性、ディアドラは皆に嫌われてしまったのです。
お祖母様は、お気に入りのドレスにワインをかけられて、着られなくなってしまったのよ。
いいこと?
レミントン伯爵のご令嬢には気を付けなさい、ビアンカ。
ビアンカはお茶会が始まる少し前、仲の良いご令嬢達に注意喚起をした。
今日招待されているレミントン家のご令嬢には気を付けて、と。
そして、現れた令嬢は可愛らしく挨拶をして、お祖母様に聞いていた禍々しい黒髪の紫の瞳の悪女、とは全然違う金色の髪のご令嬢で、ビアンカはなあんだ、と安心した。
「今日が初めてのお茶会なの?」
お茶会を開催する主催の娘だから、ビアンカはそう会話を切り出した。
フローレンスは可愛らしい笑みを向けて、頷く。
それからちょっと困った顔をした。
「お母様は社交が得意ではないの。だから、私も機会がなくて」
思ったより上品な言葉で話す事に興味を持った、寄り親の侯爵家から来た令嬢、ヒルデが質問をする。
「お姉様のシヴィア様は第一王子殿下と婚約されているとお聞きしてますけれど、お茶会にはいらっしゃらないの?」
「お姉様は王子殿下とは婚約してませんの。でもご学友でいらして、お勉強が忙しくてお茶会にはあまり参加出来ないようです。でも、いつかは我が家でもお茶会を開いて、王子殿下もご招待致しますわ」
皆に注目されたのを良い事に、フローレンスは胸を張って実現出来るかどうかも分からないことを言ってのけた。
だが、まだ幼く多感な少女たちは、まあ、と目をキラキラさせてその話に食いついた。
「その際は是非、わたくしも参加したいです!」
「私も!」
「招待状を送ってください!」
令嬢達にもてはやされて、フローレンスはにこにこと上機嫌で微笑む。
誰も彼もが自分にすり寄る事が気持ち良かった。
けれど逆に、本日の主催であるビアンカは主導権を奪われたようで何だか面白くない。
思わず、言ってしまった。
「伯爵家のお茶会に、王子殿下が来るわけないでしょ」
その言葉に小さな子供達も顔を見合わせる。
それもそうか、と納得しかけたが、いい気分に水を掛けられたフローレンスが負けじと声を上げる。
「伯爵家のお茶会じゃないわ!公爵家のお茶会だもの!」
「この子達は男爵家と子爵家なんだから、公爵家のお茶会に行ける訳ないでしょ!」
「招待すれば来られるじゃない!」
言い合いになった二人を、周囲はあわあわと見つめる。
一瞬詰まったビアンカは、フフンと鼻を鳴らして言った。
「貴女は伯爵家でしょ、公爵になるのはお姉様なんだから、貴女が茶会を開く訳じゃないわ!」
「わたくしがお姉様にお願いするもの!」
苛々のつのったフローレンスはそこで、怒りのあまり手元にあった紅茶をビアンカにぶちまけてしまった。
「きゃあ!……貴女、お祖母様の言った通りだったわ!男爵令嬢の悪女、ディアドラと一緒じゃない!」
「違う!」
更に激高したフローレンスは持っていた茶器を思い切り、ビアンカに投げつけた。
「ぎゃっ」
余りの痛みに悲鳴を上げたビアンカに、周囲も流石に大きな悲鳴を上げた。
「いた……痛い……っうあああああん」
「フン。顔に傷がついた貴女は傷物令嬢ね!いい気味だわ!」
大人達が驚いて駆け付けたが、怒れるフローレンスと大泣きするビアンカと脅える子供達を見て、事態を何となく察した。
近づきたくない、でも行かなければ、と近づいたリアーヌは、フローレンスの怒り狂った瞳と目が合うと恐怖と緊張のあまり、倒れてしまったのである。
65
あなたにおすすめの小説
王宮勤めにも色々ありまして
あとさん♪
恋愛
スカーレット・フォン・ファルケは王太子の婚約者の専属護衛の近衛騎士だ。
そんな彼女の元婚約者が、園遊会で見知らぬ女性に絡んでる·····?
おいおい、と思っていたら彼女の護衛対象である公爵令嬢が自らあの馬鹿野郎に近づいて·····
危険です!私の後ろに!
·····あ、あれぇ?
※シャティエル王国シリーズ2作目!
※拙作『相互理解は難しい(略)』の2人が出ます。
※小説家になろうにも投稿しております。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
隠された第四皇女
山田ランチ
恋愛
ギルベアト帝国。
帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。
皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。
ヒュー娼館の人々
ウィノラ(娼館で育った第四皇女)
アデリータ(女将、ウィノラの育ての親)
マイノ(アデリータの弟で護衛長)
ディアンヌ、ロラ(娼婦)
デルマ、イリーゼ(高級娼婦)
皇宮の人々
ライナー・フックス(公爵家嫡男)
バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人)
ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝)
ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長)
リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属)
オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟)
エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟)
セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃)
ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡)
幻の皇女(第四皇女、死産?)
アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補)
ロタリオ(ライナーの従者)
ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長)
レナード・ハーン(子爵令息)
リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女)
ローザ(リナの侍女、魔女)
※フェッチ
力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。
ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。
公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる
夏菜しの
恋愛
十七歳の時、生涯初めての恋をした。
燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。
しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。
あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。
気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。
コンコン。
今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。
さてと、どうしようかしら?
※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
噂の聖女と国王陛下 ―婚約破棄を願った令嬢は、溺愛される
柴田はつみ
恋愛
幼い頃から共に育った国王アランは、私にとって憧れであり、唯一の婚約者だった。
だが、最近になって「陛下は聖女殿と親しいらしい」という噂が宮廷中に広まる。
聖女は誰もが認める美しい女性で、陛下の隣に立つ姿は絵のようにお似合い――私など必要ないのではないか。
胸を締め付ける不安に耐えかねた私は、ついにアランへ婚約破棄を申し出る。
「……私では、陛下の隣に立つ資格がありません」
けれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「お前は俺の妻になる。誰が何と言おうと、それは変わらない」
噂の裏に隠された真実、幼馴染が密かに抱き続けていた深い愛情――
一度手放そうとした運命の絆は、より強く絡み合い、私を逃がさなくなる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる