16 / 24
転機
しおりを挟む
「喜秋くんて、もしかしてうちの事好きなん?」
介抱されて、その礼をして、印象が薄れないように細長く交流を維持していた。
「骨が折れたわ」
向けていた好意をやっと意識されたのに、まず得たのは脱力感だった。褪めたわけではない。ストライプ柄のワンピースの女。絶世の美女ではないが、醜いと厭う人間は少ないだろう、人受けのいい容貌。愛想も要領もいい、引く手数多だろう。
「喜秋くん、」
ぴたりと腕に肩がくっついた。
「ブラのホックとれてもた。つけ直してほしな?」
違うそうじゃない。全く期待していなかったわけでもないが。こういう、職業柄ハニトラめいた誘いは初めてではない。鈴のような目を三日月の形に細めて小首を傾げる。凍り付いたように動けず、まるで射すくめられたように斜め下からの視線をそらせない。男の脆弱と愚直を、憐れんで慈愛に包んで絡め取る女の微笑みだった。
介抱されて、その礼をして、印象が薄れないように細長く交流を維持していた。
「骨が折れたわ」
向けていた好意をやっと意識されたのに、まず得たのは脱力感だった。褪めたわけではない。ストライプ柄のワンピースの女。絶世の美女ではないが、醜いと厭う人間は少ないだろう、人受けのいい容貌。愛想も要領もいい、引く手数多だろう。
「喜秋くん、」
ぴたりと腕に肩がくっついた。
「ブラのホックとれてもた。つけ直してほしな?」
違うそうじゃない。全く期待していなかったわけでもないが。こういう、職業柄ハニトラめいた誘いは初めてではない。鈴のような目を三日月の形に細めて小首を傾げる。凍り付いたように動けず、まるで射すくめられたように斜め下からの視線をそらせない。男の脆弱と愚直を、憐れんで慈愛に包んで絡め取る女の微笑みだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる