後輩の夜事情(2/5更新)

狂言巡

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転機

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「喜秋くんて、もしかしてうちの事好きなん?」

 介抱されて、その礼をして、印象が薄れないように細長く交流を維持していた。

「骨が折れたわ」

 向けていた好意をやっと意識されたのに、まず得たのは脱力感だった。褪めたわけではない。ストライプ柄のワンピースの女。絶世の美女ではないが、醜いと厭う人間は少ないだろう、人受けのいい容貌。愛想も要領もいい、引く手数多だろう。

「喜秋くん、」

 ぴたりと腕に肩がくっついた。

「ブラのホックとれてもた。つけ直してほしな?」

 違うそうじゃない。全く期待していなかったわけでもないが。こういう、職業柄ハニトラめいた誘いは初めてではない。鈴のような目を三日月の形に細めて小首を傾げる。凍り付いたように動けず、まるで射すくめられたように斜め下からの視線をそらせない。男の脆弱と愚直を、憐れんで慈愛に包んで絡め取る女の微笑みだった。
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