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第五章 真の求愛と番
22. 求愛してたしされていた、とな?
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◇◆◇◆◇◆◇
誤解に次ぐ誤解に、双方が頭をかかえたのは、ラーダの暴挙がおさまったその1時間後だった。
「まさか食べ物を食べさせるのが求婚だなんて」
「まさか初対面で匂いを嗅いで体を撫で回す男に善意で菓子を提供しただけなんて…危機感なさすぎだろう」
しかしよりダメージを負っていたのはどちらかといえばラーダであったと思う。
それはそうである。
ラーダはずっと最初から両思いと信じていたのだ。
しかしミディアにも言い分はある。
「だって、最初にラーダが言ったんじゃないですか。
君のような女性に狼藉を働かないって。こんなヒョロ長くて色気もない女にそりゃそうだよねって」
「何を言っている!ミディアは誰より魅力的だ!いい匂いだし!」
ラーダがイライラしたように頭を掻きむしっていた。
また匂いか。
ミディアは半笑いになった。
「ラーダは本当に甘いものが好きなんですね」
「違う!番の匂いなんだ!!たまたま立ち寄った街で偶然君の匂いに気がついてそれからもう大変で…!」
「番の匂い?番って……獣人族で言う奥さんって意味ですよね?」
首を傾げるとラーダは愕然とした顔になる。
「番はただの結婚相手じゃない。もっとずっと特別な……そんなことも俺は説明してなかったのか?」
金色から琥珀色に戻った切れ長の瞳がうるりと潤んでいた。耳も尻尾もぺしょりと潰れている。
分厚い筋肉に覆われた体も一回り縮こまってしまったようだ。
「でも………じゃあなんであんなにひっついていても何も怒らなかったんだ……俺は番として受け入れてくれているからとばかり…」
恨みがましいというか、萎れ切った視線にミディアは慌てた。
確かにミディアとてラーダの異様に近い距離感はおかしいと思っていた。
思っていたのだが。
「あ、その、えっと。ラーダはその、甘いお菓子が好きだけど、ほら、男の人が甘いもの食べるのは軟弱とかおじいちゃんたちよく言うから、そう言う感じでお菓子に飢えてたからお菓子の匂いが私からするのかなと思いまして……ラーダのいい匂いって、だからお菓子の甘い匂いの話しているとばかり?」
「そんな適当な理由であんなに匂いをかがれてべったりくっつかれて平然とした顔をしてるなんて危機感なさすぎだろう!!」
「ひゃっ」
ガヴっと吠えるように怒鳴られて、ビクッと今度はミディアが縮こまる。
「………ゔう……すまない。感情のコントロールがまだ…」
威嚇したことを恥じるようにラーダは顔を覆ったが、ちらりとその手の隙間から戸惑うミディアを見ると押さえられないようにぷるぷると震え出した。
「かわい…!ああもうっ、初めて見た時からミディアはとんでもなく可愛いんだ!物陰からついていったらあちらこちらでテキパキと買い物をして時折店主と笑ってる姿がそれはもう可愛くて!そのうちにでっかい荷物をもってよろよろしてたから意を決して声をかけようとしたらいきなりぶつかってきて気を失って、寝顔ももうそれは可愛くて!!」
大声で可愛いを連呼されてミディアは、羞恥に頬を染めた。可愛いなんてアデルの専売特許でしかない。似合わないことこの上ない。
顔から火が出ているようだった。
「かかかわいいわけない……」
「ああその顔ももう可愛い。舐めていいか。ずっとずっと背中を見てる時から襲いかかるのをどれだけ我慢して追いかけて話すのに持ち込む方法を考え続けたか」
「ひぇっ?……ん?ラーダ、それは初対面のときから覗き見してたということですか?」
「そう言われればそうとしか答えられない」
あまりにもキッパリ言われるので、ミディアはそっか、と納得してしまった。
「だいたい番に会えるなんて奇跡みたいなものなんだ。3代に1人くらい見つけられるかどうか。それがいきなり降ってわいてきて、そのまま目の前で腹を見せてくれて、家にも入れてくれて、挙句に餌付けまでしてくれるなんてそれはもう奇跡に次ぐ奇跡だ!浮かれるなって方が無理だろう!」
早口で捲し立てるラーダに、あれ、こんな人だっけ?とミディアは驚きつつ、どぅどぅ、と肩をたたく。
しかしラーダの目がすわった。
そういえば触られると襲いたくなるから話が終わるまでは触るな、といわれたことを思い出して慌てて手を離す。
離したら離したで恨めしそうな表情でついでに歯軋りするのもやめてほしい。
ついでにさほどありもしない胸をじっと見下ろす視線もやめてほしい。
ミディアはさっと借りているシャツの前を手でぎゅっと押さえた。
ラーダがぐるる、と唸って、時折金色に光る琥珀色の瞳でじぃと合わせ目を見ているのがわかる。
その熱視線に布地が透過されそうだ。
なんならチラリと見た彼のそこは明らかに盛り上がっていた。
話をするなら服をちゃんと着ればよかったと思いつつ、そもそも彼がミディアが元々着ていた他の男の匂いのする(古着屋で買った)服を怒りに任せてビリビリに破いていたことも思い出す。
ラーダがそういう意味でこの貧弱な自分を見ているのだと、既に散々な目にあわされたくせに、ようやくじわりじわりとミディアは認識し始めた。
心臓が跳ねすぎて壊れそうだ。
「え、ええと、でも、アデルを見て顔を赤くしてそっぽ向いてたじゃないですか。だからてっきりアデルに一目惚れしたんだと」
「は?なんで俺がミディアを虐げていたあんな性悪に?」
これだけははっきりさせねば、とミディアが尋ねれば、唖然とされた。
明確にラーダの顔には嫌悪の表情が浮かんでいる。
「あいつの匂い、気持ち悪かったんだよ。鼻が曲がりそうだったから息を止めて顔を背けていただけだ」
「え……?ま、毎回なんか急に耳がピンってしてたのは?なんか急にクールキャラみたくなってたのは?カッコつけてたんじゃなくて?」
「?べたべたとたくさんの男の匂いが混ざってて、それにあいつ自身も腐ったドブみたいな匂いがしてとてもじゃないが口を開けなかった」
「え、顔が赤くなってたのは?」
「よくわからないが息を止めてたからじゃないか?同じ空間で息を吸えたものじゃなかった。でもあそこはミディアの家だから……家族というので必死で我慢していた」
「はえ……??」
「それに比べてミディアの匂いはとてもいい。甘くてふわふわして。酔ったみたいになるんだ」
自分から近づかないで、と言ったくせに、ラーダは結局手を伸ばしてミディアを抱き寄せた。
流れるような仕草で、すん、とまた首筋に鼻を近づけてぐりぐりと獣耳を押し付けてくる。
なんならそこも当たって……いや押し当てにきている。
「今は俺の匂いも混ざっていて最高だ」
「ひえっ!卑猥なこというのやめてください!」
「なんで。もっと混ぜた……いや、違う。話をしよう。もう誤解はしたくない」
またはっと理性が戻ってきたらしい。
自分の頬を大きな手のひらでべちべちと叩いている。
赤くなってしまっていてとても痛そうである。
ラーダは赤い頬のまま、狼獣人の性質を含めてようやくまともに教えてくれた。
誤解に次ぐ誤解に、双方が頭をかかえたのは、ラーダの暴挙がおさまったその1時間後だった。
「まさか食べ物を食べさせるのが求婚だなんて」
「まさか初対面で匂いを嗅いで体を撫で回す男に善意で菓子を提供しただけなんて…危機感なさすぎだろう」
しかしよりダメージを負っていたのはどちらかといえばラーダであったと思う。
それはそうである。
ラーダはずっと最初から両思いと信じていたのだ。
しかしミディアにも言い分はある。
「だって、最初にラーダが言ったんじゃないですか。
君のような女性に狼藉を働かないって。こんなヒョロ長くて色気もない女にそりゃそうだよねって」
「何を言っている!ミディアは誰より魅力的だ!いい匂いだし!」
ラーダがイライラしたように頭を掻きむしっていた。
また匂いか。
ミディアは半笑いになった。
「ラーダは本当に甘いものが好きなんですね」
「違う!番の匂いなんだ!!たまたま立ち寄った街で偶然君の匂いに気がついてそれからもう大変で…!」
「番の匂い?番って……獣人族で言う奥さんって意味ですよね?」
首を傾げるとラーダは愕然とした顔になる。
「番はただの結婚相手じゃない。もっとずっと特別な……そんなことも俺は説明してなかったのか?」
金色から琥珀色に戻った切れ長の瞳がうるりと潤んでいた。耳も尻尾もぺしょりと潰れている。
分厚い筋肉に覆われた体も一回り縮こまってしまったようだ。
「でも………じゃあなんであんなにひっついていても何も怒らなかったんだ……俺は番として受け入れてくれているからとばかり…」
恨みがましいというか、萎れ切った視線にミディアは慌てた。
確かにミディアとてラーダの異様に近い距離感はおかしいと思っていた。
思っていたのだが。
「あ、その、えっと。ラーダはその、甘いお菓子が好きだけど、ほら、男の人が甘いもの食べるのは軟弱とかおじいちゃんたちよく言うから、そう言う感じでお菓子に飢えてたからお菓子の匂いが私からするのかなと思いまして……ラーダのいい匂いって、だからお菓子の甘い匂いの話しているとばかり?」
「そんな適当な理由であんなに匂いをかがれてべったりくっつかれて平然とした顔をしてるなんて危機感なさすぎだろう!!」
「ひゃっ」
ガヴっと吠えるように怒鳴られて、ビクッと今度はミディアが縮こまる。
「………ゔう……すまない。感情のコントロールがまだ…」
威嚇したことを恥じるようにラーダは顔を覆ったが、ちらりとその手の隙間から戸惑うミディアを見ると押さえられないようにぷるぷると震え出した。
「かわい…!ああもうっ、初めて見た時からミディアはとんでもなく可愛いんだ!物陰からついていったらあちらこちらでテキパキと買い物をして時折店主と笑ってる姿がそれはもう可愛くて!そのうちにでっかい荷物をもってよろよろしてたから意を決して声をかけようとしたらいきなりぶつかってきて気を失って、寝顔ももうそれは可愛くて!!」
大声で可愛いを連呼されてミディアは、羞恥に頬を染めた。可愛いなんてアデルの専売特許でしかない。似合わないことこの上ない。
顔から火が出ているようだった。
「かかかわいいわけない……」
「ああその顔ももう可愛い。舐めていいか。ずっとずっと背中を見てる時から襲いかかるのをどれだけ我慢して追いかけて話すのに持ち込む方法を考え続けたか」
「ひぇっ?……ん?ラーダ、それは初対面のときから覗き見してたということですか?」
「そう言われればそうとしか答えられない」
あまりにもキッパリ言われるので、ミディアはそっか、と納得してしまった。
「だいたい番に会えるなんて奇跡みたいなものなんだ。3代に1人くらい見つけられるかどうか。それがいきなり降ってわいてきて、そのまま目の前で腹を見せてくれて、家にも入れてくれて、挙句に餌付けまでしてくれるなんてそれはもう奇跡に次ぐ奇跡だ!浮かれるなって方が無理だろう!」
早口で捲し立てるラーダに、あれ、こんな人だっけ?とミディアは驚きつつ、どぅどぅ、と肩をたたく。
しかしラーダの目がすわった。
そういえば触られると襲いたくなるから話が終わるまでは触るな、といわれたことを思い出して慌てて手を離す。
離したら離したで恨めしそうな表情でついでに歯軋りするのもやめてほしい。
ついでにさほどありもしない胸をじっと見下ろす視線もやめてほしい。
ミディアはさっと借りているシャツの前を手でぎゅっと押さえた。
ラーダがぐるる、と唸って、時折金色に光る琥珀色の瞳でじぃと合わせ目を見ているのがわかる。
その熱視線に布地が透過されそうだ。
なんならチラリと見た彼のそこは明らかに盛り上がっていた。
話をするなら服をちゃんと着ればよかったと思いつつ、そもそも彼がミディアが元々着ていた他の男の匂いのする(古着屋で買った)服を怒りに任せてビリビリに破いていたことも思い出す。
ラーダがそういう意味でこの貧弱な自分を見ているのだと、既に散々な目にあわされたくせに、ようやくじわりじわりとミディアは認識し始めた。
心臓が跳ねすぎて壊れそうだ。
「え、ええと、でも、アデルを見て顔を赤くしてそっぽ向いてたじゃないですか。だからてっきりアデルに一目惚れしたんだと」
「は?なんで俺がミディアを虐げていたあんな性悪に?」
これだけははっきりさせねば、とミディアが尋ねれば、唖然とされた。
明確にラーダの顔には嫌悪の表情が浮かんでいる。
「あいつの匂い、気持ち悪かったんだよ。鼻が曲がりそうだったから息を止めて顔を背けていただけだ」
「え……?ま、毎回なんか急に耳がピンってしてたのは?なんか急にクールキャラみたくなってたのは?カッコつけてたんじゃなくて?」
「?べたべたとたくさんの男の匂いが混ざってて、それにあいつ自身も腐ったドブみたいな匂いがしてとてもじゃないが口を開けなかった」
「え、顔が赤くなってたのは?」
「よくわからないが息を止めてたからじゃないか?同じ空間で息を吸えたものじゃなかった。でもあそこはミディアの家だから……家族というので必死で我慢していた」
「はえ……??」
「それに比べてミディアの匂いはとてもいい。甘くてふわふわして。酔ったみたいになるんだ」
自分から近づかないで、と言ったくせに、ラーダは結局手を伸ばしてミディアを抱き寄せた。
流れるような仕草で、すん、とまた首筋に鼻を近づけてぐりぐりと獣耳を押し付けてくる。
なんならそこも当たって……いや押し当てにきている。
「今は俺の匂いも混ざっていて最高だ」
「ひえっ!卑猥なこというのやめてください!」
「なんで。もっと混ぜた……いや、違う。話をしよう。もう誤解はしたくない」
またはっと理性が戻ってきたらしい。
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