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求愛ブルースター
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九度山は何とか改めて真面目な顔を作ろうと努力をしてみた。
「……ええと、まあ、そしたらつまり、淡島ちゃん」
片手はまだ淡島の肩にあって、指の先が緻密な縫い目の文様を辿って遊んでいる。丹念な針仕事で描かれた上着の刺繍はさながら旋る風、それに吹かれて動く波の如くだ。
「――イヤだとかしたくねえとか。じゃあないんだよな」
また手加減なく言い返されると身構えたが、図らずも淡島は無言だった。無言のまま腕が九度山の腰に回されてぐいと力がこめられる。頬がおしつけられ、耳の付け根に息がかかった。
「そーですね。九度山さんとなら、したいです」
このシチュエーションでいつどこでどうやってというのも無粋なもので、そいつについてはおいおい慮る事にして。行き場に迷っていた肩の手をあげ、模様を追っていた指の先で淡島の薄紅に染まった眦を撫でるように一掃きする。
「俺さ、惚れてんのよ。知ってたかい?」
「はい」
顔をよせて唇を重ねながら、二人は――。
「……ええと、まあ、そしたらつまり、淡島ちゃん」
片手はまだ淡島の肩にあって、指の先が緻密な縫い目の文様を辿って遊んでいる。丹念な針仕事で描かれた上着の刺繍はさながら旋る風、それに吹かれて動く波の如くだ。
「――イヤだとかしたくねえとか。じゃあないんだよな」
また手加減なく言い返されると身構えたが、図らずも淡島は無言だった。無言のまま腕が九度山の腰に回されてぐいと力がこめられる。頬がおしつけられ、耳の付け根に息がかかった。
「そーですね。九度山さんとなら、したいです」
このシチュエーションでいつどこでどうやってというのも無粋なもので、そいつについてはおいおい慮る事にして。行き場に迷っていた肩の手をあげ、模様を追っていた指の先で淡島の薄紅に染まった眦を撫でるように一掃きする。
「俺さ、惚れてんのよ。知ってたかい?」
「はい」
顔をよせて唇を重ねながら、二人は――。
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