雲外に蒼天を望む(5/25更新)

愛情ノンストップ

　美空の友人の一人である美浦伊織が、美空と春陽の住居に転がり込んできた。シェルター扱いされるのを通算するのは、もう諦めた。一応理由は聞く。妻の紫が互いの肉体にフルネームを彫ろうと言い出して、伊織に一切の相談もなく家に彫り師を連れ込んできた上、伊織の尻に自分の名前を彫るからパンツを脱げと迫ってきたらしい。

「一生他人の前で下着が脱げない男にしてやる」

　脱がしにかかる彼女を振り切って、貴重品を仕込んである服を靴のみで何とか逃げてきたらしい。

「……壮絶だね」
「ホントよねぇ？！　勘弁してよぉ……もし紫ちゃんが来ても絶対バラさないでお願いします！　そして匿って下さい！」
「伊織ちゃんの奥さんはもう止めようないからなぁ……」

　悲痛な伊織を哀れに眺めながらも、美空と春陽は数ヶ月前、窓ガラスを割って家に突入してきた伊織のパートナーの事を思い返している。きっと家の周りに地雷を配置しても彼女を止める事はできないだろう。どんなトラップも高確率で進撃の八頭身レディに破壊される未来しか見えない。何度か割られた事のあるバルコニー向きの大きな光取りガラス窓を、防弾ガラスに交換するか否か相談したばかりである。春陽は恋人の友人関係が心配でならない。