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帝国令嬢のやらかしと抗議文祭り
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当然、彼らに侍る男性達の婚約者達も黙ってはいない。
アーベライン公爵家には山と抗議文が届けられた。
だが、娘が可愛い公爵夫妻は逆に、「娘に一方的に惚れた婚約者とそれに嫉妬して、娘を虐める愚かな令嬢達」というように冤罪をでっちあげたらしい。
とはいえ、協力するのは寄り子の家門や派閥の一部だけなので、話にならなかったという。
敵対派閥からは槍玉に上げられ、冤罪の抗議文を受け取った令嬢達の親は縁組を解消し始めて、事態は急転した。
まさか縁組を外されると思っていなかった令息達の間で、シャルロッテ嬢を巡る争いまで起きて、決闘騒ぎにまで発展したのである。
まあ、後がないから必死よね。
腐っても公爵令嬢の相手に選ばれれば、所有している爵位と領地の一部がついてくるもの。
シャルロッテ嬢本人はといえば、争う男達を前に、ご満悦だったろう。
涙を流しながらも、本気で止める事はしない。
「わたくしは選べない」
「わたくしの為に争わないで」
などと場を盛り上げていたという。
とうとう、周囲の男性諸君は風紀を乱すとして学園を退学処分になり、実家からも廃嫡され始め。
第三皇子すらも同じ道を辿り、シャルロッテ嬢一人が学園に取り残された。
それからはアルノートに言い寄っても断られ、泣いても慰める人は居らず笑い者となり、親に訴えたところでバルシュミーデ公爵家としてだけでなく、帝室からも警告を受けて接近禁止を言い渡されたのである。
以降、学園でシャルロッテ嬢に近づく男性はおらず、話しかけても逃げられてしまい。
夜会でも、彼女に話しかけるのは爵位も無い問題ある家の令息達ばかり。
さすがに、シャルロッテ嬢も食指が動かない相手ばかりだったのだろう。
そこで白羽の矢が立ったのは、かつて婚約話が持ち上がった他国の高位令息であるディオンルーク様。
悪評が届いていないと思ったのだろうか。
もしくは、同じ手が通用すると思ったか。
確かに、調べなければこんなに早く実情を知る機会はなかったかもしれない。
流石にこれは、サラセニア王室とネペンテス王室からの抗議にして貰った方が良いだろう、と私は判断した。
国の政略であるから、帝国が妨害に入ったと言われてもおかしくはない。
合わせて帝室へも抗議をして貰う方が良いか。
私はディオンルーク様から借りた手紙束と、レオナ様の手紙を持って侯爵夫人の私室へと向かった。
抗議文祭りである。
夜会以降、抗議文を送りまくる事態になっていた。
だが今回は私やディオンルーク様というよりは、侯爵家と王室のお話なのでお任せである。
更に数週間後、結婚式を二か月後に控えたある日、帝室からの謝罪状が届いた。
流石に事態を重く見た帝室は、国内の混乱のみならず、他国からも抗議を受けるにあたって、公爵位を剝奪し事実上の降爵となった。
他に所有していたのは伯爵位と子爵位だったので、今はアーベライン伯爵である。
更に国の規定で伯爵が所有して良い領地の範囲を超えた為に、一部は帝室へと返上となった。
廃嫡された第三皇子はその土地で、伯爵位を与えられて余生を過ごす事となるらしい。
実害を伴った訳でもないただの恋文なので、国内の処理と罰で手打ちとなったのである。
早速レオナ様にもお礼と、結果をお伝えした。
ついでに、聞いてみた。
帝室が意外にも温情があるな、と思ったのだ。
伯爵位を賜った第三皇子にシャルロッテ嬢が嫁げば、他家とはいえ、事実上アーベライン家が割譲して娘に土地を与えたのと同じ事となる。
それだけでなく、現在渡せる爵位が子爵なのに対し、皇子の所有は伯爵なので、そちらも公爵として分け与えた時と同じ条件なのだ。
だが、結果は。
第三皇子もシャルロッテ嬢もお互い結婚は望まないという。
真実の愛、ではなかったらしい。
昔話にもあるけれど、欲をかいて、かき続けた人が、元の貧乏になる話。
シャルロッテ嬢にとっては、学園での生活が人生で一番輝いていただろう。
でも、もうその日々は戻らない。
それに、たとえ彼女は誰かの妻になったとしても、社交界に出ればやはり、新たな男性を求めるだろう。
平穏無事にこの先暮らせるとは到底思えない。
一通り事件が収束して、ディオンルーク様と私は庭の木の下でのんびりと過ごしていた。
「甘やかされ過ぎなければ、幸せに過ごせてたかもしれないのにな」
「そうですね。何だか……見た目が美しければ、それだけ幸せなのかもしれないと思っていたのが幻想だったと分かりました。不幸を引き寄せてしまう事もあるのだと」
寝転がったまま、ディオンルーク様が手を伸ばして、私の髪を撫でた。
「君の髪は穏やかな金で、影は灰色に染まる、まるで月の様だ。瞳は夜空の様な深い藍色。夜空に浮かぶ月。君は俺の月の女神だ」
一瞬、何を言われたのだか分からなかった。
完全に、頭から湯気が出ていると思う。
それくらい顔が熱い。
「ま、まあ詩人ですわね、ディオ様……!」
言いながら思わず必死になって、顔を両手で覆った。
絶対に恥ずかしい顔をしているもの。
見せられない程、駄目な顔をしているに決まっているもの。
「一生懸命、練った甲斐があったよ。君は俺にとって、美しい女性だという事を忘れないで欲しい」
ああ。
いつまでも美醜に拘り続けているのは私だ。
美しくあろうとする心と、自分を卑下する心は違う。
傲慢にならないのと同じように、私は卑屈でいるべきでもない。
「ディオ様のお言葉、心に刻みました」
笑顔を向ければ、ディオンルーク様も優しい笑顔で頷き返した。
アーベライン公爵家には山と抗議文が届けられた。
だが、娘が可愛い公爵夫妻は逆に、「娘に一方的に惚れた婚約者とそれに嫉妬して、娘を虐める愚かな令嬢達」というように冤罪をでっちあげたらしい。
とはいえ、協力するのは寄り子の家門や派閥の一部だけなので、話にならなかったという。
敵対派閥からは槍玉に上げられ、冤罪の抗議文を受け取った令嬢達の親は縁組を解消し始めて、事態は急転した。
まさか縁組を外されると思っていなかった令息達の間で、シャルロッテ嬢を巡る争いまで起きて、決闘騒ぎにまで発展したのである。
まあ、後がないから必死よね。
腐っても公爵令嬢の相手に選ばれれば、所有している爵位と領地の一部がついてくるもの。
シャルロッテ嬢本人はといえば、争う男達を前に、ご満悦だったろう。
涙を流しながらも、本気で止める事はしない。
「わたくしは選べない」
「わたくしの為に争わないで」
などと場を盛り上げていたという。
とうとう、周囲の男性諸君は風紀を乱すとして学園を退学処分になり、実家からも廃嫡され始め。
第三皇子すらも同じ道を辿り、シャルロッテ嬢一人が学園に取り残された。
それからはアルノートに言い寄っても断られ、泣いても慰める人は居らず笑い者となり、親に訴えたところでバルシュミーデ公爵家としてだけでなく、帝室からも警告を受けて接近禁止を言い渡されたのである。
以降、学園でシャルロッテ嬢に近づく男性はおらず、話しかけても逃げられてしまい。
夜会でも、彼女に話しかけるのは爵位も無い問題ある家の令息達ばかり。
さすがに、シャルロッテ嬢も食指が動かない相手ばかりだったのだろう。
そこで白羽の矢が立ったのは、かつて婚約話が持ち上がった他国の高位令息であるディオンルーク様。
悪評が届いていないと思ったのだろうか。
もしくは、同じ手が通用すると思ったか。
確かに、調べなければこんなに早く実情を知る機会はなかったかもしれない。
流石にこれは、サラセニア王室とネペンテス王室からの抗議にして貰った方が良いだろう、と私は判断した。
国の政略であるから、帝国が妨害に入ったと言われてもおかしくはない。
合わせて帝室へも抗議をして貰う方が良いか。
私はディオンルーク様から借りた手紙束と、レオナ様の手紙を持って侯爵夫人の私室へと向かった。
抗議文祭りである。
夜会以降、抗議文を送りまくる事態になっていた。
だが今回は私やディオンルーク様というよりは、侯爵家と王室のお話なのでお任せである。
更に数週間後、結婚式を二か月後に控えたある日、帝室からの謝罪状が届いた。
流石に事態を重く見た帝室は、国内の混乱のみならず、他国からも抗議を受けるにあたって、公爵位を剝奪し事実上の降爵となった。
他に所有していたのは伯爵位と子爵位だったので、今はアーベライン伯爵である。
更に国の規定で伯爵が所有して良い領地の範囲を超えた為に、一部は帝室へと返上となった。
廃嫡された第三皇子はその土地で、伯爵位を与えられて余生を過ごす事となるらしい。
実害を伴った訳でもないただの恋文なので、国内の処理と罰で手打ちとなったのである。
早速レオナ様にもお礼と、結果をお伝えした。
ついでに、聞いてみた。
帝室が意外にも温情があるな、と思ったのだ。
伯爵位を賜った第三皇子にシャルロッテ嬢が嫁げば、他家とはいえ、事実上アーベライン家が割譲して娘に土地を与えたのと同じ事となる。
それだけでなく、現在渡せる爵位が子爵なのに対し、皇子の所有は伯爵なので、そちらも公爵として分け与えた時と同じ条件なのだ。
だが、結果は。
第三皇子もシャルロッテ嬢もお互い結婚は望まないという。
真実の愛、ではなかったらしい。
昔話にもあるけれど、欲をかいて、かき続けた人が、元の貧乏になる話。
シャルロッテ嬢にとっては、学園での生活が人生で一番輝いていただろう。
でも、もうその日々は戻らない。
それに、たとえ彼女は誰かの妻になったとしても、社交界に出ればやはり、新たな男性を求めるだろう。
平穏無事にこの先暮らせるとは到底思えない。
一通り事件が収束して、ディオンルーク様と私は庭の木の下でのんびりと過ごしていた。
「甘やかされ過ぎなければ、幸せに過ごせてたかもしれないのにな」
「そうですね。何だか……見た目が美しければ、それだけ幸せなのかもしれないと思っていたのが幻想だったと分かりました。不幸を引き寄せてしまう事もあるのだと」
寝転がったまま、ディオンルーク様が手を伸ばして、私の髪を撫でた。
「君の髪は穏やかな金で、影は灰色に染まる、まるで月の様だ。瞳は夜空の様な深い藍色。夜空に浮かぶ月。君は俺の月の女神だ」
一瞬、何を言われたのだか分からなかった。
完全に、頭から湯気が出ていると思う。
それくらい顔が熱い。
「ま、まあ詩人ですわね、ディオ様……!」
言いながら思わず必死になって、顔を両手で覆った。
絶対に恥ずかしい顔をしているもの。
見せられない程、駄目な顔をしているに決まっているもの。
「一生懸命、練った甲斐があったよ。君は俺にとって、美しい女性だという事を忘れないで欲しい」
ああ。
いつまでも美醜に拘り続けているのは私だ。
美しくあろうとする心と、自分を卑下する心は違う。
傲慢にならないのと同じように、私は卑屈でいるべきでもない。
「ディオ様のお言葉、心に刻みました」
笑顔を向ければ、ディオンルーク様も優しい笑顔で頷き返した。
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