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第1章 すべてはスマホ誤作動から
3.真面目が踏み外した日
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「あ゛ーーーーっっ、何なの!あのハゲ親父!!!揚げ足取りばっかして!何回同じことを言えば気が済むの!!それにみんなして全部私に厄介ごと押し付けて!!」
今、私は地域の都市計画関係の部署にいる。事務採用のため開発許可や建築許可申請などの処理。いる部署なのでとにかく中立を心がけている。
今日やってきたのは再開発工事反対派の会長のおっさんだった。
「大丈夫?ちょっと僕会議があって」と心配そうに言いながらまるで同席するそぶりもしてくれなかった課長に「なんとか説得して帰ってもらいます」といい子で微笑んだ私、えらい。
とはいえ怖いので広めの会議室でがっつり机を挟んで距離を取って扉も開けっぱなしにして、毎度バンバン机叩いて唾飛ばしてくるおっさんに、また一から同じことを説明しつつ一方的な主張を1時間聞き、意見聴取の機会は与えましたよ~と実績を積み、この会議室使いますから~と追い出して帰ってもらった。
なんか吐き捨てていたけど、住民請求が怖くて公務員やってられるか!
「さすが瀬川さん!クレーマーじいさんも見事にさばいて憧れっす」
「ダメよ、榛名さん。クレーマーなんて言ったら。市民の貴重な意見と捉えないと。どこで聞かれているのかもわからないんだし」
今時、年下男性にくん付けはセクハラと取られることもある。男女平等、そのとおり。
でもそのでっかいガタイを持ってるなら喋らなくていいから、隣にいるだけでもいいから、一緒にいてほしかったな。
あのおじさんが来た瞬間、トイレに逃げ込んだの見てたからね。
ニコニコと人当たりはいいが厄介ごとから逃げる後輩に口だけの苦言を呈し、遅れて昼休みに入る。でも午後の窓口の時間まで公務員が外にいるとクレームされることもあるから急いでコンビニに駆け込んでひとけのない奥のベンチに座った。
そして、周りに誰もいないか確認して、イライラを叫んだ。
喫煙者は嫌なことがあればニコチンを吸うと気が落ち着くと言うが、あいにく私は体に悪いことをしたくないので喫煙はしない。
代わりにパンを口に突っ込みながら行儀悪くスマホを取り出した。
午後も「真面目で頼れる瀬川さん」の仮面を被るためにはここでドーパミン浴びないと無理。無理ったら無理。おっさんの「女のくせに生意気なんだよ」っていう胸元に向けられた気持ち悪い視線を架空のイケメンドSの淫語責めで忘れないと無理!!
ここで一人ひたってたって、受動喫煙みたいに人に迷惑をかけないんだからお天道様も許してくれるでしょ!?うんそう、そうに違いない。
昨日の夜、寝落ちてしまったブックマークボタンを押す。
外で昼間。そんなところでR18小説。
背徳感にゾクゾクとする。
悪癖と思うけど、やなことあるとちょっと道から悪いことしてる自分に酔いしれてしまう。
「あれ、土木課のおねーさん、ですよね?奇遇ですね!」
「ひぃえっ?!」
夢中でスクロールしていると、突然後ろから声がかかった。
心臓が一瞬止まったのかと思うほどにびくつく。
慌ててばちーんっとスマホカバーで画面を閉じたら勢い余ってスマホを手から落としてしまった。結構な勢いで。すぽーんって飛んで行った。
「あぁああっ」
「あ、俺が拾いますよー」
声をかけてきた男性が親切にも私のスマホを拾ってくれるために腰をかがめた。
さらりと流れる肩までの鮮やかな金髪。無造作に後ろで縛ったちょっと可愛らしいピンクのゴム。明らかな長身で、もうジャケット無しではいられない季節というのに未だ半袖の黒Tシャツから伸びる日焼けした野太い腕。
どう見ても、ここ最近土木課にきては、びっくりするほど汚い字で書類確認者を悩ませ、書き直しを指示すれば「これはどう書いたら……?」「漢字がわからない……」と悲しそうな表情で窓口を長時間占領する青年。ちなみに窓口の向こうの執務スペース側ではイケメンだがあまりに馬鹿で残念すぎると言われている。
こんなイケメンでも常用漢字がわからないというだけであんなに嘲笑されるんだ……と可哀想になるほどのこき下ろし具合である。
そして、結果、相手にするのが面倒だからと『瀬川案件』に任命された彼。
「はいどーぞ……、って、え?」
爪が白く見えるほどの浅黒い肌の大きな手が私の赤い合皮カバーに覆われたスマホを拾ってくれたと思ったら、ぱかりと手帳カバーが開いてるではないか。
しかもそこではっきり見える画面はロックがかかったことを示す黒ではなく、白光していて……画面にはびっしり文字が見え……ってえええええええ?!?!
「これ………あの、ほ、本当におねーさんが読んでた、の?」
大きな目をまん丸に見開いたイケメンの顔が目の前にある。
真面目が詰んだ瞬間だった。
今、私は地域の都市計画関係の部署にいる。事務採用のため開発許可や建築許可申請などの処理。いる部署なのでとにかく中立を心がけている。
今日やってきたのは再開発工事反対派の会長のおっさんだった。
「大丈夫?ちょっと僕会議があって」と心配そうに言いながらまるで同席するそぶりもしてくれなかった課長に「なんとか説得して帰ってもらいます」といい子で微笑んだ私、えらい。
とはいえ怖いので広めの会議室でがっつり机を挟んで距離を取って扉も開けっぱなしにして、毎度バンバン机叩いて唾飛ばしてくるおっさんに、また一から同じことを説明しつつ一方的な主張を1時間聞き、意見聴取の機会は与えましたよ~と実績を積み、この会議室使いますから~と追い出して帰ってもらった。
なんか吐き捨てていたけど、住民請求が怖くて公務員やってられるか!
「さすが瀬川さん!クレーマーじいさんも見事にさばいて憧れっす」
「ダメよ、榛名さん。クレーマーなんて言ったら。市民の貴重な意見と捉えないと。どこで聞かれているのかもわからないんだし」
今時、年下男性にくん付けはセクハラと取られることもある。男女平等、そのとおり。
でもそのでっかいガタイを持ってるなら喋らなくていいから、隣にいるだけでもいいから、一緒にいてほしかったな。
あのおじさんが来た瞬間、トイレに逃げ込んだの見てたからね。
ニコニコと人当たりはいいが厄介ごとから逃げる後輩に口だけの苦言を呈し、遅れて昼休みに入る。でも午後の窓口の時間まで公務員が外にいるとクレームされることもあるから急いでコンビニに駆け込んでひとけのない奥のベンチに座った。
そして、周りに誰もいないか確認して、イライラを叫んだ。
喫煙者は嫌なことがあればニコチンを吸うと気が落ち着くと言うが、あいにく私は体に悪いことをしたくないので喫煙はしない。
代わりにパンを口に突っ込みながら行儀悪くスマホを取り出した。
午後も「真面目で頼れる瀬川さん」の仮面を被るためにはここでドーパミン浴びないと無理。無理ったら無理。おっさんの「女のくせに生意気なんだよ」っていう胸元に向けられた気持ち悪い視線を架空のイケメンドSの淫語責めで忘れないと無理!!
ここで一人ひたってたって、受動喫煙みたいに人に迷惑をかけないんだからお天道様も許してくれるでしょ!?うんそう、そうに違いない。
昨日の夜、寝落ちてしまったブックマークボタンを押す。
外で昼間。そんなところでR18小説。
背徳感にゾクゾクとする。
悪癖と思うけど、やなことあるとちょっと道から悪いことしてる自分に酔いしれてしまう。
「あれ、土木課のおねーさん、ですよね?奇遇ですね!」
「ひぃえっ?!」
夢中でスクロールしていると、突然後ろから声がかかった。
心臓が一瞬止まったのかと思うほどにびくつく。
慌ててばちーんっとスマホカバーで画面を閉じたら勢い余ってスマホを手から落としてしまった。結構な勢いで。すぽーんって飛んで行った。
「あぁああっ」
「あ、俺が拾いますよー」
声をかけてきた男性が親切にも私のスマホを拾ってくれるために腰をかがめた。
さらりと流れる肩までの鮮やかな金髪。無造作に後ろで縛ったちょっと可愛らしいピンクのゴム。明らかな長身で、もうジャケット無しではいられない季節というのに未だ半袖の黒Tシャツから伸びる日焼けした野太い腕。
どう見ても、ここ最近土木課にきては、びっくりするほど汚い字で書類確認者を悩ませ、書き直しを指示すれば「これはどう書いたら……?」「漢字がわからない……」と悲しそうな表情で窓口を長時間占領する青年。ちなみに窓口の向こうの執務スペース側ではイケメンだがあまりに馬鹿で残念すぎると言われている。
こんなイケメンでも常用漢字がわからないというだけであんなに嘲笑されるんだ……と可哀想になるほどのこき下ろし具合である。
そして、結果、相手にするのが面倒だからと『瀬川案件』に任命された彼。
「はいどーぞ……、って、え?」
爪が白く見えるほどの浅黒い肌の大きな手が私の赤い合皮カバーに覆われたスマホを拾ってくれたと思ったら、ぱかりと手帳カバーが開いてるではないか。
しかもそこではっきり見える画面はロックがかかったことを示す黒ではなく、白光していて……画面にはびっしり文字が見え……ってえええええええ?!?!
「これ………あの、ほ、本当におねーさんが読んでた、の?」
大きな目をまん丸に見開いたイケメンの顔が目の前にある。
真面目が詰んだ瞬間だった。
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