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何も考えない 何も知らない

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 永遠の若さを手に入れて図に乗っていたらしい。
真夜中の路地裏で素っ裸で我に返って一番に思ったこと。

「アリス姉さんは姉さんじゃない…!!」ぶつぶつ 呟くのはしょうがないと思う。素っ裸の原因はまず自分なのだが他人のせいにしたいお年頃なのだ(精神年齢=見た目)

 凄くいい匂いがしたのだ、気が付いた時は求めることに必死で 一滴たりとも溢す事なく 摂取したい!手に入れたいと 相手の反応関係なく童貞か!と馬鹿にされるぐらい必死に求めた。思い出しただけで また ヤバイ。
路地裏で暗闇でよかった…本当に。多分 普段の古都なら人はこの時間でも居るだろうし100%警ら隊に連れて行かれるだろう。

 100を超えるジジイの全裸はさぞ古都の方々の失笑を頂けるだろう。

 はた と そうだ ジジイになったのだ。

 暗闇に慣れた目で己を見下ろすといつもの身体だ。手だって皺なんてない。顔を触った感じいつもの若者の顔であろう すべすべした肌に口周りに無精髭を感じる。

 そもそも ジジイが思い出したぐらいで現象は起きないだろう。

 うん。うん?夢?

 しかし 現実は全裸の男が路地裏で1人居るし、唇に残る感触もある。

 前にもよく似たことがあった気がする。

 永遠の若さを手に入れたあの時。薬を決め過ぎて善悪なんて存在してなく 毎日毎日 薬かアルコール 女しか摂取してないあの時。

 あの時だって なんで ああなったんだっけ

知ろうとしなかった 知りたくなかった。今がよければよかったし 辛いからこれ以上不幸になりたくなかった だから 考えることも放棄した ある日。

 気づいたら やたら爽やかな気持ちになって目が覚めたら 知らない街の路地裏で居た。

 あれからは地獄だった。生き地獄てあれだと思う。今までどうやって生きていたか全く思い出せない上に空腹という本能が今まで働いてなかった分動きだし 路地裏から動けない。その上 知らない街の人の目目目

 見た目で化粧の濃いマダムに拾ってもらいヒモをし、次の人へ 働かなくてもいい身分に見えるかも知れないが タダより安いものはない。好きでもないマダム達に媚びをうり、彼女たちが欲しがる愛を囁き 与える。真夜中のベッドの中の彼女たちからは 禿げた化粧と年をとると男だけではない 女だって加齢が臭いにあらわれる。
トイレに入り暫く呻く。
それでも それ以外の生き方を知らないから繰り返していく 次第に年をとらないことに気づき化け物呼ばわりをされ 次の街に行く。

 繰り返し繰り返し、そんなときにアリス姉さんに拾われた。いつもどおり ヒモになるんだろうと 何も考えず 言われるがまま 今の職場に行った。
 初めて 働く をした。昔はしていたのかもしれないが昔過ぎて忘れていた。
 ヒモじゃなく時間に働くは大変だが 居場所が出来た気がした。

 店長はなんだかんだと口は悪いが面倒見がいいし 図に乗ったんだと気づいたときはアリス姉さんを怒らしたと 今 気づいた。

 暗い路地裏で素っ裸な人間は 取り敢えず帰る事にした。警ら隊に見つかる前に家に帰らないと。きっと鍵は開いているバーに。
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