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第2章 リスクしかないワンナイト?
11.優しくてエロ可愛い彼女 ①
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◆◆◆◆
誠って思ってたのと違う。
いくら顔が良くてもここまでバカだと引くわあ。一般常識もないの?
俺の顔と体だけ見て寄ってきた女は大概そう言う。
同じレベルの日本語能力しかない女もいたが、自己中心的にしか考えられないおかしな奴が多くて、俺の方が擦り寄られてもお断りだ。
俺ってあれと同じレベルなのか……。
そう落ち込むことも多くて、なるべく文字が必要でない職業を選んだ。
本当は人の役に立つのが好きだから福祉の仕事とかがしたかったけれど、まず問題が読めないから試験に受からない。補助員もやろうかしたけれど引継書がろくに読めない。
なんでこの世には漢字なんてものがあるんだ。
全然覚えられない。
『だからちゃんと勉強しなさいってあれほど言ったでしょ!』
お母さん、ごめん。
こちらの社会に放り出されてから何度そう思ったことか。
勉強はしようとしたんだけど、いっぱい線があるともう全然わかんないんだよ。同じ字のくせして読み方も違うし、もう意味が分からない。
真っ当な職で働かなければお前は息子と認めないからな!
そう父と呼ぶべき人に叱咤されてはや数年。
テレビで見たホストとかいう職種なら、こちらでも顔と口先だけでいけると思っていたのを見透かされたのだ。
お母さんを心配させないためにも早くお金を貯めたい。
外国人も多い建設業なら日当もいいし、字も少ないと思って長続きしていたのに。
いきなり事務員をやっていたおばちゃんが横領してたとかでいなくなって、社長は心労がたたって心筋梗塞で入院、昔経理をしていた奥さんは運転資金が回らないと青ざめて寝込み。
そんな中、直近で振り込みが期待できる案件の建築申請が漏れていたのが発覚。このままだと給料が払えなくて外国人たちは逃げるだろうし(むしろすでに何人か逃げた)、案件も遂行できなくなる。
社長は、素性も不確かな俺を採用してくれて、クソな父親よりよほど息子みたいに可愛がってくれた。俺がやらなくてどうする。
父親に頼むことも考えたが、まずは!と思い、必死で読めない申請手引を片手に埋めて役所に駆け込んだ。
帰りに社長の着替えを持って入院費の相談もしなきゃと思いつつ、そもそも場違いで困惑していたところ、目をハートマークにした受付の人が媚びた声で寄ってきた。
そこでホッとしたのも束の間、俺は自分が思うよりだいぶ阿呆だったらしい。
何度説明されてもわからない。いや、何とかはわかるんだけど、上手く書けない。図面なら読めるのに!計算もできるのに!何でそんな難しい字を書いて、難しい理由を書く必要があるんだよ!
ついには「こんなこと書けないとかふざけてるんですか?」と睨みつけられた。
難しいのは俺だけみたいだ。
受付の人は嫌悪も顕に俺を追い返そうと始めた。
専門家に頼めってできたらそうしている。
急いでるんだって。
不備のある書類は受け付けられないので、の一点張りだった女は、先ほどまでとは打って変わってありありと面倒臭いを顔に出していた。
いつもすぐ俺のことをバカにするちょっと顔の可愛い女たちと同じ。
くそ、漢字さえこの世になければ。いや日本語の言い回しって無駄に難しくてわかりにくいから漢字がなくても苦手だけど。
でも、途方に暮れていた俺に、女神が降りた。
サラサラの真っ直ぐな黒髪を一つに縛って肩に流している赤い眼鏡のお姉さん。瀬川さんと呼ばれていた。化粧は薄くてちょっと神経質そうな顔にビクついたが、ごねにごねた俺に仕方ないなあと絆されてくれて、丁寧に相手をしてくれた。さっきの若い人よりよっぽどわかりやすく優しい声で説明してくれて、ぐずぐずする俺に「いいですよ、ここまで苦手なのにそんなに必死ってことは、本当に困っているんですね」と最後まで付き合ってくれて、施工日付を見て許可も急いで回してくれると言った。
そのあと、お姉さんに対してさっきの塩対応女が忌々しげな視線を向けているのを見た。
ああやって自分の利益しか考えない手のひら返しをする女は本当に大嫌いだと思う。
それに対して気にした様子もなく淡々と席でパソコンに向かう女神。
社長のところに行かなきゃいけないのにしばらくじっと見ていた。
ずーっと集中して書類とパソコンに向かって、でも時々受付の方を見て、ダルそうにしている受付女に対してまごついてる人を助けてあげている。
「えっ?」「なに?」「こわ……」「殴り込み?」
俺のそばを通る人がそんな声をかけていく声も気にならなくて。
警備の人に「なにか?」と声をかけられるたびに色々場所を変わりながら閉庁までそっと彼女を見守っていた。
それから社長にはすごく喜ばれて。頑張ってくれてありがとうと涙ながらに感謝された。
奥さんも回復して書類仕事をやってくれるようになったけど、どうしてもあの瀬川さんに会いたくて、土木課に出す書類だけは俺が書くと頼み込んで持っていっては、瀬川さんに困った顔をされながら対応してもらった。
いつも優しい瀬川さん。どんどん俺の胸は高鳴るばかりだ。
遠くで見るとキツネ顔の瀬川さんは近くで見ると整った顔をしている。
肌は白くてきめ細かくて、下を向いた時のほっぺたは案外ふっくらとしている。ペンを持つ指は細くて長い。薄い透明なマニキュアだけの爪はほんのりしたピンク色でとても綺麗。下を向くまつ毛はけばけばしく盛ってないのに長くて繊細。俺を見ると上目遣いになる細長い形の目は黒目が大きい。紅を塗ってない自然色の唇は少しカサついているのも手抜きで可愛い。首は細くて折れそうで、襟ぐりの空いたカットソーのときに髪がさらりと鎖骨に流れるのが色っぽい。時々鬱陶しそうに下を向きすぎて下がった眼鏡を掛け直す仕草もなんだかエロく見えて、もう勃ちそうしかない。いいや、勃っていた。
いつでも仕事に真剣な瀬川さんに申し訳ない30パー。ムラムラするから触りたい70パー。
変態でもいい。何度このカウンターに押し付けてアンアン言わせる妄想したことが。
でも洗練で潔癖な雰囲気のある瀬川さんに下心見せたら二度と対応してくれないだろうな。
もっとチャラチャラした子なら電話番号渡すんだけど、ゴミを見るような目で見られそう。
………瀬川さんなら見られたい。
どうにかこうにかそんな欲望を殺してお近づきになれる正攻法はないものかと悩んでいたある日、瀬川さんが公園のベンチで一人ご飯を食べていたところに遭遇した。
これは神がくれたチャンスでは!
喜び勇んで声を掛けに行ったところ、瀬川さんのとんでもない性癖を知ってしまった、とまあそういう訳である。
誠って思ってたのと違う。
いくら顔が良くてもここまでバカだと引くわあ。一般常識もないの?
俺の顔と体だけ見て寄ってきた女は大概そう言う。
同じレベルの日本語能力しかない女もいたが、自己中心的にしか考えられないおかしな奴が多くて、俺の方が擦り寄られてもお断りだ。
俺ってあれと同じレベルなのか……。
そう落ち込むことも多くて、なるべく文字が必要でない職業を選んだ。
本当は人の役に立つのが好きだから福祉の仕事とかがしたかったけれど、まず問題が読めないから試験に受からない。補助員もやろうかしたけれど引継書がろくに読めない。
なんでこの世には漢字なんてものがあるんだ。
全然覚えられない。
『だからちゃんと勉強しなさいってあれほど言ったでしょ!』
お母さん、ごめん。
こちらの社会に放り出されてから何度そう思ったことか。
勉強はしようとしたんだけど、いっぱい線があるともう全然わかんないんだよ。同じ字のくせして読み方も違うし、もう意味が分からない。
真っ当な職で働かなければお前は息子と認めないからな!
そう父と呼ぶべき人に叱咤されてはや数年。
テレビで見たホストとかいう職種なら、こちらでも顔と口先だけでいけると思っていたのを見透かされたのだ。
お母さんを心配させないためにも早くお金を貯めたい。
外国人も多い建設業なら日当もいいし、字も少ないと思って長続きしていたのに。
いきなり事務員をやっていたおばちゃんが横領してたとかでいなくなって、社長は心労がたたって心筋梗塞で入院、昔経理をしていた奥さんは運転資金が回らないと青ざめて寝込み。
そんな中、直近で振り込みが期待できる案件の建築申請が漏れていたのが発覚。このままだと給料が払えなくて外国人たちは逃げるだろうし(むしろすでに何人か逃げた)、案件も遂行できなくなる。
社長は、素性も不確かな俺を採用してくれて、クソな父親よりよほど息子みたいに可愛がってくれた。俺がやらなくてどうする。
父親に頼むことも考えたが、まずは!と思い、必死で読めない申請手引を片手に埋めて役所に駆け込んだ。
帰りに社長の着替えを持って入院費の相談もしなきゃと思いつつ、そもそも場違いで困惑していたところ、目をハートマークにした受付の人が媚びた声で寄ってきた。
そこでホッとしたのも束の間、俺は自分が思うよりだいぶ阿呆だったらしい。
何度説明されてもわからない。いや、何とかはわかるんだけど、上手く書けない。図面なら読めるのに!計算もできるのに!何でそんな難しい字を書いて、難しい理由を書く必要があるんだよ!
ついには「こんなこと書けないとかふざけてるんですか?」と睨みつけられた。
難しいのは俺だけみたいだ。
受付の人は嫌悪も顕に俺を追い返そうと始めた。
専門家に頼めってできたらそうしている。
急いでるんだって。
不備のある書類は受け付けられないので、の一点張りだった女は、先ほどまでとは打って変わってありありと面倒臭いを顔に出していた。
いつもすぐ俺のことをバカにするちょっと顔の可愛い女たちと同じ。
くそ、漢字さえこの世になければ。いや日本語の言い回しって無駄に難しくてわかりにくいから漢字がなくても苦手だけど。
でも、途方に暮れていた俺に、女神が降りた。
サラサラの真っ直ぐな黒髪を一つに縛って肩に流している赤い眼鏡のお姉さん。瀬川さんと呼ばれていた。化粧は薄くてちょっと神経質そうな顔にビクついたが、ごねにごねた俺に仕方ないなあと絆されてくれて、丁寧に相手をしてくれた。さっきの若い人よりよっぽどわかりやすく優しい声で説明してくれて、ぐずぐずする俺に「いいですよ、ここまで苦手なのにそんなに必死ってことは、本当に困っているんですね」と最後まで付き合ってくれて、施工日付を見て許可も急いで回してくれると言った。
そのあと、お姉さんに対してさっきの塩対応女が忌々しげな視線を向けているのを見た。
ああやって自分の利益しか考えない手のひら返しをする女は本当に大嫌いだと思う。
それに対して気にした様子もなく淡々と席でパソコンに向かう女神。
社長のところに行かなきゃいけないのにしばらくじっと見ていた。
ずーっと集中して書類とパソコンに向かって、でも時々受付の方を見て、ダルそうにしている受付女に対してまごついてる人を助けてあげている。
「えっ?」「なに?」「こわ……」「殴り込み?」
俺のそばを通る人がそんな声をかけていく声も気にならなくて。
警備の人に「なにか?」と声をかけられるたびに色々場所を変わりながら閉庁までそっと彼女を見守っていた。
それから社長にはすごく喜ばれて。頑張ってくれてありがとうと涙ながらに感謝された。
奥さんも回復して書類仕事をやってくれるようになったけど、どうしてもあの瀬川さんに会いたくて、土木課に出す書類だけは俺が書くと頼み込んで持っていっては、瀬川さんに困った顔をされながら対応してもらった。
いつも優しい瀬川さん。どんどん俺の胸は高鳴るばかりだ。
遠くで見るとキツネ顔の瀬川さんは近くで見ると整った顔をしている。
肌は白くてきめ細かくて、下を向いた時のほっぺたは案外ふっくらとしている。ペンを持つ指は細くて長い。薄い透明なマニキュアだけの爪はほんのりしたピンク色でとても綺麗。下を向くまつ毛はけばけばしく盛ってないのに長くて繊細。俺を見ると上目遣いになる細長い形の目は黒目が大きい。紅を塗ってない自然色の唇は少しカサついているのも手抜きで可愛い。首は細くて折れそうで、襟ぐりの空いたカットソーのときに髪がさらりと鎖骨に流れるのが色っぽい。時々鬱陶しそうに下を向きすぎて下がった眼鏡を掛け直す仕草もなんだかエロく見えて、もう勃ちそうしかない。いいや、勃っていた。
いつでも仕事に真剣な瀬川さんに申し訳ない30パー。ムラムラするから触りたい70パー。
変態でもいい。何度このカウンターに押し付けてアンアン言わせる妄想したことが。
でも洗練で潔癖な雰囲気のある瀬川さんに下心見せたら二度と対応してくれないだろうな。
もっとチャラチャラした子なら電話番号渡すんだけど、ゴミを見るような目で見られそう。
………瀬川さんなら見られたい。
どうにかこうにかそんな欲望を殺してお近づきになれる正攻法はないものかと悩んでいたある日、瀬川さんが公園のベンチで一人ご飯を食べていたところに遭遇した。
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